2010年8月31日火曜日

中国の軍事力 2010 第二章 (1)


第二章 中国の戦略の理解

概観


中国は、米国における「国家安全保障戦略、国家防衛戦略、国家軍事戦略」に
相当するものを出版しておらず、その代わりに白書や、講話、記事を、政策や
戦略の議論を交換する主要なメカニズムにしている。中国の軍事、安全保障問
題に関する透明性は、二年置きの防衛白書の発行や、2009年の国防省公式Web
サイトの設置によりここ数年改善している。一番最近の防衛白書(2008)は、中
国の防衛戦略を国家安全保障と統一に対する支持、及び、国家発展の利益を以
下によって確保すると要約している。

●オールラウンドな調整により中国の国防と軍隊の発展を維持する事を達成する。
●主要な測定基準として情報化を用いる事で、軍隊の効率を拡張する。
●積極防衛の為の軍事戦略を実行する。
●自衛の為の核戦略を推進する。
●中国の平和的発展の助けとなる安全保障環境を促進する。

しかしながら、中国は軍事的な投資、戦略や軍事投資の目的がわかる様な選択
の理由、開発中の軍事能力について、より多くを開示する必要がある。
人民解放軍の戦略的な見方の研究は、不確かなままであり、外部の観察者にと
って、中国の軍事建設の基礎となっている公式の戦略、指導者の武力使用に対
する考え方、人民解放軍の編成やドクトリンを形作る非常事態計画、平時と非
常時における戦略的表明と実際の政策決定、等々については、直接的な洞察は
殆どない。しかしながら、伝統、歴史的パターン、公式見解、報告書類、特定
の軍事的側面の強調、主導的な外交努力によって中国の戦略についていくつか
の一般化を行う事は可能である。

中国の戦略的な優先順位

中国の指導者は、いくつかの優先順位の組み合わせに基づいて国家的な意思決
定を行っている様に見える。その優先順位とは、
・中国共産党による支配の継続
・経済成長と発展の継続
・国内の政治的安定の維持
・中国の主権と領土統一の防衛
・強国としての中国の国際的な地位の確保
等である。中国の戦略は、その時々にこれらの優先順位の間でバランスを取る
事である。中国の指導者は、21世紀の最初の10年を「戦略的な機会の窓」と表
現しているが、この意味は、地域あるいは国際的な条件が、概ね、地域的な優
越性や国際的な影響力の面での中国の台頭に好意的であり、この機会の窓を出
来るだけ長期にする事を探っているのである。

中国の指導者は、1978年から始まった中国の全体的な戦略と政策である「改革
と開放」を継続し、支援する事を約束している。しかし、中国の上級指導者達
の声明や論評を見ると、この二つの中核的認識は、いくつかの矛盾と挑戦を生
んでいる様に思われる。

その第一は、改革は、中国の経済的、政治的、軍事的な急速な発展を実現する
が、政治的安定に対しては大きな挑戦となる。
第二に、中国の改革は、もはや孤立しておらず、だんだんと国際的な安全保障
環境に対して影響をあたえる様になっており、また、その逆もある。

この二重の認識は、共産党指導者に、2020年までは、外部との緊張、特に、列
強との関係を管理して、中国の発展に有利な環境を維持する事を結論づけた。

北京の経済力の拡大は、紛争を解決し、地域協力を推進すると同時、部分的に
は、その国益に対する意欲を示す事で、より活発な対外的な姿勢を導く事になる。

中国の2008年の防衛白書は、それ以前の立場から大きく異なり、「中国は、国
際的なシステムと将来に対する重要なメンバーとなっており、中国の運命は、
国際的な共同体により密接に関連する様になっている。他の世界から孤立して
は中国の発展はなく、中国なしでは、世界が繁栄と安定を享受する事もない」
と記している。

それにも関わらず、中国には、指導者さえもコントロールできない力がある。
それらは、内向きで、徐々に強まっており、中国を平和的な路線から引き離す
力がある。

●ナショナリズム
共産党指導者は、中国の経済的な達成と国際的な存在感の増加を基礎として、
党の正当性を、引き続きナショナリズムに頼っている。しかしながら、この手
法は危険性を伴っている。中国の指導者は、世論を操作し、共産党に対する批
判をそらす為に愛国心を煽っているが、これらの力は一度始まれば、制御が困
難で、容易に国に背を向ける事に気がついている。

●経済
経済発展の継続は、党の一般的な正当性の基礎となり、軍事力の裏づけになっ
ている。しかし、資源に対する要求の予期しない増加や、国際的な資源不足や
価格ショック、資源の入手への制約は中国の戦略的な方向性や行動に影響を与
え指導者に対し、軍事力を含む、資源配分の優先順位付けの再評価を行わせる
かも知れない。

●国内的な政治的圧力
体制維持や中国共産党支配の維持の必要は、中国の指導者の戦略的な方向性を
形作り、彼らの多くの選択を導く。共産党は政府の責任を改善したり、透明性
や説明責任と言った体制を弱める事になる長期的な人民の要求に直面する事に
なる。

●人口学的な圧力
人口学的な圧力は将来増加する。そして、高い成長率を支える中国の能力への
構造的な制約となる。

●環境
中国の経済発展は、大きな環境的な犠牲の下に達成された。そして、中国の指
導者は、この問題が経済発展、公衆衛生、社会的安定性と中国国際的イメージ
を脅かすことによって体制の正当性を徐々にむしばむことを気にかけている。

●海峡をまたぐ政治変動
2008年3月に台湾総統に馬英九が選出され、緊張が緩和したにもかかわらず、
台湾との軍事紛争の可能性と米国の軍事介入は、人民解放軍の最も緊急の長期
的関心事のままである。海峡を挟む潜在的な紛争は、中国の指導者が、台湾の
永久的な喪失が深刻な体制の政治的合法性と政治的地位を徐々にむしばむと判
断する事で、人民解放軍の近代化を推進する誘因となる。

●地域的な関心
世界的な「発火点」(例えば、北朝鮮、南沙群島、尖閣諸島、アフガニスタン、
パキスタン)に中国が近接しており、それへの介入によって、地域的な不安定が、
中国の国境全体に広がり、経済的な発展と国内の安定が損なわれる事を防ぎた
いと中国の指導者は考えている。外国の資源を入手し、輸送する中国の能力に
対する脅威や朝鮮半島の混乱といった地域的変動は、中国の軍事力の発展と配
備パターンの変動につながる。そして、近隣の国々もその影響を受ける事になる。

(Department of Defence 2010/08/16)

Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf


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