2008年12月29日月曜日

民間会社が国際宇宙ステーションへ補給。本当に上手くいくの?






※、CG上はSpaceX社のDragon補給機、CG下は、Orbital Sciences社のCygnus補給機。

NASA、国際宇宙ステーションへの補給業務で米民間2社と正式契約

NASAは23日、スペースシャトルの退役が予定されている2010年以降の国際宇宙
ステーション(ISS)への物資補給業務をSpaceX(Space Exploration 
Technologies)とOrbital Sciencesの米民間2社と正式契約を行ったことを発
表した。

SpaceXは契約費用16億ドル(1440億円)で2016年までに12回の打ち上げを実施、
Orbital Sciencesは同19億ドル(1710億円)で2016年までに8回の打ち上げを
実施する見通し。

打ち上げにはそれぞれ、SpaceXはFalcon 9ロケットとDragon補給機を、Orbital 
SciencesはTaurus IIロケットとCygnus補給機を使用する。Falcon 9/Dragon、
Taurus II/Cygnusともに現在のところまだ開発中で初飛行実験も行われていな
いが、Falcon 9ロケットは2009年第1四半期中に、Taurus IIロケットも2009年
末までに最初の打ち上げ実験が行われる予定で、両社共に技術的な裏付けは確
かなものがあることから、実現はほぼ確実と見越したことが今回の正式契約の
運びとなったようだ。

両社のロケット開発が成功した場合、米国の物資の40~70%は、2社のロケッ
ト/補給機によってISSまで届けられることとなる予定。NASAはISSへの補給業
務を米国内の民間企業に委託することにより、ロシアを中核とするISSの国際
パートナーへの依存度を減らす。
(Technobahn 2008/12/24)

上手くいけば、良いのですが、眉に唾をつけそうになってしまうと
いうのが本音です。

実際に、SpaceX社のFalcon 9ロケットとDragon補給機も、Orbital 
Sciences社のTaurus IIロケットとCygnus補給機も完成予想図があ
るだけで、ロケットの試験機すら打ち上げられていないのです。
両者共に、第一段エンジンの地上燃焼テストレベルはクリアしてい
る様ですが、常識に従えば、完成というレベルには、まだ遠い様に
思われます。

しかし、Falcon 9ロケットは2009年第一四半期中(あと三ヶ月!)に、
また、Taurus IIロケットは、2009年末までに、最初の打ち上げ実
験を行われるとの事。開発に全く問題がなかった場合のみ、このス
ケジュールを守れるのでしょうが、宇宙開発はスケジュール遅延の
連続ですから、今回も同様の事態に至らないか、他人事ながら心配
になってしまいます。

それでも、実績のあるロシアのZenitロケットの一段目のロケット
モータを使用するOrbital Sciences社は、まだ良いのです。
SpaceX社のFalcon9は、野心的というより無謀に近いプロジェクト
である様に思います。Falcon9は、Falconロケットの一段目に使わ
れているMarlinエンジンを9本束ねた構成になっています(H-IIBの
一段目に、LE-7Aを二基束ねるのにJAXAが何年かかったかを思い出
せば、困難さを想像できます。)が、肝心のFalconロケットは、今
まで、4回の発射実験で成功したものは一回だけなのです。それでも
契約したNASAの太っ腹の太さに感服してしまいます。

記事にもある通り、SpaceX社は契約費用16億ドル(1440億円)で、
2016年までに12回の打ち上げを実施し、Orbital Sciences社は、同
19億ドル(1710億円)で、2011年から2016年までに8回の打ち上げ
を実施する見通しです。ISS(国際宇宙ステーション)まで輸送する
荷物の量は、各々、20トンになっていますので、一回当たりの輸
送量は、SpaceX社で、1トン弱、Orbital Sciences社は、1.25
トンになります。(但し、Dragon補給機は一回当たり最大で、2.5
トン、Cygnus補給機は、同じく、2.3トンの輸送容量があります。)

これに比べると、日本のHTVの輸送量は、一回で、最大6トン、欧
州のATVは、一回り大きく最大8トン弱ですから、それに比べると、
一回当たりの輸送量はかなり小さくなります。

ただ、その分一回当たりの打ち上げ費用は、補給機込みで、Falcon9
は、1.3億ドル、Taurus IIは、2.4億ドルで、HTVやATVに比べると、
概ねロケット打ち上げ費用のみで、補給機費用込みの打ち上げ費用
が賄える事になります。但し、打ち上げ重量1トン当たりのコスト
では、HTV一号機の場合、46.7億円(H-IIB打ち上げコスト140億円、
HTV本体140億円)に対し、今回の契約では、SpaceX社が72億円、
Orbital Sciences社が85億円で、それ程安くはありません。最大キ
ャパシーで見積もった場合は、各々この半額になりますが、意外に
HTVも健闘していると言う事でしょうか。

民間事業者が安価な打ち上げ手段を持つ事は、宇宙と一般市民の距
離を縮める事にもなりますので、本当に成功を祈りたい気持ちなの
ですが、スケジュールがあまりに野心的すぎる点、逆に、民間事業
の芽を摘む事にならないか懸念する処です。




2008年12月26日金曜日

護衛艦ソマリア派遣 今のままでは自衛隊は日本商船隊を守れない!




※写真はAFPサイトから転載

日本から護衛艦派遣 ソマリア沖 麻生首相、対応明言

政府は25日、海上警備行動発令によるアフリカ・ソマリア沖での海賊対策に
ついて、日本から新たに護衛艦を派遣する方針を固めた。インド洋に派遣され
ている海上自衛隊の護衛艦を活用すると補給活動に支障が出る可能性があり、
海賊対策に特化した派遣の方が、より実体的な任務が行えると判断した。ただ、
派遣準備に十分な時間が取れないなどの問題もあり調整を急ぐ。

麻生太郎首相は同日夜、首相官邸で記者団に対し「取り急ぎ日本も対応すべき
だ。取り急ぎということであれば海上警備行動で対応する」と述べ、海警行動
の発令で海自艦艇をソマリア沖に派遣することを正式に表明した。

さらに首相は「他国の船は助けませんではいかがか」と述べて、海賊対策の一
般法の早期制定に意欲を示した。

政府は護衛艦1、2隻に補給艦1隻の陣容を検討。ソマリア沖の海賊多発海域
に艦を配置し、通行する日本関係船舶から危険情報が入った場合に現場に急行
することを想定している。

また、一義的に海上での治安維持を担当する海上保安庁との連携を強化するた
め、日本で海上保安官を同乗させて出航する。武器使用については、警察官職
務執行法を準用し威嚇射撃や海賊側と同程度の武器での応戦を認める。

アジア諸国のうち、中国は海軍艦艇をソマリア沖のアデン湾に派遣、海賊対策
で各国と足並みをそろえる姿勢を強めており、日本の存在感を示す意味でも海
賊対策に特化した護衛艦の派遣は重要となりつつある。ただ、日本籍船の護送
任務を優先する外務省と、海域での警護を念頭に置く防衛省との調整はついて
おらず、年内にも派遣する政府調査団の報告を踏まえ、さらに検討を進める。

(産経新聞 2008/12/26)

}}}

外務省が何も判っていない事が良く判るのが、記事の一番最後の部
分です。国土交通省の海事レポートに書かれていますが、実は、我
が国商船隊を船籍別にみていくと、パナマ籍1,563 隻(商船隊全体
に対するシェア70.3%)、6,106 万総トン(同68.7%)、リベリア
籍109 隻(同5.0%)、443万総トン(同5.0%)など、いわゆる便
宜置籍船がほとんど(平成19年度版海事レポート概要P18)であり、
日本船籍の船は、全体で2200隻の内、わずか95隻。割合にして0.5%
以下でしかないのです。

外務省の言う日本籍船だけを護送する事が如何に無意味か良く判る
と思います。法改正が行われていない現時点では、海上警備行動発
令で救える船は、殆ど存在しない日本籍船しかなく、我が国商船団
の大半を占める便宜地籍船を守る事はできないのです。

その意味で麻生首相の「他国の船は助けませんではいかがか」と言
う発言は間違いです。「我が国の商船隊を守る為には、外国籍船を
守らなければならない」というのが実情なのです。

では、海賊に襲われた、日本の船会社のパナマ船籍船を海上自衛隊
が救う場合は、これに加えてどんな問題があるでしょうか?

実は日本籍船と便宜地籍船では、大きな違いがあります。船の世界
には旗国主義というのがあります。以下はWikipediaからの引用です。

旗国主義(きこくしゅぎ)とは、刑法の場所的適用範囲に関する立
法主義の一つで、自国船舶・自国航空機内における犯罪に対しては
犯人の国籍を問わず自国の刑法を適用するもの。日本の刑法では刑
法第1条2項の規定で旗国主義を採用している。なお、旗国主義は国
家の領土主権の効果が自国船舶・自国航空機内にも及ぶと構成する
ものであるから属地主義の一種ということができる。


つまり、僅かな日本籍船は、日本国の刑法を適用できるが、便宜地
籍船では、日本国の刑法は適用できないのです。
ですから、日本船籍の船が襲われた場合は、日本国刑法を適用して
逮捕可能なのですが、外国籍船、例えばパナマ船籍の船の場合は、
日本の主権が及びませんし、パナマの官憲が海賊を退治してくれる
訳でもありません(パナマは船舶を所有、置籍する為の税金を低く
抑え、船籍登録を促すだけの機能しか持っていません)ので、自衛
隊が海賊を捉えても、本来、法執行を行うべき主体に引渡しができ
ない事から、折角捉えた海賊を釈放せざるを得なくなります。

加えて、自衛隊が、この記事が書いている様な海賊側と同程度の武
器での応戦をした場合にも大いに問題が発生する可能性があります。
つまり、ソマリアの海賊が、実は、軍隊が使用する様な重機関銃や
ロケット弾で自衛隊を攻撃し、自衛隊が同程度の兵器(実際には、
バルカン・ファランクスか自動小銃しかありませんが)で応戦した
場合、ソマリアの海賊の武装の程度を知らない(知ろうとしない)日
本のマスコミは、武器使用の不適切をあげつらい、現場の指揮官(
護衛艦の艦長)に非難を集中する可能性が極めて高いと言えるでし
ょう。

この様な、事態を避ける為には、交戦規則をきちんと定める必要が
ありますが、根拠法が現行の自衛隊法の海上警備行動だけでは、現
場が納得できるほど明快な交戦規則を本当に作れるのか、非常に疑
わしいとしか言えないのです。

結論から言えば、今回の海上警備行動発令だけで、できる事は非常
に限られており、多国籍海賊対策オリンピックに参加する事に意義
があったいう程度の効果しかないと言えます。
護衛艦は、実際には、日本商船隊を保護する事はできず、自艦が海
賊に攻撃されても、碌に応戦も出来ず、ただ逃げまわるだけと言う
事になりかねません。
しかも、それ以上の事を行えば、今度は護衛艦長が処分の対象にな
ってしまうという悲惨な結末に至る可能性も高いのです。

現場にそんな状態を押し付けるだけでは、政治はやるべき事を行っ
ているとは言えないでしょう。それだけに政治はシビリアンコント
ロールを実現する為にも、自衛隊法の改正を一日も早く実施する必
要があると考えます。

こういう恩知らずな国が隣国であるという不幸




【社説】世界の通貨戦争…北東アジアの協調が解決策だ

国の経済がぐらつくと、その国の通貨も価値が墜落するのは避けられない現象
だ。いまの米国のドルがそれだ。米国の巨大な貿易・財政赤字に加え、ゼロ金
利まで加勢し、ドルの体面は話にならない。各国の外貨準備高でドルの割合が
目立って減っており、国際債券市場ではユーロ建て債券がドル建て債券を圧倒
している。より安全な通貨に集まるが金の生理だ。低い利子率に為替差損まで
覚悟して国際資金がドルに集まり続けることを期待するのは無理だ。こうした
流れならば世界の通貨戦争は避けられない。 

もちろんドルの存在感が短期で崩壊しないのは明らかだ。しかしドルの覇権に
対する挑戦は徐々に大きくなっている。フランスのサルコジ大統領は、「ドル
はこれ以上唯一の基軸通貨ではない」としてユーロを含む多極体制への転換を
求めた。こうした自信は通貨の価値が大きく高まったユーロを背景にしている。
ドルの覇権にとって最大の脅威となるのが中国だ。中国は2兆ドルの外貨準備
高を武器に、「われわれが米政府債券を買い続けるとは期待しないように」と
圧迫している。中国はまた、香港・マカオはもちろん、東南アジア諸国連合
(ASEAN)10カ国の貿易で人民元取引を初めて認めた。人民元の国際化
を進めようとする措置だ。日本もまた手をこまねいてばかりいるわけではない。
ただ日米同盟を意識し、公開的な動きを差し控えているだけだ。円共栄圏は日
本の長い夢でもある。 

世界の通貨戦争が激しくなる場合、韓国も火の粉が降りかかる。ドル安は国際
原材料価格を刺激し、再度ハイパーインフレを呼び起すかもしれない。機軸通
貨が揺さぶられることに備え、外貨準備高と決済通貨を多様に分散させる必要
もある。そうすればウォンの安定を期待することもできる。 

しかし世界の主要通貨の角逐戦は、韓国に新たなチャンスでもある。韓国が日
米中との通貨スワップに相次いで成功したのも、これら3カ国の神経戦による
反射利益だという点は否定しがたい。基軸通貨が変われば世界経済の地形図が
根本的に変わることになる。これに備え韓中日の北東アジア連帯に格別に神経
を使うべきだ。今のところ、最も効果的な解決策だ。3カ国の通貨スワップ限
度をあらかじめゆったりと確保し、アジア通貨基金(AMF)創設も加速すべ
きだ。もちろん最も重要な防護壁は内部の免疫体系だ。強力な製造業と強固な
金融システムこそ世界金融の津波からわれわれの生存を図る最高の防波堤にな
るのだ。   

(中央日報 2008/12/26)

まず、現状認識がおかしいですね。
この記事は米国とドルがぐらついていると冒頭に述べ、フランスの
サルコジ大統領が「ドルが唯一の機軸通貨ではない」との発言を引
用していますが、皮肉な事に、実際に通貨危機に陥って下落してい
るのはドルではなく、ウォンであり、ユーロなのです。
「国の経済がぐらつくと、その国の通貨も価値が墜落するのは避け
られない現象だ。」とするならば、韓国は自国を一番心配しなくて
はいけない事になります。

ウォンが売り圧力をかけられ、危機感を感じた韓国が必死になって
頭を下げて回ったからこそ、米国にせよ、日本にせよ、中国にせよ
通貨スワップ増額を了解し、一応の危機回避が得られているに過ぎ
ません。日本にせよ、中国にせよ、現時点で韓国が通貨危機を起こ
し経済破綻する事にメリットがなかった事から、今回は協力してい
ますが、韓国がそれを日中を手玉に取った韓国の外交手腕の勝利な
どと認識しているのであれば、今後もお付き合いする必要は無い訳
です。その点は、韓国は痛切に認識する必要があります。
韓国自身が、その弱さを認識して、自国の経済体質を改善しなけれ
ば、危機は何度でも韓国経済を襲うことになるでしょう。その時に、
いつも米国や日本や中国が韓国に協力するかどうかは、危機が去っ
た後に韓国がどの様に発言し、行動するかによるのだろうと思うの
です。



2008年12月25日木曜日

ライス国務長官、政治家は結果です。




※写真は、AFPサイトから転載

北朝鮮、信用していない」=過剰譲歩批判に反論-米国務長官

【ワシントン21日時事】ライス米国務長官は21日、NBCテレビのインタビュー
番組で、「もちろん北朝鮮を信用していない」と述べ、北朝鮮の非核化をめぐ
る交渉で、米政府が北朝鮮の約束を信頼して過剰に譲歩しているとの批判に反
論した。
ライス長官は「誰も北朝鮮を信頼していないからこそ、核検証の枠組みを交渉
している」と指摘。「枠組みの80%は合意したが、北朝鮮は科学的手続きの要
素を明確にする最後の20%に同意しようとしない」と述べ、核検証枠組みの文
書化失敗は北朝鮮側に原因があると強調した。


(時事通信 2008/12/22)


貴女がたとえ北朝鮮を信用しなかったとしても、実際にやった事は、
北朝鮮をテロ指定国から解除した事でした。貴女の役割は、ブッシ
ュ大統領をダブルスタンダードの汚名から解放する事であった筈な
のに、実際にやった事は、北朝鮮に餌しか与えなかった事で、イラ
ク戦争から大義と名分を失わせ、ブッシュ大統領の罪、大失敗とし
て歴史に刻み込んだだけです。

また、国務長官として、忠実な同盟国とその国民を裏切り、米国へ
の信頼、同盟への信頼を傷つけた事で、貴女は米国の国益を損なっ
たと言えます。

歴史は、貴女を、信頼すべからざる相手を信頼し、経済援助と外交
的譲歩をただ取りされ、北朝鮮に外交的にしてやられれた「無能」
な国務長官として、記録する事になるでしょう。

2008年12月24日水曜日

中国が空母機動部隊を作るとして、いくらかかる?




空母建造「真剣に研究」中国が初めて確認

【北京=野口東秀】中国国防省の黄雪平報道官は23日、記者会見し、国産航
空母艦の建造について「空母は国家の総合力の体現であり、海軍の具体的な要
求」と表明、空母建造を検討していることを、軍当局者として公の場で初めて
確認した。中国軍事筋によると、中国軍はテスト艦載機の発注など空母建造の
準備にすでに着手している。空母を保有すれば、中国脅威論が高まるのは必至
だが、中国は米国を牽制(けんせい)できる海軍力の確保を目指している。

黄報道官は空母建造について「中国政府は各方面の要素を総合し、関係する問
題について真剣に研究、考慮している」と述べた。また、「中国には広い沿海
部がある。領海主権と沿海部の権益を守ることは中国軍の神聖な職責だ」と、
国際社会の懸念に左右されずに建造することを強調した。

今回の発言は、空母建造をめぐり国際社会の反応を探る狙いと正当性を強調す
る意味があるとみられる。

中国の空母については、カナダの軍事研究機関が衛星写真の分析から上海で建
造される可能性が高いと伝え、キーティング米太平洋軍司令官は18日、中国
が建造を「真剣に検討している」と指摘していた。

中国が空母保有を目指す背景には、太平洋を米国と二分した形で“支配”する
という狙いがある。東シナ海から南シナ海、さらにはインド洋などでの影響力
を高める目的もあるとみられる。中国軍内では「経済力に見合った国防力が必
要であり、その象徴は空母」との主張が支持を得ている。

(産経新聞 2008/12/23)

記事にもある通り、中国は空母の建造を真剣に検討している様です。
それでは、中国が米国と対抗して、空母機動部隊を建設し、西太平
洋をその勢力下に置こうとした場合、どの程度のお金が必要になる
のか考えてみましょう。
別に特別の知識や情報がある訳でもありませんので、超アバウトな
ものになってしまうでしょうが、まあ、年の瀬のお遊びと言う事で
ご勘弁下さい。

まず、空母の所要隻数です。中国には、北海艦隊、東海艦隊、南海
艦隊の三個艦隊があります。
この各艦隊に、空母を一隻づつ配備すると仮定すると三隻が所要隻
数となります。

通常、艦船一隻を任務につけて置く為には、三隻が必要となると言
います。一隻が任務についており、一隻は任務地への往復の最中、
もう一隻は、整備休養中という訳です。こういう点からも、三隻と
いう数は、居心地の良い数字です。長い期間は無理ですが、有事の
際には、三隻全部を同時に、洋上に展開する事も出来ます。

と言う訳で、中国が見得の為に、空母を一隻だけ整備するのではな
く軍事的に意味のあるものとする為には、最低でも空母三隻を整備
する必要があると言う事になります。

では、空母を三隻だけ整備すれば良いかと言うとそうではありませ
ん。通常、空母は一隻だけで活動するのではなく、数隻の駆逐艦で
護衛する必要があります。米海軍の空母打撃群では、6~8隻のイ
ージス巡洋艦やイージス駆逐艦が護衛につきます。米軍の場合は、
水上部隊だけではなく、攻撃型原潜も2隻、空母の護衛についてい
るようです。

米海軍の場合は、水上護衛艦全てがイージス艦ですが、中国の場合は
対空駆逐艦と汎用駆逐艦の組み合わせになると思われます。隻数は
各々2隻、4~6隻という処です。仮に、空母護衛用に護衛艦の内
半数を新造するとします。すると一隻の空母に対し、イージス駆逐
艦1隻、汎用駆逐艦が2隻が新造される事になります。また、攻撃
型原潜は保有隻数は少ないので、全て新造する事にします。

中国が空母以外に建造する必要のある艦船は、イージス駆逐艦が3
隻、汎用駆逐艦が6隻、原子力潜水艦が6隻と言う事になります。
本当は艦隊補給艦も必要ですが、ここでは数えない事にします。
空母には、勿論、艦載機を積まなければなりません。空母一隻辺り
60機程度を搭載するとします。本当は、中国がどの種類の艦載機
の組み合わせにするか考えないといけないのですが、ここでは話を
簡単にする為に、Su-33のみで構成するものとします。60機が三隻
分で、180機が必要となります。(予備航空隊を準備しておくとすれ
ば、あと60機ほしい所ですね。)

取敢えずのお買い物はここまでですが、艦船を買っただけではいけ
ません。艦隊を運用したり保守したりする費用が必要です。
大体新造費用の一割程度は毎年かかります。

では、全部で幾らかかるでしょうか。
米軍の空母は一隻、4000億円と言いますが、中国製なので半分の
2,000億円とします。三隻で、6000億円が必要になります。
イージス駆逐艦も、米軍の半分と見て、500億円。三隻で1,500億円。
汎用駆逐艦は一隻250億円で、6隻で1,500億円。
攻撃型原潜は一隻500億円で、6隻で3,000億円。
空母艦載機は、一機30億円として、180機で5,400億円。
空母と護衛艦と艦載機の合計は〆て、17,400億円となります。
運用経費は、毎年、2,000億円程度でしょうか。

2003年度の中国の国家予算は、歳入は1.9兆元、歳出が2.2兆元。
日本円に直すと歳入は25兆円、歳出は29兆円となります。
空母機動部隊建設の歳出に占める割合は、5%程度、運用経費は、
0.6%程度になります。

まあ、三個機動部隊という最少構成ですが、現在の中国であれば、
無理なく支出できる範囲に入るのではないかと思います。
過去20年に亘る中国の経済発展の大きさをひしひしと感じる試算に
なった様に思います。



2008年12月22日月曜日

日本の経済水域が本土の二倍分広がる?



※CGは、総合海洋政策本部プレスリリースからの転載
大陸棚限界の延長に関する説明図は、海上保安庁サイトから転載

「大陸棚の限界に関する委員会」に提出する大陸棚の限界(案)の概要
平成20年10月31日
総合海洋政策本部事務局

1.「海洋法に関する国際連合条約」は、沿岸国の大陸棚を、領土の自然の延
  長をたどって大陸縁辺部の外縁までの海底及びその下とし、これが沿岸国
  の領海基線から200 海里を超えて延びている場合には、当該大陸棚の限界
  に関する情報を、「大陸棚の限界に関する委員会」(以下「委員会」とい
  う。)に提出し、その勧告を受けることとしている。

2.同条約が規定する大陸棚の限界を明らかにするため、内閣官房の総合調整
  の下、平成16 年度から政府一体となって行った大陸棚調査(本年6 月完了)
  の成果を取りまとめた。その結果、 付図に示す7つの海域で、領海基線か
  ら200 海里を超えて大陸棚が延長していると考えられるため、その限界を
  委員会に提出するものである。

3.これらの海域のうち、オレンジ色で範囲を示す海域については、相対国の
  延長された大陸棚と重なる可能性があり、我が国と当該国の双方が必要に
  応じ、協議の上、延長された大陸棚の境界画定を行う必要がある。

(総合海洋政策本部 2008/10/31)


本日は連休の谷間と言う事で小ネタにしたいと思います。
旧聞に属しますが、あまり報道がされていたとも思いませんので取
り上げたいと思います。平たく言えば、特定の条件の下で、EEZ(排
他的経済水域)を領海から200海里以上に広げる事が出来るというも
のです。

この大陸棚の延長に関しては色々と細かな条件がついているのです
が、要は、海洋調査を行って、200海里内の海洋地形との連続性を
明らかにした上で、国連「大陸棚の限界に関する委員会」に申請する
と調整の上、認めるかもしれないよと言う事です。

今回、日本が申請するのは、上記の地図上に記載された7ヶ所で、
面積は合計で日本の国土の約二倍に相当する約70万平方kmになります。

ただ、7ヶ所の内、4ヶ所については、パラオ及び米国と主張が対
立する可能性のある領域であり、日本の主張が全て認められるとは
限りません。ただし、隣接地との対立がない領域については、日本
側はかなり細かい海洋調査を行っているので、まず認められるだろ
と思われます。

この申請を行う為に、海上保安庁は、昭和58年から25年に及び地道
な海洋調査を行ってきました。その調査距離の総延長は約108万
km(地球約27周)にも及んだそうです。
海上保安庁の地道な努力に敬意を表したいと思います。


2008年12月19日金曜日

泥棒に追い銭。GXロケットを開発し続ける愚。


※CGはGX社サイトからの転載

<宇宙予算>大幅増額 1966億円に

政府は17日、文部科学省が09年度予算編成で要求している中型ロケット
「GX」の開発プロジェクトなど宇宙開発利用予算について、前年度比60億
円(3.1%)の大幅な増額を認める方向で調整に入った。総額は1966億
円となる。来年度を「宇宙基本法元年」と位置付け、宇宙開発を積極的に推進
する姿勢を打ち出すため、例外的な大幅増を認める。

GXロケット関連では、第2段に搭載する液化天然ガス(LNG)エンジン技
術の完成度を高めるプロジェクトの費用として、前年度比51億円増の107
億円が確保される見通しとなった。衛星打ち上げの需要やエンジンテストの成
果をみて、10年度以降の本格的開発に着手するかを判断する。

また、災害監視などに対応する衛星の開発費として10億円(前年度比6億円
増)、地球環境変動観測ミッション(GCOM)を推進する費用として72億
円(26億円増)などを認める。

宇宙基本法は今年8月制定で、内閣に宇宙開発戦略本部が設置された。文科省
の宇宙開発利用予算は07年度が対前年度比1.9%増、08年度が同比
1.8%増だった。【加藤隆寛】

(毎日新聞 2008/12/18)

宇宙開発予算が増額になったのは喜ばしい事ですが、GXロケット
開発の増額の部分を除けば、今年度比略同額。その上、「きぼう」関
連の費用の増加が全体予算を圧迫しますから、惑星探査や天文観測
衛星と言った科学技術関連予算はますます厳しくなったというべき
でしょう。

その中でも、GXロケットの開発に、なお、100億円以上を投入す
る理由が良く判りません。
GXロケットは、当初、官民共同で、実績のあるロシア製の第一段
ロケットの在庫を安く購入し、燃料コストの安い新開発の第二段ロ
ケットを組み合わせ、射場も米国に確保する事で、柔軟な打ち上げ
スケジュールと打ち上げコスト低減を目指すと言う良い事ずくめの
ロケット開発で、しかもJAXAの出費は新開発の第二段エンジン
のみという虫の良いプロジェクトでした。

しかしながら、当初簡単に開発できると思われていた天然ガス燃料
エンジンの開発が難航し、つれて開発コストも高騰しました。加え
て、当初は、安く買い叩ける筈だったロシア製第一段エンジンは別
の会社が購入してしまった為、別のロシア製エンジンを積んだアト
ラスロケットを高値で購入しなければならない事になってしまいま
した。この様に当初の目論見は完全に外れ、お題目も雲散霧消して
しまっており、安全保障つまり情報収集衛星打ち上げ用としてしか
使えない、高コストロケットになってしまっています。

少し考えれば判りますが、アトラスロケットの第二段を値段の高い
エンジンに取り替えた上で、アトラスロケットの打ち上げを日頃行
っている射場から発射するのです。しかもアトラスロケットは、コ
スト競争力ではアリアンに適わず、米国政府の調達専用になってい
るロケットなのです。GXが国際的に通用する訳がありません。

GXロケットは20機を製造した段階で一機75億円を予定している
そうですが、現時点で約90~100億円と見られるH-IIAの
打ち上げ費用と比べても、7割~8割のコストがかかる一方で、低
軌道への投入能力は、2トンでしかなく、最少構成でも10トンと
されるH-IIAと比べ20%程度にしかなりません。
これを低軌道への1トン当たりの打ち上げコストで比較すると、実
にH-IIAの4倍に達するのです。

打ち上げるものもないのに、JAXAのロケット屋が天然ガス燃料
ロケットを作ってみたかったばかりに1000億円以上の予算を投入し、
しかも当初の構想のロケットエンジンの開発に失敗し、追加で、更
に、1000億円を国際的にも競争力のないロケットに注ぎ込むのは、
納税者に対する背信行為であるとしか言えません。

情報収集衛星という名の偵察衛星は、日本の安全保障上、必要であ
ると思いますが、何故、GXロケットで打ち上げる必要があるのか?
何故、米国まで、持っていって打ち上げる必要があるのか判りませ
ん。その一方で、H-IIAは、打ち上げる機会が少なすぎて量産
ができず、打ち上げ作業の簡素化合理化が行えずにいます。GXが
偵察衛星打ち上げ専用ロケットになった処で、年間に1機の打ち上
げ機会が得られるとは限りません。つまり、いつまでたっても、量
産ができず、打ち上げ手順に習熟できない、従って高コスト構造か
ら脱却できないというH-IIAの欠点がGXにも全て当てはまる
事になるのです。
安全保障目的だから予算が青天井だと思っているのだとすれば、も
っての他です。宇宙開発も安全保障も巨額の費用がかかる割りに目
に見えるリターンが少ないだけに、予算の効率的な執行義務は高い
と考えるべきなのです。

GXロケットの速やかな開発中止、及び偵察衛星打ち上げのH-IIA
への一本化、それによる打ち上げコストの削減を強く求めます。


2008年12月18日木曜日

海賊退治でインド洋での存在感を競う中印海軍

※写真は、海賊を臨検するカナダ海軍。AFPサイトから転載

中国、ソマリア海域へ艦艇派遣浮上 「責任大国」アピール

【北京=野口東秀】中国がアデン湾やソマリア海域に海軍艦艇を派遣し、船舶
の保護活動に参加する可能性が浮上している。国営新華社通信を含む中国メデ
ィアが17日、大きく報じた。中国の船舶、乗組員に対する海賊の襲撃が拡大
していることもあるが、軍艦派遣は国内世論の高まりに加え、軍が派遣を「海
洋戦略」を進める一歩としてとらえているようだ。

新華社通信は同日、速報で、ソマリアの海賊問題を討議した16日の国連安保
理会合で中国の何亜非外務次官が艦艇派遣を積極的に検討していることを明ら
かにしたことを伝えた。

何次官によると今年、6隻の中国関連の船舶がソマリア海域で海賊に襲撃され、
今も1隻、17人の中国人が釈放されていない。新華社通信によると、17日
にはソマリア沖のアデン湾を航行していた中国交通建設集団総公司所属の船が
海賊の襲撃を受け、中国人乗組員30人と一時連絡がとれなくなった。

中国現代国際関係研究院の郭暁兵副研究員は軍艦派遣について、「責任大国と
して正常な行動だ」と説明。香港のテレビ局の論説委員も「中国の世界に対す
る義務」とまで主張している。

艦艇派遣により、中国が国際社会での存在感を高めようとしているのは間違い
ない。中国紙「環球時報」は、「軍事力で自国の海上利益を守り、同海域での
海上航行とシーレーン(海上交通路)を守れる意志と能力を示す」と軍事的側
面での意義を強調する専門家の意見を紹介している。

米議会の報告書などで、中国軍は西太平洋での制海権を得るための方策を追求
している-と指摘されている。ソマリア沖への艦艇派遣計画は、軍の海洋戦略
の一環でもある。

(産経新聞 2008/12/17)

第二次大戦後、インド洋の制海権を握ったのは英国でした。インド
洋は、香港、シンガポールを中心とした英国東アジア植民地とイン
ドを中心とした南アジア植民地、中東・アフリカ地域の英国植民地
を結ぶ海上交通網の要として海上の大動脈として機能していたと言
えます。しかしながら、これら英国植民地が第二次大戦後、相次い
で独立した事により、英国はインド洋からの撤退を始めます。そし
て、インド洋の制海権も1971年のスエズ以東の英軍撤退によって事
実上放棄されます。

そして、イギリス海軍の撤退によって生じた空隙に入り込んできた
のが、当時躍進著しかった。ソビエト海軍でした。勿論、巨視的に
は米国海軍の制海権と言う上位の傘が被っていたのですが、ベトナ
ムのカムラン湾やイエメン領のソコトラ島に基地を建設するなど着
実にインド洋でのプレゼンスを強化してきたのです。

余談ですが、この時、一部では、日本がインド洋に進出するのでは
ないかとの観測が持ち上がった事があります。インド洋の海上貿易
ルートに対する日本の依存度が極めて大きいので、日本がその安全
を確保しようとするのは自然であると考えられたからです。日本で
も主として左翼系の学者がソ連の意を受けて懸念を表明しましたが、
戦後の日本が安全保障について如何に近視眼に陥っているかについ
ての無理解から生じた誤解でした。当時海上自衛隊には、艦隊補給
艦が僅か一隻(「はまな」後に「さがみ」に交替)しかなく、その後も
その体制が続いた事からも、日本に進出のその様な意図がない事は
明らかでした。

さて、インド洋の制海権が一見、ソ連海軍に握られた様に見えた時、
インド海軍もまた、着実な発展を見せていました。三度に亘る印パ
紛争で、インド海軍がインド洋でパキスタン海軍に優越した事が、
バングラディシュ独立に役立った事は言うまでもありません。これ
によって、印パの力関係は、大きくインドに傾いた状態で固定しま
した。(バングラディシュが独立した結果、パキスタンは領土の四
分の一、人口の二分の一、ハードカレンンシーを獲得するジュート
など重要輸出商品を失った。)これには、インド海軍の貢献も大き
かったのですが、インド海軍が独立以降、英国海軍の中古艦とは言
え常時、空母を運用していた事を忘れてはなりません。また、1980
年代には、ソ連から、原子力潜水艦をチャーターし、世界で五番目
の原潜運用国(その後、チャーターしたC級原潜が老朽化したので
返却し、再度、新鋭原潜のチャーター導入を計画中)となり、イン
ド洋では米ソを除く諸国と比べ優越したプレゼンスを維持する意図
を明確にしています。

更に、インド海軍は、今回のソマリア海賊対策についても積極的に
対応しており、既に海賊船を撃沈したり、また海賊船を捕獲するな
ど活発な動きを見せています。

これに対し、中国海軍もソマリア海賊制圧に向けて動き出した事は、
中国もインド洋でのプレゼンス拡大に積極的である事を示すものと
言えます。実際、中国はミャンマーに軍港を確保し、本国と陸上ル
ートで結ぶ事で、インド洋への直接アクセスルートを整備し、東シ
ナ海、南シナ海方面が海上封鎖されても、大洋へのアクセスができ
る様に構想している様に思われ、その為にもインド洋で一定のプレ
ゼンスを確保する事が必要なのです。

それに加えて、中国としては、ソマリア海賊対策に対応する事で、
今まで、主として活動していた東インド洋からプレゼンスを西イン
ド洋に拡大する事となり、資源地域として勢力の扶植に力を入れて
いるアフリカ大陸諸国に対しても中国のリーチの長さを認識させる
事による効果も狙える事になります。

上記の記事は、一見、自国の商船に害をなすソマリアの海賊を退治
するお話である様に見えるのですが、実は、戦略的なオイルルート
を担うインド洋での制海権やプレゼンスを競う中印両国の角逐がバ
ックグラウンドに見え隠れしている様に思えるのです。

それにしても、日本の国会では、親中を標榜する党派が日本のソマ
リア海賊対策参加に抵抗を示し続けています。これは中国の行動と
一致しない点で、一見奇異に見えますが、実は、日本がこれ以上イ
ンド洋でのプレゼンスを高める事を歓迎しない中国の意思が働いて
いると考えれば、非常に納得しやすい態度であると思えるのです。

2008年12月17日水曜日

5年間お疲れ様!そして、ありがとう!空自C-130輸送隊




※写真は派遣隊のC-130。毎日新聞サイトから転載

空自 イラク撤収開始 献身が生んだ「犠牲ゼロ」

イラクでの任務を終えた航空自衛隊が15日、撤収を始めた。3機のC130
輸送機のうち最初の1機が、日本に向けてクウェートのアリアル・サレム飛行
場を出発。情報収集で、バグダッドの多国籍軍司令部に派遣されていた隊員5
人も帰国した。これまでの国際活動より格段に危険だったイラク派遣では、
C130がロケット弾の標的になりかけたこともある。民主党のイラク特措法
廃止法案は士気に影を落とし、有能なパイロットが自衛隊を去った。1人の犠
牲者も出さずに5年の活動を完遂した裏側で何が起きていたのか。(半沢尚久)
               ◇
米中枢同時テロの発生日と同じ9月11日、町村信孝前官房長官は、唐突に空
自撤収方針を表明した。実は前日の1本の公電がきっかけだった。
《イラク政府は多国籍軍のうち(米英豪など)6カ国を残し、ほかの国は撤収
させる意向だ》
米政府は公電に記し、日本が6カ国に含まれていないことを公表するとも伝え
てきた。主体的判断にこだわる日本政府は待ったをかけ、慌てて撤収方針を表
明したのが真相で、出口戦略のなさを象徴している。

 ■間一髪
空自のC130が攻撃を受け、被害が出たケースはない。だが、隊員が肝を冷
やす場面はあった。C130がバグダッド空港を離陸後、15分遅れで離陸し、
同じルートを飛行した米軍機が対空砲で攻撃されている。同空港の滑走路で要
人を乗せて待機中、C130の上を4発のロケット弾が飛び越えていたことも
弾道計算で判明した。
「非戦闘地域」ではあったが、「治安が悪化した時期には、バグダッド空港へ
の攻撃は月に30件ほどあった」(自衛隊幹部)。クウェートを拠点にイラク
の南部アリ、中部バグダッド、北部アルビルに国連や多国籍軍の人員、物資を
輸送した空自部隊にとって、最も危険度が高かったのは同空港だった。
着陸直前、同空港へのロケット弾攻撃が起き、パイロットが着陸の判断を迷っ
たこともある。「隊員やC130が1発でも撃たれれば撤収論が巻き起こる」
(同)。空自部隊は“完全試合”を求められていた。

 ■高評価
真夏の気温は50度で、エンジン始動前のコックピットは70度にも達した。
とりわけ過酷な任務は、クウェートのアリアル・サレム飛行場からバグダッド
を経由し、アルビルを往復する7時間のフライトだった。その都度、パイロッ
トは3キロやせたという。
「軍法もないのに規律正しい」「C130の稼働率はほぼ100%で、信頼性
は群を抜いている」
空自の働きぶりは多国籍軍からの評価も高かった。飛行の技量や信頼性に加え、
注目されたのが士気の高さ。米軍の輸送機は、9機のうち修理などの影響で稼
働しているのは5機程度だが、空自は徹夜の整備も辞さず、常に全3機が飛行
できる状態を維持したこともその一例といえる。
こうした任務の陰には隊員の献身があった。機長クラスでは派遣回数が5回と
いう隊員がざら。派遣されている間に親が亡くなり、最期に立ち会えなかった
隊員も16人にのぼった。

 ■揺らぎ
「隊員の士気にボディーブローのように効いた」。2度の派遣経験のある空自
幹部がそう指摘するのは、昨年10月のイラク特措法廃止法案提出と、バグダ
ッドへの空輸を違憲とした今年4月の名古屋高裁判決だ。その2つを機に、基
地にデモ隊が押し寄せ、官舎に批判ビラがまかれた。「パパは悪いことをして
いるの?」。妻や子供は疑心暗鬼になり、隊員も揺れた。
実際、廃止法案提出を受け、1人の輸送機パイロットが退職。「自衛隊の任務
は正しくないのかもしれない」。退職願には動揺と戸惑いがつづられていた。
「献身的に支えてくれたご家族に感謝します」。先月、ゲーツ米国防長官から
浜田靖一防衛相に届いたメッセージの一文だが、任務終了決定を受けた麻生太
郎首相談話では、家族へのねぎらいはなかった。「家族へのいたわりを怠り、
自衛官の使命感に頼り切っていると国際任務は破綻(はたん)しかねない」。
防衛省幹部はしみじみと5年を振り返った。
                   ◇
【用語解説】イラク空自派遣
イラク復興支援特別措置法に基づき、空自は平成15年12月に先遣隊を派遣、
翌16年3月から輸送活動を開始した。クウェートを拠点にイラクの首都バグ
ダッドや北部アルビルに国連や多国籍軍の人員、物資を輸送。約210人の隊
員がC130輸送機3機で任務にあたった。空輸実績は821回、輸送物資は
約673トン。政府は撤収理由として国連安保理決議が年末で切れることや、
イラクの安定化傾向を挙げた。

(産経新聞 2008/12/16)


その内、産経新聞から、派遣隊の実録がでる事を期待しています。
対テロ作戦支援やイラク復興支援の為に、陸海空自衛隊が派遣され
陸は陸なりの、海は海なりの苦労があったと思いますが、空は空な
りに言葉に言い表せない苦労があったのではないかと愚考します。

記事にもありますが、自衛隊の高い士気(モラール)は、どの国に派
遣された場合でも、必ず他国の賞賛の的になっていますが、残念な
事に国内では、それを賞賛する声が未だに少ない様に思えてなりま
せん。

それに加えて、違憲判決を出した名古屋高裁の判事の馬鹿さ加減に
はあきれてしまいますが、文民統制の下に派遣された隊員の留守宅
にビラをまいたり、デモ隊を組織して押し寄せるサヨクにも本当に
恥を知れと言いたいと思います。
イラクに派遣された自衛隊員は国会、即ち国民の指示に基づき派遣
され任務に勤しんでいるのであって、自分の意思で行っている訳で
はありません。それが仕事であるから行っているのです。

言葉は悪いですが、自衛隊は道具に過ぎません。文句を付けるので
あれば、直接的な派遣決議を行った国会議員-政治家に行うべきで
しょう。隊員の家族を脅迫するなど持っての他です。

先日の田母神論文や発言を揶揄する反論が未だに続いていますが、
田母神空幕長は道具が道具としての機能を100%発揮しようとし
ても出来ない様に仕向けられている事を繰り返し指摘している訳で
す。それが判っていない議論をする輩があまりに多すぎる様に思い
ます。

そして、自衛隊員の高いモラルにあまりに頼りすぎているのが政治
の問題であり、やるべき事をやらずに済ませる事で、政治問題化を
回避しているのは判っていても、任務終了決定を受けた談話で、家
族へのねぎらいすら行わない最高指揮官に大きな不満を感じる処で
す。

最高指揮官が、適切な礼を行わないのであれば、政治家を通じてで
はありますが、派遣指示を行った一人の国民として、自衛隊派遣隊
員とそのご家族に心からの感謝を表したいと思います。

「任務完了お疲れ様でした。そして本当にありがとうございました。」


2008年12月16日火曜日

イラク人記者が生きているのも米国のお陰であるという皮肉




※写真はロイターからの転載

根深い「反ブッシュ」 靴投げたイラク人記者は「英雄」扱い

【カイロ=村上大介】イラクの首都バグダッドを14日に訪問したブッシュ米
大統領がマリキ・イラク首相との共同記者会見中に、イラク人のテレビ記者か
ら靴を投げつけられ、「イヌ」と侮辱されるハプニングがあった。

英BBC放送の映像などによると、突然立ち上がった男性記者は「イラク人か
らの別れのキスだ。イヌめ」と叫んで最初の靴を投げ、続いて「これは夫を失
った女性や孤児、イラクで命を失ったすべての人たちのためだ」と言って、履
いていた左右の靴を次々と投げつけた。大統領は身をすくめてかわし、男が取
り押さえられた後、「事実関係を述べるなら、靴のサイズは10だった」と冗
談を飛ばした。

14日夜、この映像が流れると、エジプトの民間衛星テレビ局の女性アナウン
サーがこの記者を「英雄」と呼び、衛星テレビ各局には快哉(かいさい)を叫
ぶ視聴者の声が殺到。ブッシュ大統領への反感の根深さを浮き彫りにした。

アラブ世界では、靴で人をたたいたり、投げつけることは最大の侮辱にあたる。
2003年のイラク戦争でバグダッドが陥落した日、倒されたフセイン元大統
領の像を民衆が靴でたたいて歓喜する光景が世界に流れた。

ブッシュ大統領のイラク訪問は戦後4回目で、任期中最後とみられる。バグダ
ッドでは米軍の地位協定に調印し、15日にはアフガニスタンの首都カブール
入りし、カルザイ大統領と会談した。

(産経新聞 2008/12/15)


最初にお断りしておきますが、私は米国によるイラク侵攻に賛成し
ていますので、それを前提にお読み下さい。勿論、北朝鮮やイラン
やシリアと言った独裁強権国家体制にも反対です。

今回事件を起こしたイラク人記者が、スンニ派で、フセイン体制で
の既得権益層であったのなら今回の行為も理解が出来ます。イラク
のスンニ派≒バース党員が宣伝省の中核をなしていましたし、マス
コミを牛耳っていましたので、今も記者として残っている事に不思
議はありません。既得権益を失った人間の恨み辛みの表出と考えれ
ば理解できなくもありません。

しかし、イラクのシーア派もこの件では、喝采をさけんでおり、記
者の釈放を要求している様です。もし、この記者がシーア派であっ
たのなら、天に唾する行為であると言えます。なぜなら、シーア派
がこういう意見表明をする権利はフセイン時代にはありませんでし
た。もし、フセイン時代であれば、今頃彼はこの世の人ではなかっ
た事でしょう。彼が行った行為が世界に放送され、まだ生きており、
且つ、死刑になる事もないと言う事そのものが、米国がイラクで起
こした変革そのものであると言えます。私の価値基準からすれば、
それはイラクにとって明らかにより良い政治体制である断言できます。

しかし、この政治体制も極めて脆弱な基盤の上に成り立っています。
今、イラクが辛うじて内戦の激化を抑えていられるのは、米国が駐
留しているからに他なりません。既に、イラクに大量破壊兵器の開
発能力がなくなっている事が判明しているのですから、米軍はいつ
でも撤退して良いのです。それをしないのは、フセイン独裁政権を
倒した責任があると米国が意識しているからです。

外からの力ではあっても、イラク人の多数派を抑圧していた強権体
制が倒れたのですから、あとは、イラク人に任せるという選択は大
いにありえます。その上で、世界にとって危険な体制が出来上がっ
た時には、外科手術的攻撃を行う事で、体制崩壊に導くのが、米国
にとって正解に近い行動なのではないかと考えます。

バラク・フセイン・オバマの米国は、よりも内向きになり、他国、
とりわけイラクへの介入から撤退する事は、まず確実であると言え
ます。しかし、それが、イラクにとって、ブッシュの米国より、よ
り良い未来であるのかどうか、実は確実ではない処に一番の皮肉が
あるのかも知れません。


2008年12月15日月曜日

海賊対策もできないなら公明党との連立を解消せよ!




「海賊対策先送り」国際協調足かせも 改正新テロ法成立

インド洋での給油活動を1年間延長する改正新テロ対策特別措置法が成立した
ことで、政府は国際社会が一致して取り組むアフガニスタンでの「テロとの戦
い」の一翼に踏みとどまることができた。ただ、インド洋周辺での各国の活動
が「海賊取り締まり」へとシフトする中で、海賊対策への取り組みは十分な議
論もないまま先送りされた。オバマ新大統領の誕生で米国がさらなる貢献を求
めてくることも確実で、政府は難しい対応を迫られそうだ。(赤地真志帆)

海上自衛隊の補給艦は、インド洋でテロリストや武器・麻薬の流入を防ぐ海上
阻止活動(OEF-MIO)に従事する各国艦艇に補給を実施してきた。だが、
海自の補給海域がある東アフリカ・ソマリア沖のアデン湾では1月以降、海賊
被害が激増。米国は8月から海上阻止活動に従事する艦船・航空機を同海域の
パトロールにあてたほか、各国も活動の軸足を海賊対策に移し始めている。

これに対し、成立した改正法は給油対象を海上阻止活動に限定したままで、厳
密には海賊対策任務船への給油は認めていない。自民党では法目的に海賊対策
を加える意見もあったが、政府は任務拡大を嫌う公明党に配慮し改正案に盛り
込まなかった。

10月末には北大西洋条約機構(NATO)が海上阻止活動とは別に7隻の艦
艇をソマリア沖に派遣、国連関係船舶を警護する作戦を開始した。こうした艦
船への給油は改正法では不可能で、国際協調の足かせとなる可能性もある。

改正法の審議では民主党議員から海賊対策で海自護衛艦を派遣すべきとの提案
がなされ、麻生太郎首相も検討を表明した。ただ、その後に民主党が「衆院選
後、正統な政府ができた上での議論」(直嶋正行政調会長)と態度を硬化、中
身は煮詰まらなかった。

日本の商船を護衛するため、海自艦艇をソマリア沖に派遣することは自衛隊法
の海上警備行動発令で可能だが、「公共の秩序維持」を名目とした同命令での
海外派遣は本来の立法趣旨に反するとの批判も強い。政府・与党は海賊対策に
関する一般法や特措法の検討を進めているが、参院で多数を占める民主党が同
調する見通しは立っていない。

一方で、アフガンへの米軍増派を掲げ、来年1月に大統領に就任するオバマ次
期大統領の関心は「海上より地上作戦にある」(日米関係筋)。ブッシュ現政
権下で日本に対し、大型輸送ヘリCH47などの派遣を求めてきた国防総省の
トップにゲーツ国防長官が留任し、地上派遣圧力はさらに強まるとみられる。

(産経新聞 2008/12/12)


ソマリアの海賊が周辺海域で暴威をふるっている事が世界に知られ
てから久しい。現代の商船は、図体だけは大きいものの、運航の自
動化・合理化が進んでいるので、30万重量トンの超大型タンカーで
も、乗組員の数は40名を切るレベルであり、しかも、航海速度は時
速30キロ程度の低速で、一旦、海賊に小型の高速艇から乗り移つら
れると簡単に制圧されてしまう状態となっている。

海軍が存在する理由は、この様な海賊を取り締まる事にあるし、商
船が、軍艦と出会った時に、掲揚している商船旗を下げ挨拶するの
は、海軍が商船を守る為に存在するからに他ならない。

但し、戦後民主教育の行き届いた日本人乗員の乗る日本船は、自衛
艦に対する礼を行わないことで知られているし、日本漁船や遊漁船
は、自衛艦の進路を妨害する非礼を行う事に抵抗は感じておらず、
それが原因で海難事故を起こしても自衛艦側を非難する事しかしな
い事でも知られているが、皮肉にも、日頃の態度がたたってか、自
衛艦側でも、日本船を海賊を守らない事にしたらしい。

皮肉はここまでにして置くとしても、世界の各国が、ソマリア周辺
海域に海軍艦艇を派遣しつつあるにも関わらず、安全な海上交通の
最大の受益者である日本が、猛威を振るう海賊に対し、まったく何
もしないのでは、諸国の軽蔑しか得られないだろう。政府自民党は、
自衛隊の任務拡大を嫌う公明党に配慮しているつもりだろうが、配
慮せねばならないのは日本の非常識を苦々しく感じている国際社会
ではないか?

勿論と面と向かって問えば、日本の国内事情は斟酌していると答え
てくれるのだろうが、汗を流さない日本が国際社会の尊敬を集めら
れる訳がないのである。

特に、事は侵略でも軍事行動でもない警察行動である。出せる能力
があるならば、海保でも良いのだが、距離がありすぎて、海保のロ
ジスティック能力の手に余るのは明らかである。更に、海賊が既に
得た莫大な身代金で武装しているのが判明しているのであれば、海
上自衛隊が出るべきなのは言うまでもない事である。この様な国際
社会に対する当たり前の貢献活動が出来ないのならば、自民党は公
明党との無用な連立を切るべきなのである。

2008年12月12日金曜日

日韓通貨スワップ枠拡大。激変緩和措置としては理解できる




ウォン安対策、韓国に2.8兆円融通 日本政府方針、通貨危機防止

日本政府は通貨ウォン相場の急落で外貨不足の恐れのある韓国を支援するため、
日韓で結んでいる協定を拡充する方針を固めた。ウォンと引き換えに円やドル
を韓国に融通する通貨交換(スワップ)協定の資金枠をいまの130億ドル
(約1兆2000億円)から300億ドル(2兆8000億円)規模に広げる方向で最終調
整しており、中国も人民元の供給枠を増額する方向。13日の日中韓首脳会議で
正式合意する。金融危機の打撃でウォンがアジア通貨危機以来の安値に急落す
る中で、連携強化により危機再発を防ぐ。

日韓が結んでいる現在の通貨交換協定には、中央銀行間でいつでもウォンと引
き換えに円を融通する協定と、国際通貨基金(IMF)が緊急融資を発動する
ような「危機」時にドルを供給する協定の2種類がある。それぞれの枠は円が
30億ドル分、ドルが100億ドルで、合わせて130億ドル相当になる。これを2.3
倍に引き上げる方向だ。
(日本経済新聞 2008/12/11)

通貨交換(スワップ)協定

▽…国や地域が互いに外貨準備を活用して外貨(主に米ドル)を融通し合う
取り決め。ある国や地域の通貨の為替レートが急落し、貿 易決済や為替介入
のために必要な外貨が不足した場合などに、その国の通貨と引き換えにほかの
国が外貨を一時的に貸し出すことで、通貨の安定や経済の安定をめざす。 

▽…東アジア地域では1997年に発生したアジア通貨危機の反省から、日中韓と
東南アジア諸国連合(ASEAN)が2000年に外貨を融通し合う「チェンマイ
・イニシアチブ」の構築に合意、協定を広げてきた。さらに体制を強化するた
め、2国間協定のネットワークを多国間協定に束ねる「マルチ化」を進めてい
る。 

(日本経済新聞朝刊 2008年11月22日付)

まあ、常日頃、反日粘着されている訳ですから、こういう時こそ、
自分の尻は自分で拭けとほっぽり出したいのはやまやまであり、韓
国経済の崩壊を薄ら笑いを浮かべて眺めていたいとは思います。
しかしながら、そういう感情だけに流されるのでは、奴らと変わら
なくなってしまいます。(これを通称フォースの韓国面に堕ちると
言います。) という訳で冷静に評価すれば、今回のスワップ枠拡
大は悪くないと考えます。

今回、検討されている二国間通貨スワップ協定ですが、上手くいけ
ば使われずに済みますし、使われた処で、それ程、悪い話にもなり
ません。円借款を行うより余程ましと言えます。

つまり、円借款の場合は、その返済を期待しなくてはならない訳で
すが、こういう時ですから、借金のカタは恐らくはなしです。期間
も通常は長期(一年以上)という事になります。返せて貰えても、散
々恩着せがましい態度を取った上で返してくるのは目に見えていま
す。

しかしながら、通貨スワップの場合は、あくまで両国通貨の交換に
なります。今回の場合は、日本円とコリアンWonを交換します。
(日本が持っているドルをWonと交換する事もあります) 細かい所
はこれから決めるのでしょうが、基本的には日本側はWonを市場に
放出するのではなく、凍結します。運用すれば良さそうですが、
Wonをどこかの銀行に預けると、銀行から銀行を巡って、Won売りの
資金になってしまう可能性があるからです。それでは通貨スワップ
を行った意味がなくなります。そこで、LIBOR等をベースにして期
間、利息等の条件をつけた上で凍結する訳です。
日本円の方は、当然の事ながら、市場に放出され、ドルに交換され
そのドルを元にWon買介入の為の資金源になるという訳です。

実際にスワップが行使される様な時はWonが売り込まれている場面
ですから、決済される時の交換レートは、行使時に比べると円安
Won高になっているので、円建ての返済金額は、充分利益が乗る事
になります。買い戻し時のレートが予め決められている場合も考え
られますが、そういう場合は、日本側が不利になるように決定され
る事はありません。悪くても、利息なしの同額での返却が期待でき
ます。

では、何故、Wonの売り叩きによる韓国の経済破綻を防ぐ手伝いを
日本がするのでしょうか?
韓国の経済構造は、製品を製造し輸出する事でなりたっていますが
製品製造の為の中間財や原料の多くを日本からの輸入に頼っていま
す。日韓の貿易収支は日本側の経常的な黒字で年間2~3兆円もの
莫大な金額に上っています。つまり、日本は韓国に対し莫大な債権
を保有している事になります。ここで、韓国の外貨繰りが付かずデ
フォルトを起こした場合、日本にいる債権者は、韓国に対する債権
(輸出した製品の代金であったり、直接投資の配当や利息です)を回
収できなくなってしまいます。これでは日本にとっては大きなマイ
ナス要素になります。場合によっては、日本側の企業が倒産する事
も考えられます。

更に、一旦デフォルトを起こした場合、Wonが長期間に亘って、安
値になる可能性があります。こういう不自然な、Won安は、韓国の
交易条件を大きく改善します。韓国は日本と競合する製品を多く作
っていますが、デフォルトによるWon安で、企業努力なく、安値輸
出が可能になってしまいます。こういった場合、日本も同様の円安
政策で対抗できるのですが、恐慌時の通貨の引き下げ競争は過去第
二次大戦を遠因になっており、日本の様な国際経済に大きな影響力
と責任を持つ国が行えるものではないのです。
この為、Won安が長期に及べば日本は、みすみす輸出産業の競争力
を落とすことになり、企業のそれに対する対応はリストラを経由す
る事で、日本の景気を大きく引き下げる方向に働きます。

既に一年前と比べるとWonは円に対し4割以上下落しており、大き
な円高となっています。これ以上の円高は日本経済の競争力を損な
う可能性があります。円高に対する輸出企業の抵抗力は一朝一夕で
作られる訳ではありません。円高抵抗力をつけるには時間が必要で
す。その時間を稼ぐ為には、今、二国間通貨スワップ枠の拡大を行
うべきと考えます。


ボーイング社が787のスケジュール変更を正式発表




※787のWingboxの破壊試験結果。破断面がプラスティックの様に見
えるのが興味深い。Boeing社サイトから転載


787の生産遅延については、昨日のエントリーで取り上げました
が、今日になって、ボーイング社から正式な発表がありましたので
その内容を紹介します。


787ドリームライナーの初飛行と引渡しスケジュールを延期
―ストライキとファスナー取替え作業のインパクトを反映

エヴァレット、ワシントン、2008年12月11日 
ボーイング 社は、今日、787ドリームライナーの初飛行を2009
年第2四半期、一号機の引渡しを2010年第1四半期とするスケジュ
ール変更を発表した。新しいスケジュールは、最近の機械工のスト
ライキと初期生産機についてのファスナーの取替えの影響を反映し
たものある。

ボーイング社民間機部門の社長兼CEOであるScott Carsonは「我
々の生産チームは構造テスト、システムハードウェアの認証と生産
面で前進した。しかし、予想外の2つの要因による中断のスケジュ
ールに与える影響を調節する必要がある」と、述べた。

9月前半から11月まで民間機部門の生産活動の殆どを停止させたス
トライキ以前には、787は2008年第4四半期後半に初飛行をし、
一号機の引渡しを2009年第3四半期に予定していた。

787プログラム担当副社長のPat Shanahanは、「我々は、初飛行
に備えて何がなされないといけないか、レーザーの様に焦点を合わ
せる必要がある。今までやって来たように、我々はこの状況を克服
できるし、前進する為に何が必要か、我々は明確に理解している。」
と述べている。

また、Shanahanは、「初飛行の準備の中には、エンジニアリング面
での残作業を調整し最終化した上で、システムテストと審査と認証
取得を完了する事が含まれている」と述べている。

ボーイング社はこのスケジュールの遅延が顧客受渡し日に与える個
別の影響を見極めたうえで、顧客毎にスケジュール変更を通知する
予定である。また、同社は、このスケジュール変更がどんな財政的
な影響も与えるかを確定させた上で、それを後日リリースされる更
新された財政ガイダンスや全体的な機体引渡しガイダンスにも取り
込む予定である。


Boeing News Release

Boeing Schedules 787 Dreamliner First Flight for 2Q 2009; First Delivery for 1Q 2010
Schedule change driven by impact of Machinists' strike and fastener replacement work

EVERETT, Wash., Dec. 11, 2008 -- Boeing [NYSE: BA] today announced
an updated schedule for its all-new 787 Dreamliner program that 
moves the commercial jet's first flight into the second quarter of
2009 and first delivery into the first quarter of 2010. The new 
schedule reflects the impact of disruption caused by the recent 
Machinists' strike along with the requirement to replace certain 
fasteners in early production airplanes.

"Our industry team has made progress with structural testing, 
systems hardware qualification, and production, but we must adjust 
our schedule for these two unexpected disruptions," said Boeing 
Commercial Airplanes President and CEO Scott Carson.

Prior to the strike that halted much of the company's commercial 
airplane work from early September into November, the 787 was to 
make its first flight late in the fourth quarter of 2008. First 
delivery was slated for the third quarter of 2009.

"We're laser focused on what needs to be done to prepare for first 
flight," said Pat Shanahan, 787 program vice president. "We will 
overcome this set of circumstances as we have others in the past, 
and we understand clearly what needs to be done moving forward."

Included in the preparations for first flight, Shanahan said, are 
finalizing and incorporating remaining engineering changes and 
completing systems testing, qualifications and certification.

Boeing is evaluating the specific impact of this delay on customer 
delivery dates and will provide customers with updated schedules 
once completed. The company is also determining any financial impact 
from this schedule change and will incorporate that into updated 
financial and overall airplane delivery guidance that will be 
released at a later date.


また、同社はこれに合わせ、民間機部門の管理者の人事異動も合わ
せて発表しました。
787プログラム担当のジェネラル・マネージャ(以下GMと略)であ
ったPat Sharahanは民間機部門全体の生産と開発を担当する事にな
りました。Sharahanは引き続き787プログラムの全体を総括しま
すが担当GMとして、ミサイル防衛部門を率いていたScott Fancerが
指名されました。
また、民間機部門にサプライチェーン管理運営部門が創設され、航
空機営業担当副社長であったRay Connerがこの部門を担当します。

787プログラムは順調とはとても言えない状況ですが、担当GMの
Pat Sharahanは、昇進した事になります。こういう人事異動につい
ては、外からは見えない事が色々あるんだと思います。
Scott Fancherは、火を噴いているプロジェクトの消防士という立
場になります。ある意味で、プログラムの悪い点は全て出ているし、
困難なプロジェクトであると誰もが認めているので、その点では
やり易いかも知れません。これで、787(7エイト7ではなく、
あまり遅れるので7レイト7という声もあります)がリスケ後のス
ケジュール通りに開発されれば、アナリストにはビッグサプライズ
になるかも知れませんが、私はその可能性がそこそこあるかも知れ
ないと感じています。


2008年12月11日木曜日

ボーイング787の開発が更に六ヶ月遅延!




※写真はBoeingサイトから転載

Deliveries of Boeing 787 likely to be two years late

By Hal Weitzman in Chicago and Kevin Done in London
Published: December 6 2008 02:00 | Last updated: December 6 2008 
02:00

Boeing is likely to make first deliveries of its 787 Dreamliner at 
least two years later than originally planned, costing the 
aircraft maker billions of dollars in compensation payments and 
forcing it to take at least a short-term loss on the programme.

The Chicago-based company has delayed the 787 programme three 
times because of problems such as the need to redesign the 
aircraft, shortages of parts and incomplete work by suppliers. 
It is currently at least 14 months behind schedule, but customers 
and analysts now expect Boeing to deliver the first aircraft in 
the second quarter of 2010 - a full two years late.

The company is expected to announce the fourth delay in production 
as soon as next week. Boeing said the company was still assessing 
the schedule for the 787 and would give an update when it was ready.

Boeing has already stated that all its commercial programmes will 
be delayed by at least eight weeks, to make up for a strike by 
machinists that shut down production for most of September and 
October.

However, the 787 programme continues to be dogged by glitches that 
are unrelated to the machinists' strike. The most recent problem 
came last month, when it emerged that tens of thousands of 
fasteners had been incorrectly installed after mechanics at 
Boeing's assembly plant in Seattle apparently misunderstood the 
installation instructions.

Virgin Atlantic, which has ordered 15 of the new aircraft, said 
it had not been given a new date by Boeing for the delivery of 
its 787s. "We think roughly it will be a delay of two years," 
the airline said. "We were due for our first deliveries in March
/April 2011. We are now looking at 2013, but they will not give 
us a date.

"Many airlines are waiting urgently for clarity. And it is not 
just a question of the timing of the early deliveries, but of 
whether they can achieve the ambitious level of full production 
they have planned."

Boeing does not reveal the terms of its contracts. However, it 
is facing demands for compensation for previous delays, although 
the group is largely exempt from compensating for delays related 
to the machinists' strike. It may also have to slash the 
aircraft's $146m-$200m price tag and offer customers replacement 
767s until the 787 is in production.

"As they continue to push this thing back, it's having a domino 
effect in terms of deliveries, compounding potential penalties," 
said Brian Nelson, an analyst at Morningstar in Chicago.

(Financial Times 2008/12/06)

この問題は、12/5にWSJが報じた事から、各紙が一斉に報道しまし
た。ボーイング社が今週中にも公表する可能性もあったので、確か
な情報が出てからと待っていたのですが、なかなか出てこないので
今日取り上げる事にします。

それでは、比較的詳しく書かれていたFinancial Timesの記事を抄
訳してみます。


ボーイング787の引渡しは2年遅れになりそうだ。

By Hal Weitzman in Chicago and Kevin Done in London

ボーイング社の787一号機の引き渡しは当初のスケジュールと
比べると少なく共2年遅れになりそうだ。それによって、ボーイ
ング社は数十億ドルの遅延違約金を要する事になる他、787プ
ログラムに短期的な損失を生じさせる事になる。

ボーイング社は、787プログラムを様々な理由で過去三回延期
させている。その理由は、設計変更であったり、部品の不足であ
ったり、下請け会社の不完全な仕事であったりした。787プロ
グラムは現時点で、当初スケジュール比14ヶ月の遅れとなって
いる。しかし、顧客やアナリストは、一号機の引渡しは、2年遅
れになる2010年第二四半期になると予想している。

ボーイング社は早ければ来週(12/8週)にも四回目になる製造の遅
延を発表する見込みである。ボーイング社はスケジュールの見直
し中であり、用意ができた段階で公表するとしている。

ボーイング社は、民間機部門の全てで、二ヶ月に及ぶ機械工のス
トライキの影響で、各々少なく共8週間の遅れがでる旨表明して
いる。

しかしながら、787プログラムは、ストライキ以外の原因でも
遅れを生じ続けている。一番最近の問題は、先月発覚したもので
ボーイング社のシアトルの組み立て工場で、導入方法の指示を誤
解した機械工が数万に及ファスナーを間違った方法で機体に導入
したというものだった。

15機の787を発注しているバージン・アトランティック社は、ボ
ーイング社から新しい引渡し予定日をまだ知らされていないと語っ
ている。「大体2年程度遅れると知らされているだけだ。当初は、
2011年の3月か4月引渡しと言う事だったが、今では2013年になる
かに知れないと思っている。しかし、ボーイング社は、引渡し日時
を知らせてこない。多くの航空会社は、明快な回答を緊急求めてい
る。そして、それは引渡しをどれだけ早いタイミングでできるかと
言う問題だけでなく、彼らが野心的なフル生産の計画を本当に達成
できるのかどうかという問題だ。」とこの航空会社は語った。

ボーイング社は、航空会社との契約条件を明らかにしていない。し
かし、同社は機械工のストライキに関連した遅れを補償することか
らは免除されているというものの、以前の開発の遅れについて補償
を求める航空会社からの要求に直面している。ボーイング787の
価格の切り下げを求められるかもしれないし、787の生産が軌道
に乗るまでの間、代替機として767の提供を提案せざるを得なく
なるかもしれない。
いずれにせよ、計画が遅延すればするほど、潜在的なペナルティも
大きくなっていくに違いない。

(Financial Times 2008/12/06)

2008年12月10日水曜日

中国は尖閣諸島上陸作戦で日本に完勝できる!




※画像は海上保安庁サイトから転載

中華系メディア「尖閣諸島上陸作戦で日本に完勝できる」

香港のテレビ局、鳳凰電視台はこのほど、「中国人民解放軍が魚釣島(尖閣諸
島の中国語名)に進攻すれば、日本に完全勝利できる」などとする記事をウェ
ブサイトに掲載した。

台湾メディアの記事を引用した。解放軍の海軍陸戦隊と陸軍機械化師団が共同
作戦を実施すれば、日本の自衛隊よりはるかに強力な戦闘力を発揮し、尖閣諸
島を「回収」できるという。

台湾軍関係者によると、中国解放軍は浙江省の島しょ部に台湾、東シナ海、南
シナ海の島への上陸作戦などにも対応できるよう、大規模な訓練基地を築き、
訓練を続けている。

同基地での訓練により、中国解放軍はすでに台湾島北部への上陸作戦能力、尖
閣諸島への「快速な」上陸作戦の能力を得たという。

なお、8日朝には中国の海洋調査船が尖閣諸島付近の日本領海内を航行してい
るのを、日本の海上保安本部(沖縄)の巡視船が発見。領海外への速やかな退
去を求めたが、中国船は午後になっても退去しなかった。

(サーチナ 2008/12/8)



簡単に結論だけを書きますと、中国が尖閣諸島への上陸作戦を決意
し、実施すれば、戦わずして、勝利できるでしょう。
自衛隊の戦力が、記事にあるような中台連合軍の戦力と比べてどう
のこうのと言う分析も必要ありません。

日本の立場は、尖閣諸島に関する領土問題は存在せず、日本側が実
効支配を行っているというものです。中国が奇襲の形で上陸すれば、
実効支配は、中国側に移ってしまいます。そうなった時には、領土
紛争がある事を日本側は認めざるを得なくなります。しかし、一度、
紛争が起きてしまうと日本は武力を行使する事はできません。

憲法第九条が効いてきます。

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希
求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保
持しない。国の交戦権は、これを認めない。


つまり、領土紛争は国際紛争であり、日本は国際紛争の解決手段と
しての武力の行使を放棄しているのです。

武力を使用しようとすれば、尖閣諸島への中国の侵攻は、本土上陸
と同じであるとして防衛出動命令を出す必要があります。しかし、
中国が尖閣諸島以外に侵攻する意図はなく、一方的休戦を宣言して
しまえば、日本国内の親中派勢力、野党のみならず、与党内でも、
防衛出動命令の発動に反対する声が強く出てくる事は確実です。
懸賞論文に応募した空幕長の第二次大戦についての認識が政府見解
と異なるからと、即首にした腰抜け政府が、内外の反対を押し切っ
て防衛出動を出せると考えるなど、お笑いぐさでしかありません。

その一例が、竹島です。終戦後、韓国が実効支配した後は、日本は
入島した漁民さえ排除できず、今に至っても問題解決ができていま
せん。尖閣諸島も一度占拠されると、これと同様の事態に至ると考
えるのが適切と思われます。

さて、一度、中国が尖閣諸島を実効支配してしまうと、その後の回
復は難しくなる事は、指摘した通りですが、中国は尖閣諸島を奇襲
的に確保できるでしょうか?

現状は、海上保安庁が尖閣諸島への上陸阻止行動を行っていますが、
海上自衛隊がそれに連動して動いていると報道された事はありませ
ん。
勿論、中台側の動きについて、事前に知りえた場合は、別ですが、
そうでない場合は、戦闘艦に支援された上陸用舟艇が中隊規模の兵
力を上陸させるケースを考えると、それが中台いずれのものであっ
ても、それを阻止する事は、海上保安庁の巡視船艇にはできないと
考えます。

海上保安庁は、所詮警察組織です。その大型巡視船ですら、搭載兵
器は35mmや40mmの機関銃でしかなく、相手側が海軍艦艇であれば、
対抗できない事は自明であるからです。しかも、地図を見ていただ
ければ判りますが、尖閣諸島の位置は、沖縄からより、中国本土や
台湾の方が近く、奇襲的な侵攻は行い易いと言えます。
また、最初は、少数の艦艇で上陸部隊を揚陸し、その後、戦闘艦艇
がバックアップするという形を取られると、事前準備の検知がより
難しくなるので、余計に上陸阻止態勢を取りにくくなります。

中台両国ともに、こういった事情は良く判っていると思います。で
は彼らがそれをしないのはどういう理由でしょうか。
簡単に言えば、尖閣諸島を占拠する事は簡単でも、その後の日本と
の関係を考えると、不利益だからやらないと言えます。
将来、日本との関係による利益よりも、尖閣諸島を領有する事の、
直接、間接の利益の方が大きいと中台が判断する様な事態になれば、
ためらいなく、尖閣諸島占拠は実行されると考えるべきだと思いま
す。勿論、尖閣諸島を占拠しても、日本からのリアクションが大き
いものではないと予想できた場合も同様です。

それだけに、日本は尖閣諸島のみならず自国領域の確保に強い関心
を持っているという意思を継続的に示す必要があります。その為に
は、中台による我が国領空領海の侵犯に対しては、断固とした外交
的抗議を行う事、また海上保安庁の警備行動やそれと連動した自衛
隊の領域警戒行動を実際に示す事が重要であると考えます。


2008年12月9日火曜日




※写真は、公開されたKSLV1ロケット。朝鮮日報サイトより転載

初の韓国産宇宙ロケット「KSLV2」の開発保留へ
-ロシアが技術移転を拒否、来年の予算執行が中断

小型衛星打ち上げロケットKSLV1の発射後すぐに始まる予定となっていた、初
の韓国産宇宙ロケットKSLV2開発事業が、当初予定していたロシアのロケット
技術導入が不可能になったことにより、全面的に保留された。

これに伴い、研究に少なくとも1年以上の空白が生じることが予想され、韓国
産宇宙ロケットを利用した月探査衛星の打ち上げなど、政府が提示した宇宙開
発計画についても修正が避けられなくなった。

本紙が確認した結果、初の韓国産宇宙ロケットKSLV2開発事業は、今年初めの
企画財政部の予備妥当性調査で「事業の妥当性は認定されるが、技術の確保手
段が不足している」と判定され、再調査が決定した。これにより、来年の予算
執行が全面的に中断する。

韓国科学財団のチャン・ヨングン博士は、「KSLV2の開発は、ロシアから1段目
のロケットに関する技術移転が可能な状況を前提としたものだ。ロシアが技術
保護協定(TSA)を持ち出して技術移転を拒否したことで、全面修正が避けら
れなくなった」と語った。

これに対し専門家らは、「韓国の宇宙開発計画は緻密(ちみつ)な事前調査も
なく目標ばかりに固執するが、後になって日程延期を繰り返すことで事業費が
雪だるまのように膨れ上がっている」と批判している。

(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2008/12/8)

韓国は国産という概念が日本より広く、韓国内で製造したものは、
須(すべか)らく韓国国産と表現するので、韓国の新聞社の日本語サ
イトを読んでいると、思わず、それ国産じゃないだろうとツッコミ
を入れたくなる事が多々あります。

この記事も、その一例で、タイトルからして、何でロシアがロケッ
トエンジンの技術移転を拒否すると、韓国国産ロケットが開発保留
になるのと疑問を感じますが、実際には韓国国内製造と読み替えれ
ば納得がし易いと思われます。(勿論、韓国国産と表現する事で、
国民のプライドを満足させている面もあると思います。)

さて、普段は韓国国産技術と理解されているものでも、実は、日本
語でいう国産技術とは異なるものである事が判る事があります。
それは、何らかのトラブルが起こった時です。今回の問題もその一
例と言えます。

今回問題となっているKSLV2ロケットですが、来年第二四半期に科
学衛星の打ち上げが予定されているKSLV1ロケットを一部改良した
もので、KSLV1ロケットと同様、ロシアのアンガラロケットに使わ
れている液体燃料(ケロシン-液酸)エンジンを使う事になっていま
した。ところが自国のロケット技術の流出を懸念するロシアが韓国
が希望する技術移転を拒否した事からKSLV2ロケットの開発が頓挫
する事になったというものです。

韓国は、2008年4月に女性宇宙飛行士をツーリストとして国際宇宙
ステーションにロシアのロケットを使って打ち上げた際、最初の飛
行士候補者(男性)が、飛行士訓練中にアクセス可能であったロシア
の各種資料を韓国に持ち帰ろうとしたとして交替させられる事件を
起こしています。また、KSLVロケットの開発でも、地上試験用に導
入したエンジンをリバースエンジニアリング手法で解析し、同じも
のを作り上げようとしていると報じていた新聞もあったので、宇宙
技術、軍事技術の漏洩で中国に煮え湯を飲まされ神経質になってい
るロシアが、韓国を警戒するのも頷けなくもありません。

韓国では、当初、KSLV1ロケットを第一段に国産開発の液体燃料(ケ
ロシン-液酸)エンジンを、第二段にやはり国産開発の固体燃料ロ
ケットを使用したKSRロケットを発展させる事で衛星打上げを計画
していましたが、実用衛星を打ち上げるには、ロケットの規模が違
いすぎる事から、第一段をロシアからの技術導入に変更する決定を
行っていました。この決定そのものは、日本が実用衛星打ち上げ用
に米国のロケット技術を導入した事と同じ様な現実的な決定であっ
たと思います。

しかしながら、今回、ロシアが技術移転を拒否した事で、韓国のロ
ケット開発は頓挫する事になりました。対策としては、ロシアから
第一段をKSLV1ロケット同様に輸入する方法や、ウクライナ等、ロ
シアと同程度のロケット技術を保有する国から、液体燃料ロケット
技術を技術導入する事が考えられます。但し、輸入に頼れば、ロケ
ット構成部品の8割以上をロシアに頼る事になります。また、別の
国からの技術導入と言う事になると、既に、KSLV1ロケット(ペイロ
ードは地球低軌道に100kg)の韓国国内開発の上段部分は、アンガラ
ロケットとの結合を前提として開発されている事もあり、記事にあ
る様な一年程度のセットバックで済むとは考えにくく、また、上手
く技術導入が行えた場合も、一気にKSLV2ロケットのレベル(ペイロ
ードは地球低軌道に1500kg)に到達できるのか疑問なしとしません。
いずれの方法にしても韓国の宇宙開発は大きな転機を迎えたと言え
そうです。