2010年4月27日火曜日

極秘軍用シャトルを評価してみる

※アトラスのフェアリング内に収容されるX-37B
The Christian Sceince Monitor Webサイトから転載

アトラスVロケット、米空軍のX-37Bを打ち上げ

米空軍とユナイテッド・ローンチ・アライアンス社(ULA)はアメリカ東部夏
時間4月22日19時52分(日本時間4月23日8時52分)、米空軍のX-37B軌道試験機
(OTV:Orbital Test Vehicle)を載せたアトラスロケット(アトラスV)を、ケ
ープ・カナベラル空軍基地から打ち上げた。

打ち上げられたロケットは順調に飛行し、打ち上げから約17分後、ロケットと
X-37Bが所定な軌道に入り、打ち上げは成功した。

「OTVの試験で重要な役割を果たしたことに誇りに思います。今日の打ち上げ
成功は空軍とULAの密接なチームワークを強調したものです」

今回の打ち上げ成功について、ULA社のマーク・ウィルキンス副社長はこのよ
うに述べた。

X-37Bは宇宙空間から無人で帰還できる宇宙船。長さ約9メートル、翼幅約4.5
メートル、重さ約5000キロで、スペースシャトル(オービター)と比較すると、
大きさは4分の1程度しかない。

米空軍は今後数週間にわたって、地球周回軌道でX-37Bの試験を行った後、
X-37Bを大気圏再突入させ、無人でバンデンバーグ空軍基地もしくはエドワー
ズ空軍基地に着陸させる予定。

X-37計画は元々米航空宇宙局(NASA)が進めていた、スペースシャトルの軌道
から帰還させる使い捨て機体の計画だった。しかし、2002年にX-37A滑空試験
機とX-37B軌道試験機にそれぞれ別れ、さらに、2004年にNASAが計画を断念し
たことにより、管轄が米国防総省国防高等研究事業局(DARPA)に変わり、計
画も大幅に遅れていた。

(sorae.jp 2010/04/23)


極秘軍用シャトルであるX-37Bの軌道試験機が、ケープ・カナベラ
ル空軍基地から打ち上げられました。

X-37Bは、記事にもある通り、元々は、NASAが、ISSからの緊急脱出
用に開発していた無人シャトルです。本来は、現用のシャトルを置
き換える次世代シャトルとして開発に着手されたものですが、どん
どんプロジェクトの位置付けが変わり、ついには、軍用に転換され
てしまった経緯にあります。空軍は、X-37Bで200日以上、宇宙に滞
在できる様にする計画を持っています。

X-37Bが軍用としてどの程度利用価値があるかですが、現在までの
議論では、シャトルの様な往還機は、元々、当初見込まれた様な経
済性を持っていない点が問題視されています。

X-37Bにしても、これまで、X-37とX-40につぎ込まれた予算をなん
とか実用にこぎつける事で、合理化しようとするものでしかない様
に思われるのです。

シャトルは元々、使い捨てロケットでは、毎回捨てられる事になる
高価なエンジンやアビオニクスを持ち帰って再使用する事で、ロケ
ットの打ち上げコストを大幅に下げる事を目標にしていました。

しかしながら、実際に作ってみると、一度飛行したあと、再度打ち
上げる為には、新造に等しい程の整備費用がかかる事、また、軌道
上では、無用となる翼を持ち歩く事になる事による不経済性、再突
入で高温となる機体下部や主翼下部に着陸脚用の開閉部を作る事の
不合理性、緊急脱出ロケットを装備できない事による安全性の低下、
打ち上げ時にも、帰還用耐熱タイルを露出する事による安全性の低
下、打ち上げペイロードの大きな割合を往還部分重量が占める事に
よる経済性の低さ等々の欠点が問題になりました。

X-37Bは、これらの欠点に対し、無人化によって経済性の向上を図っ
ていますが、往還機として本質的な経済性の無さを克服出来ていな
い上、使い捨てロケットを使用する事で、最も高価なパーツである
エンジンの再使用を最初から放棄しているのです。

X-37Bが通常の無人宇宙機と比べて優位があるとすれば、それは、
即応性や汎用性が高い事と、宇宙からの持ち帰り能力が高い点があ
げられるかも知れません。

しかしながら、即応性や汎用性は、使い捨てロケットを多めに準備
する事や、衛星バスの高次の標準化で対応できてしまいます。
また、持ち帰り能力にしても、安価で規格化された、帰還カプセル
を準備すれば、X-37Bよりも安価に対応が出来てしまう様に思われ
るのです。

極秘軍用シャトルというと何か恐ろしげな印象で、中国などでは、
X-37Bの打ち上げで将来、宇宙が軍事化する懸念を一部のマスコミ
が表明していますが、中身を良く検討してみれば、既存の無人宇宙
機や衛星と大差がなく、むしろ、経済性では劣後するシロモノと言
わざるを得ず、国防高等研究事業局がX-37を本当に実用化するとは
とても考えられないのです。


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