2009年10月28日水曜日

護衛艦「くらま」衝突事故 韓国船の無謀な操船が原因?

※関門海峡航行参考図(部分) 衝突地点は●赤丸で表示

護衛艦衝突の韓国船長「別の船を追い越そうと…」

山口県下関市と北九州市の間の関門海峡で、海上自衛隊第2護衛隊(長崎県・
佐世保基地)所属の護衛艦「くらま」と、韓国籍の貨物船「カリナ・スター」
が衝突した事故で、同船の韓国人船長(44)が「前にいた別の船を追い越そ
うとして、対向してきた護衛艦に衝突した」などと説明していることが28日、
海上保安庁の調べで分かった。

第7管区海上保安部は同日、実況見分の予定を強制捜査に切り替え、業務上過
失往来危険容疑で、両艦船を現場検証する。事故当時の双方の位置関係や運航
状況について、説明に矛盾がないか、乗組員らから詳しく事情を聴き、事故原
因の解明を進める方針。

同海峡は右側通行が原則で、海上衝突予防法では、対向してくる船と接近した
場合は、原則として双方が右に舵を切って回避するルール。貨物船が対向して
きたくらまを回避するために右に舵を切った場合、左側面を損傷することになる。

しかし、防衛省によると、貨物船は右船首部分が大破しており、くらまは船首
が大きく損傷している。同保安部では、貨物船が左に舵を切った可能性や、く
らまが左に寄りすぎて航行していた可能性などを慎重に調べる。

一方、衝突事故による護衛艦の負傷者は、消火作業中の煙の吸い込みや脱水症
状を含め、3人増えて計6人となった。韓国船にけが人はなかった。いずれも
症状は軽いという。

事故現場では、政府が派遣した榛葉賀津也防衛副大臣は28日未明、北九州市
側の岸壁から護衛艦を視察。記者団に「目視した感じでは、おそらく5メート
ル以上えぐられたんじゃないか。まだ未確定の情報もあり、われわれなりに落
ち着いて情報を収集したい」と述べ、事実関係の確認に全力を挙げる方針を示
した。

(産経新聞 2009/10/28)


海難審判での結論が出るまではうかつな事は言えないのですが、上
の記事の通りであれば、今回の事故は、かなり明白な韓国船の無謀
操船が原因であると思われます。

そもそも関門航路内は、追い越しが禁止されているのに、むりやり
追い越そうとしたのが問題です。関門海峡の航路帯は可航帯の幅が
狭く、流速は早く、且つ、入り組んだ地形です。この為、事故が多
いので、厳格な航行ルールが決まっています。

今回の事故は、陸上に例えて言えば、狭い交通量の多い二車線道路
で追い越し禁止になっているにも係わらず、無理に追い越ししよう
として対向車線にはみだしたトラックが、折悪しく差し掛かった対
向車と正面衝突した様なものです。

但し、不幸中の幸いであるのは、この場所は、事故が多いので、海
上保安庁の海上交通センター(関門マーチス)の水上レーダーによっ
て監視、管制が行われていた事です。(韓国側では、韓国船は管制
指示に従った事で衝突したと主張している様です。)

海上自衛隊とは異なる政府機関である海上保安庁により、衝突した
双方の航海データが記録されている訳ですから、それに基づいた客
観的な海難審判を期待する事が出来ます。

私は見ていませんが、今朝のワイドショーでは、予想通り、海上自
衛隊を貶める為に、護衛艦乗員の緊張感の欠如を指弾するコメンテ
ーターや解説者が多かった様そうです。

いつもの事とは言え、国民に不正な予断を与える為にする議論は、
決して正しい解決を導かないと悟るべきでしょう。コメンテーター
と解説者は現時点での、自衛隊の最高指揮官は民主党の鳩山首相で
ある事を良く肝に銘じておくべきであると考えます。

あと、ネットの議論で、護衛艦側の脆さを指摘する声がありますが
海上で、船が衝突した場合、あの程度の損害は、大きなものではあ
りません。恐らく衝突した速度が低かった為でしょうが、コンテナ
船の右舷の損傷の度合いは大きなものではありません。もし、速度
が出ていたのなら、もっと深い傷がコンテナ船側に出来ていた筈です。
また、護衛艦とコンテナ船は、ほぼ同程度の大きさですが、コンテ
ナ船の船体の鋼材の厚さの方が、護衛艦に比べ2倍程度ある点も、
損害の違いになっているものと思われます。

なお、「くらま」の損害で一番大きそうなのは、艦首バウソナーです。
艦首部の損傷状態を見ると、水線下にも損傷は及んでいると考える
べきでしょう。「くらま」のバウソナーはOQS-101という長距離探知
性能に優れたバウソナーですが、既に30年物になっています。
今更、この旧型ソナーを新造するのは無理があります。
「しらね」のCIC火災時に退役した「はるな」の設備を流用しましたが、
「はるな」はFRAM改装時にバウソナーを新型のOQS-6に変更しています。
「しらね」は、退役後、舞鶴に係留されていると思われますので、
「しらね」の時と同様、「くらま」にバウソナーを流用する事が可能で
あると思われ、また、それが修復費用の軽減と修復期間を短縮する
上で、望ましいと思われます。

いづれにせよ、「くらま」の一日も早い艦隊復帰を願わずにはいられ
ません。


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