2010年7月30日金曜日

謎のタンカー爆発事件 テロリストによる自爆攻撃か?

※図は読売新聞Webサイトからの転載

タンカー損傷は攻撃? 「銃弾など痕跡なし」首ひねる防衛関係者

タンカー「エム・スター」の損傷事故の原因をめぐり、謎が深まっている。海
賊など外部からの攻撃の可能性が指摘されたが、外観に銃弾などの痕跡が見あ
たらないからだ。防衛省関係者は「攻撃されたとは思えない」と口をそろえる。
「銃弾が船体に当たれば穴は開くし、火災も起こりうる。へこみだけでは済ま
ない。何かが衝突した跡にしか見えない」。ある防衛省幹部はそう話す。
海上保安庁幹部も「硬いものが衝突した跡ではない」との見方を示す。「考え
られるとしたら爆風や波。爆風なら、この程度の被害で済むかどうか。強い波
で船体がへこむことはあるが、もっと不規則な形になる」という。

商船三井によると、船体の鉄板は厚さ6センチ。爆発とされる爆音がした際、
乗組員の1人が左舷の甲板上で作業をしており、「水平線上に光が見えた」と
同社に報告しているという。ただ、他の乗組員の証言など、詳しい状況は分か
っていない。

へこみの位置とは離れた船橋2階の内部が壊れているため、大きな衝撃があっ
たことは間違いない。なくなった救命ボートがへこみの上部にあったことから、
ボートが何らかの原因で外れ、船体にぶつかった可能性を指摘する関係者もいる。
米国のクローリー国務次官補(広報担当)は28日の記者会見で、「現時点で
タンカーが攻撃されたことを示す情報はない」と語っている。

(産経新聞 2010/7/29)

タンカーで爆発、攻撃か ホルムズ海峡、1人軽傷

28日午前5時半ごろ、ペルシャ湾につながるホルムズ海峡を航行していた商
船三井の原油タンカー「M・STAR」(マーシャル諸島船籍、16万292
トン)の船体後部にある救命艇付近で爆発が起き、乗組員のインド人1人が軽
傷を負った。

国土交通省と商船三井によると、「爆発直前に水平線上に光を目撃した」と話
す乗組員がおり、海賊など外部から攻撃された可能性がある。ただ、この海域
では、これまで日本関係の船舶への海賊による攻撃はなく、詳しい状況を調べる。

一方で、アラブ首長国連邦(UAE)紙ガルフニューズ(電子版)などによる
と、オマーンの沿岸警備隊当局者は「攻撃の情報はない」として、地震による
異常波がタンカー破損の原因と指摘。フジャイラの港湾当局者も、同様の見方
を示した。バーレーンに司令部を置く米第5艦隊は、原因は不明としている。

乗組員はインド人15人とフィリピン人16人の計31人で、日本人は乗って
いなかった。爆発は比較的小規模で、船体後部付近では爆発の要因が見当たら
ず、原油への引火や流出はなかった。

同船は、27日までにUAEのダスアイランド港などで原油計約27万トンを
積み、千葉港に向けて航行中だった。自力航行が可能で、損傷の程度や爆発の
原因を調べるため、UAEのフジャイラ港に向けて航行している。

(産経新聞 2010/7/28)


不思議な事件が起こりました。ペルシア湾の入り口に当たるホルム
ズ海峡を通峡中の大型タンカーで原因不明の爆発が起き、負傷者が
出ると共に、船体に被害がでたというのです。

今の処、詳細な調査が行われていない事もありますが、爆発の原因
が判っていないのです。現在までの報道と公開された数枚の写真を
元にして想像を巡らせてみる事にします。

事件が発生した場所は、ホルムス海峡のオマーン側で、対岸はイラ
ンになります。船は、ペルシア湾から日本に向けて航行していたと
見られます。被害は右舷側に生じていますので、攻撃があったとす
れば、オマーン側から行われた事になります。

公開された写真を見ると、船体右舷後部の外板部が水線部を底に9
m四方にわたって凹んでいます。また、その上部のデッキ上に吊る
されていた救命ボートは吹き飛び、デッキハウスにも、外部からの
爆風によると思われる被害が生じています。

現地オマーンの当局者は、地震による高波説を出していましたが、
被害が出たデッキ部は、水を被った跡がありません。もともとオマ
ーンは事を大きくしない為に、爆発そのものを否定する自然原因説
を出したものと見られます。

爆発があった事は、船体に被害が生じている処から明らかですが、
何による爆発かが、今の処、判っていません。ミサイルやロケット
弾によるものであれば、爆発した際に、多数の弾片が発生し、その
跡が付くはずですが、それを写真では見つける事が出来ません。
また、イラン・イラク戦争の頃に、イランがタンカーに向け対艦ミ
サイルを大量に発射し被害が出ましたので、現地でそれと判断でき
るものと思われます。

魚雷や機雷の爆発という説もありますが、魚雷や機雷であれば、水
線より下で爆発が発生しますが、今回は、爆発は水線の上で発生し
ていますので、これも当たりません。

デッキ上の被害を横に置いて、船体の凹みだけを見て、船(潜水艦)
または暗礁等と衝突したという向きもありますが、その場合に発生
する筈の擦過痕がありません。

従って、残る可能性としては、鉄の様な固い外殻で覆われていない
爆薬が船体の至近距離で爆発したと考えるべきではないかと思われ
るのです。例えば、2000年10月に発生したアルカイダによる米国駆
逐艦コール襲撃事件の様なケース
です。複合型ゴムボートに爆薬を
積んでタンカーに接近し、至近距離で自爆した
と考えると、弾片に
よる被害が発生しなかった事や被害が水線上に発生した事、救命ボ
ートが下部からの爆風で吹き飛ばされた様に見える事等の理由が付
くと思われます。

駆逐艦コールでは、船体に12m四方の破孔と亀裂が生じ人的にも
大きな犠牲者がでましたが、今回のケースでは破孔も生じていませ
し、人的損害も軽微です。この理由は、簡単で、コールの外板が厚
さ1~2cmであったのに対し、大型タンカーの外板は6cmと三
倍以上の厚みがあります。乗組員の数もコールが300名以上である
のに対し、タンカーは船体が巨大である割りに約30名しか乗り組ん
でいません。また、爆薬の量が違った可能性もあります。それらが
合わさって被害の差になって現れたと言えます。

テロリストがタンカーを狙った理由ですが、これは想像に過ぎませ
んが、テロリストにとっては、世界が不安定で人々が不安に駆られ
る状態が、望ましいと考えられます。また、アフガニスタンで米国
によるテロリスト制圧作戦が進行する中で、アルカイダは、それに
対抗する何らかの作戦行動が必要とされていたと思われます。その
中で、過去に成功した(栄光の)作戦を模倣しようとしたのではない
かと考えられるのです。

また、BPが、メキシコ湾の海底油田プラットホームで大規模な原
油流出事件を起こした事で、会社の存否を左右される様な問題にな
っている点を参考に、ホルムズ海峡で大規模な原油流出事故を発生
させることで、自己の存在をアピールすると同時に世界的な不安心
理を加速しようとしたのではないかと思われるのです。

以上、現時点で得られる材料を利用して原因を追求して見ました。
今後、詳細な原因究明が進めば、異なる原因が判明するかも知れま
せん。事件発生後二日での取り敢えずの推測という事で、ご理解頂
ければと思います。


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2010年7月29日木曜日

政治的計算が行き届いた千葉法相の死刑執行

死刑執行 やっと法相の責任を果たした(7月29日付・読売社説)

民主党政権になってから初めて、2人に死刑が執行された。昨年7月に3人の
執行があって以来1年ぶりになる。

千葉法相はかつて「死刑廃止を推進する議員連盟」のメンバーだった。昨年9
月の就任以降、死刑執行に対する法相としての姿勢を明確にしないまま執行ゼ
ロの状態が続いていた。この結果、死刑確定者は109人と、過去最高の水準
にまで増えていた。

刑事訴訟法は、死刑確定から6か月以内に刑を執行しなければならないと定め
ている。法相の考え方や信条によって、執行のペースが左右されるとすれば、
法治国家として異常な事態である。

先の参院選で落選した千葉法相が、民間人として続投することには批判も出て
いた。この時期、突然の執行に踏み切った真意をいぶかる声もあるが、法に基
づく執行は、法相として当然の責務だ。

内閣府が今年2月に公表した世論調査では、死刑容認派が過去最高の85・6
%を占めた。被害者や遺族の感情に配慮する意見や、凶悪犯罪の抑止力になる
ことを期待する意見が多かった。

世界的には欧州を中心に、死刑を廃止か停止している国の方が維持している国
よりも多い。だが日本では、国民の大多数が死刑を容認している現実を踏まえ、
その声を尊重する必要があろう。

法相は自ら希望して、拘置所で2人の刑の執行に立ち会った。記者会見では
「見届ける責任があると思った」と述べた。法務行政の最高責任者が執行に立
ち会うのは、初めてのことだという。

法相はまた、死刑制度のあり方について、省内で本格的な議論を始める方針を
明らかにした。

昨年から裁判員裁判が始まっており、いずれ裁判員が裁判で死刑の選択を迫ら
れる日も来る。

国民が責任の一端を担う以上、死刑制度の議論を深めること自体には意味があ
ろう。だが、最初から廃止や停止の結論ありきでは、国民の理解は得られまい。

死刑に関する情報の公開も欠かせない。法相が東京拘置所の刑場を報道陣に公
開する方針を示したことは前進と言える。

これまで法務省は、死刑について徹底した「秘密主義」を貫いてきた。執行し
た死刑囚の氏名まで公表するようになったのは2007年以降である。

刑場の構造、執行の方法、死刑囚の生活――。そういった情報が提供されるこ
とが、国民一人ひとりが死刑制度を考えるきっかけになるだろう。

(読売新聞 2010/07/29)


死刑廃止を信念とし就任以来、執行命令書にサインしようとしなか
った千葉法務大臣が、2名の死刑を実施し、その執行に立ち会いま
した。

ご本人は、今回死刑を執行した事について「(これまでと)考え方
を異にしたわけではない。法務大臣として職責が定められているこ
とを承知しながら、大臣職をさせていただいてきた」と述べていま
すが、就任以来今まで死刑執行を放置していた訳であり、意図的に
職務怠慢の状態を作ってきたとしか言えません。

死刑廃止に関する千葉景子法相の志向は極めて明確であり、「死刑
廃止を推進する議員連盟」を主催していた他、「死刑廃止」を主要
な主張の一つとするアムネスティの支援を目的とするアムネスティ
議員連盟の事務局長としても活動していました。

その日本における死刑廃止運動の中心人物というべき人が、今
回何故、年来の主張と信念に反して死刑を執行したのでしょうか。

上に記した、本人の弁明では、法務大臣になった時から、死刑を執
行する覚悟はあったという事ですが、それでは、参議院議員として
の任期の最終日まで、死刑執行命令書にサインするのを引き伸ばし
た理由が判りません。参議院議員であり法務大臣としては、最終日
であっても、民間人としての法務大臣としての職務は翌日以降の継
続するのですから余計に疑念を感じざるを得ません。

では、どうして、千葉法相は、死刑の執行を行ったのでしょうか?
私は、その理由は、極めて緻密に政治的利益を計算した結果である
と考えています。

菅首相は、千葉法相が先の参議院選挙で落選したにもかかわらず法
務大臣を続投させる事で、党内で発生していた内閣改造への突き上
げを回避しようとしました。しかしながら、表向きの理由は、千葉
法相が民間人であっても法相として適切な人物だからと言わざるを
得ません。しかし、その決定に対しては、民主党の内外から批判が
噴出しました。その中でも有力な意見であったのが、千葉法相が死
刑を執行していない事を職務怠慢と捉え、法相として不適格と指摘
するものでした。

記事にもある様に、世論調査では死刑を容認する意見は実に国民の
85%以上に達しています。このまま死刑を執行しない千葉法相を
容認し続ける事は、菅内閣として、国民になんら説明を行う事なく、
その意思に反して、死刑廃止を推進する意思と見られかねない状況
でした。

その渦中の千葉法相が、死刑を執行する事で、菅首相は、千葉法相
の法相としての適格性を再度主張する事ができ、党内の内閣改造の
声を抑える事が可能となり、ひいては、9月の代表選での再選に繋
げる事が出来る様になります。

現時点で、菅首相の頭の中では、9月の代表選での再選が他の何者
にも優先します。千葉法相は、信念を曲げて、死刑を執行した事で、
菅首相に政治的に大きな貸しを作る事ができ、例えば、外国人地方
参政権や、人権擁護法案と言った反日法案への菅首相のコミットを
取り付けたのかも知れません。

千葉法相に対しては、今まで死刑廃止を運動してきた、いわば内部
から、信念を曲げた事に対する批判が出てくるかも知れません。
しかし、上記の様な政治的反対給付がなかったとしても、今回の死
刑執行は、千葉法相にとってマイナスにはなりません。ここで、民
主党内閣や市民運動出身の菅内閣を潰すより、自分が一時的に信念
を曲げる事を選んだと言えば、内部に対して、十分な説得材料にな
ります。その上で、死刑廃止の国民運動を起こし、志に反して死刑
を執行せざるを得なかった心情や、執行に立ち会う事で感じた死刑
の重みを訴えれば、国民運動を主導し、もう一度、日本の死刑廃止
運動を指導する事も可能になるのです。

その意味で、今回の死刑執行は、千葉法相にとって、全く損のない
取引であったと言える様に思うのです。


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2010年7月28日水曜日

日韓併合百年に配慮するのは政治的には正しいが...


「韓国に配慮」防衛白書を異例の公表先送り


政府は27日、当初30日に予定していた平成22年版防衛白書の閣議了承を
先送りすることを決めた。白書では、日本固有の領土でありながら韓国が不法
占拠を続ける竹島について、「領土問題が未解決のまま存在」と明記しており、
これに対する韓国側の反発に仙谷由人官房長官が配慮し、防衛省に先送りを指
示した。日韓併合100年を迎える8月29日以降まで了承を控える。外交問
題を理由にした了承先送りは異例で、防衛省内には「弱腰すぎる」との不満も
くすぶっている。

防衛白書では平成18年版から毎回、「わが国固有の領土である北方領土や竹
島の領土問題が依然未解決のまま存在している」と明記しており、22年版で
も同様の記述を盛り込む。

韓国側はこれまでも防衛白書に竹島を日本の領土と明記することに繰り返し反
発している。韓国の「2008年版国防白書」では表紙に竹島のカラー写真を
掲載するなど、日本への対決姿勢も強めている。

これに対し、日本側は民主党政権下で、「不必要な摩擦を招かないため、その
言葉(不法占拠)は使わない」(岡田克也外相)との発言に象徴されるように
過剰な配慮が際立つ。白書の了承先送りも、その延長線上にある。

政府内には了承先送りについて「不法占拠を続ける韓国を利するだけだ」(外
務省幹部)との批判も強い。先送りしても竹島を「わが国固有の領土」との記
述自体を削除するわけではなく、了承時には韓国側が反発を強めるのは必至だ
からだ。日韓併合100年という節目の後までずらすだけの場当たり的な対応
は、問題をクローズアップさせただけともいえ、「官邸の政治センスを疑う」
(政府高官)との指摘もある。

表向き防衛省も、年末に改定予定の「防衛計画の大綱」に関する記述など、竹
島以外の手直しも官邸側から求められていると強調する。だが、白書はすでに
約1千部が印刷されており「事業仕分けの無駄排除と矛盾する」(同)と揶揄
(やゆ)する声もある。

防衛白書は防衛問題について国民の理解を得るために毎年刊行し、22年版で
36回目。例年、7月から8月上旬に閣議で了承し、公表している。

(産経新聞 2010/07/28)


私は、竹島問題に触れた防衛白書の発表を八月末以降に延期する事
については、それ程、反対ではありません。現在の韓国や中国のナ
ショナリズムは、いわば戦前の日本のナショナリズムを彷彿させる
ものであって、国内でそれに反する言動を取るのが難しくなってい
る様に見えます。

特に韓国は、戦後の反日教育に加え、進歩派二代の大統領時代に北
朝鮮との対決から国民の目を逸らす為に、日本を仮想敵として扱っ
た事から、日本に対して殊更対決姿勢で臨む事が、国民感情に合致
する様になっています。李明博大統領の様な比較的冷静に見える政
治家ですらナショナリスティックな世論には迎合せざるを得なくな
っている様に見えるのです。

現在の韓国人にとっては、日韓併合の時代的背景や当時の韓国の状
況などは、全く考えを及ぼす事なく、現時点での倫理感から日本を
一方的に糾弾する事が普通の反応となっています。

また、竹島についても、日本が朝鮮侵略の第一歩として一方的に奪
ったものを戦後回復したものであるという一方的な主張が反日教育
の中で徹底的に教え込まれています。

その様な韓国側の国民感情の中で、特に日韓併合百年記念日という
国民感情が燃え上がりそうなタイミングで、竹島に関する係争状態
を取り上げた防衛白書が発刊されれば、韓国側の未熟なナショナリ
ズムを必要以上に刺激する事は、火を見るよりも明らかです。

日本にとって、韓国は、現時点で角を突き合わせる相手ではありま
せん。優先順位からすれば、韓国よりも、寧ろ、北朝鮮や中国を主
要敵国と考えるべきなのです。

その様な観点からすれば、日韓併合百年の記念日というタイミング
を避けて防衛白書の発行を1~2ヶ月延期するのは、ごく当たり前
の外交的配慮であり何の問題もないと考えます。

むしろ問題は、岡田外相の様に、韓国を刺激するからという理由で
不法占拠状態という言葉を使わない様な、卑屈な態度を継続して示
す事です。岡田外相は韓国に対する一定の譲歩のつもりでそういう
態度を示しているのかも知れませんが、韓国側からすれば、当たり
前としか受け取って貰えず、日本側の領有主張が軟化したと受け取
られる懸念が生じるからです。また、防衛白書から竹島問題の記述
を無くす事は絶対にやってはならない事は言うまでもありません。

外交は、国民感情でやるものではありません。自国の国民感情はも
とより相手国の国民感情すら利用して交渉するのが当たり前なので
す。不要な摩擦は避けつつ自己主張は最大限に行うのは、外交の常
識です。そうであるだけに無用な配慮もまた避けるべきである事を
指摘したいと思うのです。


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2010年7月27日火曜日

新防衛構想 東シナ海重視の日本防衛戦略

※自衛隊組織図

自衛隊、沖縄・南西に重点配備…安保懇が提言

政府の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(菅首相の諮問機関、
座長=佐藤茂雄・京阪電気鉄道最高経営責任者)が来月上旬に首相に提出する
報告書原案の全容が25日、判明した。

朝鮮半島や台湾海峡有事を念頭に、機動的で実効性のある防衛力整備を目指す
ことを打ち出し、冷戦時代からの国防の基本方針だった「基盤的防衛力構想」
の見直しを提言している。集団的自衛権をめぐる憲法解釈見直しの議論を踏ま
えた制度整備を提言し、武器輸出3原則の緩和も求めている。

報告書は、民主党政権下で初めて策定される新たな「防衛計画の大綱」(防衛
大綱)のたたき台となるもので、年末の大綱策定にどう反映されるかが今後の
焦点となる。

原案では、冷戦時代以降、自衛隊を全国に均衡配備する根拠となってきた基盤
的防衛力構想について、現在の安全保障環境にそぐわないとして撤廃を提起。
朝鮮半島や台湾海峡有事とともに、「限定的で小規模な侵略」などの有事に能
動的に対処できる態勢整備を求めている。

具体的には、単一のミサイル攻撃といった事態への対処より、「複合的な事態
の発生に対処できる機動的、弾力的、実効的な防衛力整備」を提言している。
部隊配備は、全国均衡から沖縄・南西諸島重視への転換が視野にある。

また、世界の平和と安定に貢献する「平和創造国家」を目指すべきだとし、国
連平和維持活動や海賊対処、災害救援活動に積極参加できる整備を促している。

集団的自衛権については、米国に向かうミサイルの迎撃を可能とするために憲
法解釈を見直すべきだとした過去の議論を踏まえ、自衛隊がそうした事態を想
定した演習を行えるよう、態勢の整備を求めている。

諸外国への武器や関連技術の輸出を禁じた武器輸出3原則については、米国や
その同盟国など、価値観を共有する国との装備品の共同開発・生産や、日本企
業による国際開発・生産計画への参加を認めることを提言している。

日米同盟については、日本の安全保障戦略や地域の安定に極めて重要だとした
上で、沖縄の戦略的重要性は今後一層高まるとし、在日米軍基地の安定運用に
向け、基地の日米共同使用の推進などを提言している。

今後約10年間の防衛力整備の指針となる防衛大綱の策定は当初、昨年末に予
定されていたが、政権交代に伴い、1年先送りされた。新たな懇談会が今年2
月に発足し、議論を重ねてきた。

◆基盤的防衛力構想=1976年策定の防衛大綱で打ち出された防衛力整備の
概念。各種侵略に対して独立国として必要最小限の防衛力を保有するとし、力
の空白を作らぬよう、自衛隊部隊を均衡に配備するべきだとした。「存在する
ことが自衛隊の仕事」という考え方の源流ともいわれる。冷戦後の95、
2004年に策定された二つの防衛大綱でも撤廃されず、部隊編成の硬直化の
一因とされてきた。

(読売新聞 2010/7/26)


東シナ海を指向する日本の軍事力

日本政府が、中国と向き合っている沖縄など、東シナ海近辺に軍事力を集中さ
せる手順を進めている。日本はこれまで、同地域の安全保障については在日米
軍に任せ、自衛隊は日本国内にバランスを取って配備してきた。

26日付読売新聞は、首相の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する
懇談会」が、自衛隊の全国均衡配備を設定した「基盤的防衛力構想」(1976年
に設定された日本の防衛力整備の基本概念)の撤廃を報告書に盛り込み、来月
上旬に政府へ提出すると報じた。懇談会の報告書は、今年末に改訂される「防
衛計画の大綱」に大きな影響を与える。

同紙によると、懇談会は報告書の原案で、自衛隊の「機動的実効性」を確保す
るため、自衛隊の部隊配備の原則を「全国均衡」から「沖縄や南西諸島重視」
へと転換することを要求した。ここには、日本政府が米軍の削減を推し進める
沖縄や、中国との間で領有権紛争が起きている尖閣諸島も含まれる。

これと共に懇談会は、▲米国に向かうミサイルを(日本が)迎撃できるよう、
「集団的自衛権」に関する政府の憲法解釈の変更と自衛隊の要撃訓練の実施
▲米国や米国の同盟国など、価値観を共有する国と装備品を共同開発・生産す
るため、「武器輸出三原則」の緩和-などといった内容を原案に盛り込んだ。
「集団的自衛権」とは、同盟国が攻撃された場合、共に戦える権利のこと。現
行の日本国憲法は第9条で、交戦権そのものを認定していない。また、1967年
に決定された「武器輸出三原則」は、日本政府の厳格な追加解釈により、現在
では武器および武器技術の実質的全面禁輸を意味している。

(朝鮮日報 2010/07/27)



従来、日本の防衛力整備は、各種侵略に対して独立国として必要最
小限の防衛力を保有するという基盤的防衛力構想に基づく防衛計画
の大綱とその兵力整備の規模を明示した大綱別表を大枠として整備
されてきました。

この基盤的防衛力とは、「独立国としての侵略に対処する為の最低
限の防衛力」ですから、冷戦が終わっても、ソ連がなくなっても、
中国が台頭しても、本来であれば、考え方の変化は必要なさそうに
も思えますが、実際には防衛対象国がソ連であるか中国であるかは
大違いです。地形上も宗谷、津軽、対馬三海峡のチョークポイント
で押さえられていたソ連と、その様なチョークポイントがなく、第
一列島線、第二列島線で抑えないといけない中国が相手では、対応
も対策も、兵力整備も自ずと異ならざるを得ません。端的に言えば、
冷戦時が北方重視であったのに対し、中国の海洋進出を考えると、
沖縄、南西諸島重視に変更せざるを得ないのです。

こうした安保懇の動きと読売新聞の報道に、朝鮮日報は、すばやく
反応して「東シナ海を指向する日本の軍事力」という題の記事にし
ています。

この変化の方法については、最近の国際情勢の変化を考えれば、当
然の事と考えます。重点を沖縄・南西諸島に置くのも納得できます。
ただ、少し心配であるのは、民主党政権下で、どこまで中国を対象
にした防衛力構想を作り上げる事ができるか、また、防衛力の増強
が本当に可能なのかという点です。実際、上記の記事でも、基盤的
防衛力整備を放棄して、「限定的で小規模な侵略」などの有事態勢
整備を求めていたり、ミサイル防衛に関するトーンが落ちている様
にも思われます。ミサイル防衛については大綱を変更する事なく、
北朝鮮の核武装に対応しようとした為、組織的に各所に無理を生じ
たとも言えますが、依然として北朝鮮は、日本にとって最大の不安
定要因である点に変わりはありません。

また、中国海軍の海洋進出と、その行動は、ソ連海軍のそれと比べ
ても、露骨、冒険的で且つ自己主張に満ちており、日本としても、
直接的な対抗処置を取らざるを得ない処です。しかし、国連平和維
持活動や海賊対処等もあわせ、従来以上の活動が要請されながら、
実際には、財政面での限界から、三自衛隊の定員や予算が固定され
たり、逆に削減される可能性すら高まっているのであり、戦略重心
のシフトが、沖縄・南西諸島への大幅増強ではなく、他地域の大幅
な配備削減と沖縄・南西諸島への若干の増強によって実現が図られ
るのではないかと懸念せざるを得ないのです。

その意味からすれば、今回の「東シナ海を指向する日本の軍事力」
構想が、これから決められる防衛計画の大綱に纏められる段階で、
どの様な具体的な整備内容になるか注目すべきではないかと考える
処です。


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2010年7月26日月曜日

海自潜水艦増強 本当に実現できれば良いのだが...

※海自潜水艦「そうりゅう」。KURE-NEWS Webサイトより転載。

海自潜水艦を増強 活発化する中国海軍に対処 防衛大綱改定

防衛省は24日、年末に改定する「防衛計画の大綱」で海上自衛隊の潜水艦を
増強する方針を固めた。現在の18隻態勢から20隻台に引き上げる。昭和51
年に初めて策定した防衛大綱で隻数を定めて以降、増強は初めて。東シナ海と
太平洋で中国海軍の動きが活発化し、活動範囲が広がっていることや、北朝鮮
潜水艦による魚雷攻撃と断定された韓国哨戒艦撃沈事件を受け、日米の抑止力
と情報収集能力を強化する狙いがある。

海自の潜水艦は51年策定の防衛大綱の「別表」で16隻と定め、その後の大
綱改定でもそのままだった。ほぼ毎年、最も老朽化した1隻が退役する代わり
に新造艦1隻が就役することで、18隻態勢(教育訓練用の2隻を含む)が維
持されてきた。20隻台に増強する際には、新造のペースは変えず、退役時期
を延ばす計画だ。船体技術の向上や運用に工夫を凝らすことで使用期間の延長
が可能という。

東西冷戦期には、海自の潜水艦の任務はソ連太平洋艦隊に備えるための宗谷、
津軽、対馬の3海峡封鎖に重点が置かれた。しかし、アジア・太平洋地域で中
国海軍の存在感が増すにつれて、その任務は中国などを念頭においた南西方面
への対応にシフトしている。

中国海軍は10年以上にわたり潜水艦の保有数を約60隻で維持する一方、近
代化を急ピッチで進めた。台湾海峡有事で最大の敵となる米空母の接近を阻止
するには、隠密性に優れた潜水艦が切り札になるためだ。

4月、中国海軍の艦艇10隻が沖縄本島と宮古島の間を通過した際、中国が保
有する潜水艦の中で最も静粛性が高く、探知されにくいキロ級潜水艦が潜航せ
ずにあえて浮上航行した。これは、太平洋まで活動範囲を拡大し、「より前方
で米空母を足止めできる能力を誇示した」(防衛省幹部)ものとみられている。
米国防総省が2月に発表した「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)は、中
国の接近阻止能力への対応を重点項目に挙げ、米軍の態勢強化と同盟国の能力
向上が必要としている。このため、海自の潜水艦態勢の強化は急務となっていた。
     ◇
防衛計画の大綱 日本の国防政策と防衛力整備の基本方針。昭和51年の策定
以来、今年で改定は3回目。有識者による「新たな時代の安全保障と防衛力に
関する懇談会」が今夏に提出する報告書と防衛省などの計画案を踏まえ、年末
に新たな大綱を閣議決定する。
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海上自衛隊の潜水艦 通常型と呼ばれるディーゼル動力艦だけで原子力潜水艦
は保有していないが、静粛性などで世界最高レベルとされる。最新鋭の「そう
りゅう型」はAIPという新たな動力装置を搭載し、長時間の潜航が可能。潜
水艦の建造費は1隻約500億円。

(産経新聞 2010/07/25)


産経新聞は、先日も、F-Xの選定遅延から当面の繋ぎとしてF-
2を増産するというスクープ記事を出していましたが、他紙は追従
せず、逆に朝日新聞は、それを否定する記事を出す始末で、信頼性
に疑問符がついてしまいました。

今回の記事も同じです。海自潜水艦の退役艦齢が諸外国と比べ、非
常に早いのは、周知の事実です。その理由は、毎年一隻という建造
ペースを維持しながら、保有隻数を大綱の枠内に収める為です。
但し、2000年以降は練習潜水隊が編成され、練習潜水艦2隻が別枠
で配置される様になっているので、現役16隻と練習潜水艦2隻の
合計18隻が保有枠になっています。

今回の構想は、この退役艦齢を今までの18年から20年以上とす
る事で、保有潜水艦数を増加させようというものです。その点では
実現可能なのですが、保有潜水艦数を増加させると、当然、乗員や
支援要員の数が増加します。

近年、海自は、大型艦が増加し、海外任務が増加しているにも関わ
らず艦船乗員の定員は変わらずで、隊員の負担と不満が高まってい
るといいます。水上艦艇に加え、潜水艦隊でも、定員が増加しない
と同様の現象が生じる可能性は高いと思われます。それに加え、稼
動潜水艦数が増えると保守、補修用の費用も増加する筈ですが、社
会保障費以外の予算の抑制方針の中でこれも、本当に手当がされる
のか疑問なしとしません。

日本の将来を左右する科学技術関係の費用すら仕分けしようという
民主党の事です。一年目こそ、22DDHの予算が通りましたが、
今後、政治主導の名目で、マスコミや一般受けのする防衛費の一方
的に削減を行う可能性は、予算編成が厳しさを増せば増すほど、高
くなる筈です。その様に考えると、この記事の様な潜水艦隊の増勢
という意思が、例え、防衛省内で固まっていたとしても、実現性と
継続性には大きな疑問を感じざるを得ないのです。


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