2010年6月25日金曜日

南アW杯 祝 日本、決勝トーナメント「初」進出!

※毎日新聞Webサイトから転載

<南アW杯>日本2大会ぶり決勝T進出 デンマークに3対1

サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会第14日は24日、1次リ
ーグ4試合があり、E組の日本はデンマークを3?1で降して2勝1敗(勝ち
点6)とし、自国開催だった02年日韓大会以来、2大会ぶり2回目の決勝ト
ーナメント進出を決めた。オランダ対カメルーンはオランダが勝ってE組1位
となり、2位の日本は、29日午後4時(日本時間午後11時)の決勝トーナ
メント1回戦で、F組1位のパラグアイと対戦する。

日本は前半17分、ペナルティーエリア右角前の位置、ゴールまで30メート
ル超のFKから本田が直接、無回転で不規則に変化したボールをゴール左隅へ
突き刺した。前半30分には、ゴール中央20メートルの位置で得たFKから
遠藤が直接シュート。右隅に絶妙にコントロールされたボールがゴールに吸い
込まれた。後半36分には、トマソンのPKをGK川島が止めるが、こぼれ球
を押し込まれ1点を失った。しかし後半42分、岡崎がダメ押しのゴールを挙
げた。

(毎日新聞 2010/06/25)


英語のニュースを見ていると、日本国内での報道ぶりと異なる事が
あります。W杯関連ですと、自国開催のW杯での戦績が、計算の中
に全然入っていないのです。15日のカメルーン戦での報道は、日本
は「初めて」W杯で勝利したというものでしたし、今回のデンマー
ク戦勝利、決勝トーナメント進出は、自国開催以外では「初」の決
勝トーナメント進出という報道になっていて、日本の二大会ぶりと
いう報道は全然ないのです。

それもある意味当然です。何しろ、ホスト国が、決勝トーナメント
に進出できなかったのは、初めての事なのですから...。それだけ、
W杯で、ホームでの試合が出来るアドバンテージは大きいというこ
とではないかと思います。

ちなみにデンマークは、日本と同じでW杯へは1986年以降、4大会
目の出場でしたが、過去3回の出場では、常に決勝トーナメントに
進出しており、グループリーグ敗退は、初めての事となりました。
それに比べると、日本はアウェーだけでは3回目の出場で「初」の
決勝トーナメント進出ですから、ヨーロッパ代表として進出するチ
ームは、ベスト16に確実に残る実力があるという点で、ヨーロッ
パのフットボールの層の厚さを感じざるを得ません。

今回は、アジア代表からは、日本と韓国が決勝トーナメントに進出
する事になりましたが、大会前の下馬評では、アジアからの決勝ト
ーナメント進出は精々1チームであり、他地域代表と実力差があり
すぎるので、アジア代表チームのW杯参加枠を現状の4から3にし、
アフリカ枠を今回実現した6に増やす事をFIFAが検討中であるとも
伝えられました。

その点、今回は、アフリカからの決勝トーナメント進出国がガーナ
一国であるのに対し、アジアからは二ヶ国で、この状態で、アジア
の出場枠を減らすという議論は、おこり得ず、その点からも日本の
決勝トーナメント進出は喜ばし限りと考えます。

ちなみに韓国は、1954年からW杯に出場し、今回が通算で8回目の
大会になりますが、前回までのアウェーでの戦績は1勝11敗5分
で、決勝トーナメントへの進出は、初出場から、56年目という事に
なります。同様に、日本は、1998年の初出場から、12年目で決勝ト
ーナメントへの進出を果たした事になりましたが、これまでの戦績
は5敗1分でした。


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2010年6月24日木曜日

ボンバルディアとエンブラエルにガチンコ勝負を挑むMRJ

※CGは、MRJ Webサイトから転載

全日空、三菱の小型ジェットMRJ15機を約692億円で購入へ

全日本空輸(ANA)は21日、三菱製の国産小型ジェット機「MRJ90型機」
15機を約692億円で取得すると発表した。2013年度から2017年度
に受領することを予定している。
「MRJ」は三菱重工業子会社の三菱航空機(名古屋市)が開発中の国産初の
小型ジェット旅客機。

全日空では、収益性向上と今後想定される空港環境の変化への対応と現有小型
機の後継機として90─100席クラスの航空機を調達するとしている。燃費
効率がよく競争力のある新鋭機に更新していく計画だ。

(Reuter 2010/06/21)


全日空は25機のMRJを発注したと伝えられていましたが、その内訳は
確定発注15機と、オプションが10機となっています。上記の記事は、
この内、確定発注分について契約が纏まったという事だと思います。
一機46億円という価格は思ったよりも高いという印象を受けます。
MRJの価格は30億~40億円というレンジが予想されていました。
この処の円高で一機50百万ドルというのでは、米国の顧客に受け入
れられるのか心配になってしまいます。

とはいえ、三菱は、ボンバルディアとエンブラエルにガチンコ勝負
を挑むという記事が、FlightglobalにMRJに掲載されていました
ので、やや旧聞に属しますが、抄訳してみました。

三菱は、ボンバルディアとエンブラエルにガチンコ勝負を挑む

リージョナル航空機市場への三菱航空機の進出は挑戦的な冒険だ。日本は1960
年代の日航製(NAMC)YS-11以降、民間航空機を製造していない。そして、ボン
バルディア社とエンブラエル社というこのセクターの二大リーダー企業に加え、
中国の様な新規参入者との競争も待ち受けている。

しかし、三菱航空機の江川豪雄社長は、MRJにとって有利な点があると指摘
する。ライバルであるCOMACが中国の巨大な国内市場に焦点を当てており、政
治的なコネクションを利用して中国の航空会社に90席のARJ21-700旅
客機や150席のC919旅客機の購入を進めている。また、中国の第三世界の
同盟国は、輸出目標国にもなっている。

COMACは、実際には、競争相手ではないと江川は語る。MRJリージョナル・
ジェットは、西側諸国の市場への輸出を目的に造られており、その為、三菱の
直接競争相手は、ボンバルディア社やエンブラエル社となる。江川によれば、
MRJの売上の40%は北アメリカで、30%はヨーロッパで、また、20%はアジア、
残り10%はその他の諸国で挙げられると期待されている。

ゲーム・チャンジャー

エンブラエル170/190や、ボンバルディアのCRJ700/900、
それにARJ21-700は、ジェネラル・エレクトリック社のCF34エンジン
を使用しているが、MRJはP&W社が開発中のPW1000Gギアード・ターボフ
ァン・エンジンを使用している。このエンジンは、P&W社や三菱に言わせれ
ば、ゲームを変更してしまう存在になる。

三菱は、ボンバルディア社やエンブラエル社が、70席から90席クラスのリージ
ョナル航空市場から関心を失いつつあり、開発の焦点を110席から130席クラス
の機体に集中している事が続くことを期待している。ボンバルディア社は、既
に、110席~130席のCシリーズの提供を約束しており、ボンバルディアもこの
セグメントへの参入を評価している途中である。

三菱は、ボンバルディア社のCRJやエンブラエル社のEシリーズと比べMRJ
が全く新しい機体である点も指摘している。

その他の有利な点には、三菱の国際的な耐空証明を取得する能力も挙げられる。
江川は、日本で耐空証明を得た後、一~二ヶ月後には米国の連邦航空局からも
耐空証明を得られると予測している。江川は日本と米国の関係や日本が、二国
間相互安全協定に調印している事に自信を持っている。

しかし、日本がここ何十年も民間航空機を作っていなかったと言う事実は、米
国の連邦航空局が、日本の航空局の型式証明のプロセスが連邦航空局の標準に
そったものである事を確実とするため影の証明を実行しなければならないこと
を意味すると、江川は言う。三菱航空機の親会社である三菱重工は、何十年に
も亘り、エアバス社やボーイング社、ボンバルディア社向けの大型で複雑な機
体部品を製造してきた経験がある。

それに加え、三菱には、製造業界で技術と信頼性に定評があり、三菱ブランド
には国際的に高い評価と認識がある点も指摘する。
「日本には、モノヅクリという、製造を意味する言葉がある。」

三菱重工は、2008年に三菱航空機をスタートしたが、その後、株主として、
トヨタ自工(10%)、三菱商事(10%)、住友商事(5%)、三井物産(5%)、日本開発銀
行(1%)他を加えている。その結果、三菱重工の持分は64%となっている。

三菱航空機は、これらの巨大企業から世界的な販売資源としての役割を期待し
ており、三井物産には北米の、住友商事には、アジアと欧州での販売キャンペ
ーンを期待している。

金融面では、三菱グループは国内最大の、東京三菱UFJ銀行を保有しており、
販売パートナーは三井住友銀行を保有している。

江川は、これらの協力企業がMRJの販売ファイナンスにどの程度の協力を行
うかについてはコメントを避けたが、日本の輸出信用調査機関や日本輸出投資
保険や国際協力銀行の関与については、確認している。

三菱が、現在取り組んでいる重要な問題が、顧客サポートである。それができ
るかどうかで、MRJが国際的に成功するかどうかが左右される事になる。
三菱航空機は、2006年にサーブと覚書を交わし、北米と欧州のサーブの顧客サ
ポートネットワークで、MRJのサポートを行う事に両社が取り組む事を明ら
かにした。

しかし、最終的な合意は昨年12月に行われたが、当初予定されたよりもトーン
ダウンしたものになった「我々は、サーブと技術的解説書類を開発する事にな
った。それだけだ。顧客サポートの為ではない。三菱が顧客サポートの努力を
リードし、全責任を負う事になる。」と江川は語った。

とはいうものの世界的な顧客サポート体制を構築するのは、難しく、時間がか
かる複雑な仕事である。ATRやボンバルディアやエンブラエルの様なリージ
ョナル航空機のメーカーは、その様なネットワークを作るのに、数十年かかっ
ている。

その仕事の複雑さは、江川が、主要な市場で、MRJが認定した補修や修理、
オーバーホールを行う会社の強力なサポートネットワークを約束しても、その
時期について口を濁すことからも明らかである。

三菱は世界中に予備部品の倉庫を準備し、顧客リエゾンエンジニアからの技術
サポートを得られる24時間コールセンターの設置を計画している。

これまで、MRJリージョナルジェットは、確実な顧客を一社しか持っていな
い。それは全日空で、確定発注15機と更に10機のオプション発注をしている。

昨年10月、米国のリージョナル航空会社であるトランス・ステート・ホールデ
ィングが100機までのMRJを発注すると公表した。但し、江川によれば、そ
れは覚書に過ぎない。江川は、それがいつ最終化できるのかについては、コメ
ントを避けた。

(Flightglobal 2010/06/01)



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2010年6月23日水曜日

胸突き八丁に差し掛かったA350の開発



※CGはAirbus社Webサイトから転載

今まで余り報道されてきませんでしたが、A350XWBの開発も
開発完了まで残り三年と中間点に差し掛かかり、スケジュ-ル上の
余裕もなくなってきた模様です。このまま、787同様、開発遅延
の轍を踏むのか、あるいは、787の七転八倒から教訓を見出し、
新たな道を歩むのか分岐点に差し掛かっています。

以下Bloonbergの記事を抄訳します。

「緊張」のタイミングに差し掛かったA350

EADS社は、ワイドボディー機A350の開発をスケジュール通りに行う為に、
「非常に用心深く」開発を進める事が必要となっている。それは、同種の機体
であるドリームライナーの開発遅延によってボーイング社が陥った泥沼を避け
る為にも必要な事でもある。

「ここ暫く、開発スケジュールに固執しているが、開発スケジュール上の余裕
をほぼ食い潰してしまったので、開発スケジュールを維持できるかどうか緊張
を余儀なくされている。」「ボーイング社は非常に良い会社だし、技術的な能
力も高い水準にある。だから彼らが困難に陥った時には、我々も気をつける必
要がある。」とEADS社CEOのルイ・ガロアは述べた。

エアバス社は、この300人から350人乗りの長距離機の開発に100億ユーロ(120
億ドル)の開発費を費やし、ボーイング787と、就役後15年が経つ、より
大型のボーイング777に挑戦する予定である。この内、新しい機体は二つ共、
先進的な炭素繊維の様な新素材を使用しているが、これは、伝統的なアルミニ
ウムの様な既に飛行機への使用方法が確立している素材に比べ開発遅延を引き
起こすリスクを含む技術である。

エアバス社は、2012年にはA350の初飛行を行い、2013年には、引渡しを開
始したいと考えている。

ガロアは、エアバス社がデッドラインを確保できると期待しているが、それは
同社が、外部ベンダー利用について少ないリスクしか取っていない事を指摘し
ている。「ボーイングは80%の仕事量をパートナーに依存しているが、我々は、
50%の仕事量しか外部ベンダーにアウトソースしていない」また、「それに加
えて、彼らは、より積極的な技術的な選択を行っているが、それが、我々が注
意しなければならない教訓だ」とガロアは語る。

複合材料

ボーイング787もエアバスA350も重量の50%以上は複合材料で成り立っ
ている。787は、もともとの計画では2008年5月に引渡しを予定していたが、
製造上の困難から今年の終わりまでサービス開始が遅延している。787は昨
年12月に初飛行を行っている。

787についてのボーイング社の挑戦の中には、アルミニウムではなく複合材
で作られた丸ごとの胴体を次々に接合するというものも含まれていた。
一方、エアバス社は、より保守的なアプローチを取り、金属製の枠組みに複合
材料製のパネルを貼り付ける方法で胴体を形成している。

カタール航空がA350の最初の顧客になる見込みで、それも含め33の顧客か
ら530機の発注が得られている。

ガロアとエアバスCEOのトム・エンダーは、過去に新しい機体の開発遅延を経
験している。それはエアバス社の旗艦モデルであるA380の開発に関するも
のである。A380スーパージャンボ機は、二階建て500人以上を収容できる
が、この開発は何年も遅延した。またこの世界最大の旅客機の売れ行きもエア
バス社の見込みを下回っている。フランスのツールーズを本拠とするエアバス
社はEADS社最大の部門子会社である。

サービス遅延

A380のサービス開始は、2007年に二年半遅れで開始され、開発予算は50%
増しになり、180億ユーロに達した。エアバス社は、配線上の欠陥と設計上の
誤りが初期生産上の問題点であり、それに加え顧客が閉鎖型のキャビンやバー
と言った特別の装備を個別に発注した事が生産遅延を招いたと考えている。
エアバス社では、A350では、顧客毎の特別注文の内容を制限している。

エアバス社の軍事部門も、その最初の軍用機であるA400M輸送機の開発計
画で、同様の遅延を経験している。この輸送機は欧州各国から老朽化した機体
を置き換える目的で発注を受けているものである。EADS社は、顧客と数ヶ月に
及ぶ交渉を行い、開発遅延の後、予定された時期に200億ユーロの固定価格で
A400Mを引き渡すという枠組みの書き換えを余儀なくされた。

A400Mの救済ファンド投入が約束された後になってからも、欧州各国政府
とEADS社は再契約の内容を固めるに至っていない。この契約問題の最終決着に
は今年後半になる見込みである。

この不安定な契約状態により、エアバス社は、同社がA350やA380の開
発計画に必要とする資金もA400M開発計画に投入する事を強いられている。
エアバス社によれば、A400Mの開発計画には毎月1億ユーロ以上を要して
いる。

「我々は、現在、集中的に契約改正の交渉を行っているが、これは容易なもの
ではない。恐らく、夏前に合意に達する事はできないだろう。合意は恐らく秋
になる」とガロアは語った。

(Bloomberg 2010/06/02)


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2010年6月22日火曜日

GEnxエンジンを搭載した787が初飛行

※初飛行するGEnxエンジン搭載のボーイング787。Response.jpより転載

久しぶりに、ボーイング787に関する話題です。
順調にテスト飛行のスケジュールを消化中のボーイング787です
が、GEnxエンジンを搭載した初のテスト機が完成し、初飛行を終え
た様です。Flightglobalから抄訳の上、転載します。

GEnxエンジンを搭載した787が初飛行

ジェネラルエレクトリック製エンジンを搭載したボーイング787が今日、初
飛行を行った。これで五機目の機体が飛行テストプログラムに参加した事になる。

飛行テスト機ZA005は、太平洋標準時(PST)14時41分(グリニッジ標準時00時41
分)に、ワシントン州エベレットにあるボーイング社の工場を離陸した。

飛行機には、二基のGEnx-1B64エンジンが搭載されていた。初飛行はPST21時30
分頃に終了したが、初飛行にもかかわらず4時間近く飛行していた事になる。

テスト飛行は、ZA005のチーフ・パイロットであるマイク・ブライアン機長と
787のチーフ・パイロットであるマイク・キャリッカー機長によって行われ
たが、ワシントン州中央部にあるモーゼス・レイク テスト施設での短時間の
発着の後、787のテスト機編隊が使用しているシアトルのボーイング飛行場
に戻った。

ZA005は、二機からなるGEnx-1B64を搭載した機体の最初の一機で、両機合わせ
て今後670時間の飛行テストと600時間の地上テストを行う事で、エンジンと機
体の組み合わせについての型式証明を取得する予定となっている。GEnxエンジ
ン搭載の機体は、2011年の第一四半期にロイアル・エア・モロッコで就役する
見込みである。なお、六番目で最後のテスト機は、7月に初飛行を行う予定と
なっている。

テスト機の内、最初の4機の787はローンチ・カスタマーである全日空が選
択したロールス・ロイス トレント1000エンジンを2基づつ搭載している。
最初のロールス・ロイスエンジン搭載の機体は、全日空に11月か12月に引き渡
され1月には就役する予定となっている。

(Flightglobal 2010/06/17)


調子のいい時は、記事も短めですね。


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2010年6月21日月曜日

「はやぶさ」の成功を軍事面から眺めてみると

※CGはJAXA Webページから転載

人類初の快挙「はやぶさ」 軍事への応用は周辺諸国への脅威

日本の小惑星探査機「はやぶさ」が3億キロ離れた小惑星イトカワから無事帰
還した。「はやぶさ」の7年間・60億キロの航程は、人類の宇宙史において多
くの新記録を打ち立て、世界一を狙う日本の宇宙技術を示すこととなった。
チャイナネットが「はやぶさ」に対する専門家の見方を紹介した。

「はやぶさ」は技術的な故障で3年ほどコントロールがきかなくなってしまっ
たが、生き残ったエンジンを組み合わせることで起死回生し、人類の遠隔操作
技術において初の快挙を成し遂げた。

香港の軍事評論家である馬鼎盛氏は「もし日本がこれらの成果を軍事面に応用
すれば、中国やその周辺国家にとっては大きな脅威になる」と語った。

ただし、北京のある軍事専門家は「はやぶさなど大したことはない。カプセル
はたった6キログラム、使用したM5ロケットが推力も小さく、軍事用に応用し
たところでどうにもならない。また、日本の宇宙事業は商業的マーケットに乏
しく、中国の宇宙事業の勢いにはかなわない」と語った。

一方で英国の『JANES MISSILES AND ROCKETS』に
よれば、日本のM5ロケットは直径2.5メートルの世界最大級の三段式固体燃
料ロケットで、1.8トンの衛星を250キロメートル、傾斜角31度の楕円軌道に
打ち上げることができる。また、M5ロケットは(その気になれば)大陸間弾
道ミサイルにも使えるという。

日本は電子と半導体の強みを生かし、制御の正確さで他国をリードしている。
米国は日本と協力し、その先進技術を入手すると同時に、ロケット推力技術を
日本と共有している。また、「はやぶさ」は真の宇宙探索を行うために開発さ
れた。飛行中は、先進的なイオンエンジンの運用や、小惑星への自律的接近・
着陸、岩石採集、地球への帰還、回収等を含むさまざまな実験が行われた。

これらにより、日本はその宇宙開発史上において大きな一歩を踏み出したと言
える。「はやぶさ」が達成した任務は、今後、太陽系形成の謎解きや、小惑星
の地球への衝突を低減させるための研究において大いに役立つだろう。

ロシアの専門家、ボフリア(音訳)は『プラウダ』の中でこう警告する。日本
は超大国としての一連の属性を持つ。軍事費は世界第5位、自衛隊はヘリ空母
4艘、艦艇40艘及び先進的防空システムを備えている。軍事装備は大部分が国
内生産化され、技術的装備も常に更新されており、核兵器の生産に必要な技術
も保有している。日本軍は地域における最強武力の一つである。

日本政府は海軍陸戦隊の再編成として「待機部隊」を作り、敵の水際陣地占領
のための演習を繰り返し行っている。また1992年、国際緊急援助の派遣に関す
る法律の開始で、日本は国連の承認を得ずに国際軍事行動に参加することがで
きるようになった。敗戦国のリーダーである日本は「歴史的不公平」を言い訳
にして、度々ロシア、中国、韓国に対し領土要求を行ってきた。

領土問題といえば、日露間の北方領土問題の方が日中間の尖閣諸島(中国名:
釣魚島)問題より、その紛争が激しくなっている。ロシアは中国と韓国を仲間
に引き込み、連携して日本の領土要求を制止したいと考えている。そうなれば、
これら「反日株式会社」の中で最も大きい利益を得るのはロシアだが、そのた
めの投資比率が最も大きいのもロシアということになるだろう。

(Serchina 2010/06/19)
}}}

上記のサーチナの記事はテーマは良いのですが、勉強不足の面があ
ったり、事実誤認の面があったりと食い足りない処が多々あります
ので、少し「はやぶさ」の軍事的側面を補足をしてみたいと思います。

「はやぶさ」を軍事的に考えた場合、主として三つの側面から評価
する事が出来ます。

一つは、「はやぶさ」を打ち上げたビークルの問題です。宇宙ロケ
ットと弾道ミサイルは、性格の違いはあるものの、使用目的の違い
しかないと言ってしまう事ができます。「はやぶさ」を打ち上げた
M-V(ミュー5)型ロケットは全段固体燃料の三段式ロケットです
が、米国のICBMであるピースキーパーを大型化した様なサイズと性
能を持っています。

ただ、衛星発射ロケットとしてある意味当然なのですが、ICBMとし
て使う時の問題点は、発射準備に時間と人手を要する点です。
ICBMの場合は、いつでも発射できなければなりませんので、発射準
備に何日も何週間もかかっているようでは話になりません。
最新のICBMは、トレーラートラックに乗せられる程度に小型化され
且つ、発射準備も数分程度、人手も数名程度で発射できる様になっ
ています。

実は次期固体ロケットと言われているイプシロンロケットでは、打
ち上げコストの削減を目指しており、この発射準備期間の短縮と発
射要員数の削減がメインの開発目標の一つになっています。また、
当初、ロケットは北海道での発射を視野に入れて移動可能とする事
も検討されていました。その点からすれば、Mロケットよりも現在
開発中のイプシロンロケットの方がよりICBMに近い性格を持つ事に
なる様に思います。

二番目は、誘導技術という側面です。ICBMは精密に誘導できれば出
来るほど、攻撃力は同じでも弾頭重量を小型に出来、同じペイロー
ドであれば、多数の弾頭を搭載する事が出来ます。誘導技術の正確
さは、まさにこの精密誘導技術そのものと言えます。地球から二億
キロ離れた、長さ数百mの目標に正確に誘導できたのですから、
ICBMの場合にも、高度の誘導技術を発揮できる事は確実であると言
えます。

三番目は、再突入弾頭の技術です。「はやぶさ」は、7年のブラン
クの後に、地球に接近した処で、帰還カプセルを切り離し、それを
正確にオーストラリアの着陸目標に向け正確に再突入させました。
そして帰還カプセルは着陸目標から5百m以内の誤差で着陸しました。
半発必中界(CEP)500mは、ICBMであってもかなり良い数字です。

「はやぶさ」は惑星間航行速度である毎秒10km以上のスピードで再
突入したので、表面は非常な高温になったのですが、回収後に帰還
カプセルを確認した処では、熱的にも物理的にも全く損なわれてお
らず、昨日作成された様な状態であったと言います。つまり、熱的
な影響は耐熱シールドで完全に食い止める事ができたという事です。
これは、速度が秒速数kmのICBMより余程高い条件をクリアしたと言
えます。

つまり、今回の「はやぶさ」の成功は、日本がICBMの発射と精密な
誘導、熱的影響を受けない再突入体の製造とその突入実験に成功さ
せたのと同義であったと言う事になります。

日本は勿論、国是として核武装を行なう事はないでしょう。しかし、
日本は世界有数の原子力発電大国であり、原子炉関係機器の製造で
もトップクラスの実力を持っている事は、周知の事実です。

ロケット技術、誘導技術、再突入弾頭技術、核分裂性物質の処理加
工技術が合わされば、核武装に必要な要素技術は全て揃っている事
になります。

従来から日本は潜在的な核保有国と言われていましたが、それをよ
り赤裸々に見せつけたというのが、「はやぶさ」の成功を軍事的に
見た時の見方であり、それは、例えば、日本を政治外交的に追い込
む事は、核武装への誘惑を強める事になりかねないと認識させる事
で日本の持つ抑止力の強化に役立つ事になったと解釈すべきである
様に思うのです。


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