2009年8月7日金曜日

現実を無視した東アジア共同体構想は危うい

※写真は時事通信サイトより転載

民主・鳩山氏「アジア共通通貨の実現を」

民主党の鳩山代表は、10日発売の月刊誌「Voice」に寄稿し、東アジア
地域の通貨を統合する「アジア共通通貨」の実現を提唱した。

鳩山氏は、「私の政治哲学」と題した寄稿で、自らの政治信条である「友愛」
に基づく国家目標の一つとして、「東アジア共同体」の創造が必要だとの考え
を示した。

具体的には、国際情勢について「米国一極支配の時代から多極化の時代に向か
う。中国が、軍事力を拡大しつつ、経済超大国化していくことも不可避の趨勢
(すうせい)だ」との認識を示した。そのうえで「アジア共通通貨の実現を目標
とすべきであり、その背景となる東アジア地域での恒久的な安全保障の枠組み
を創出する努力を惜しんではならない」と主張した。ただ、アジア共通通貨の
実現には「今後10年以上の歳月を要する」とし、政治的統合には「さらなる
歳月が必要」とも指摘した。

(読売新聞 2009/08/06)


もともとは論文として書かれている訳ですから、それを読んで批判
すべきですが、報じられている範囲で気になった事を書いてみます。

まず鳩山氏の友愛思想は、どこまで普遍的な内容を持っているのか
全く不明です。政治信条というのは理想です。昔「世界は一家、人
類は皆兄弟」と言っていた競艇業者がいましたが、内容としてはそ
れとあまり変わりない様に思われます。実際にこの競艇業者は、今
では日本財団と言う財団を持っていて、世界的な各種のボランティ
ア活動に資金提供を行っており、その理念に基づいた活動を行って
います。少なくとも、自己の管理する資金を自己の理念に基づいて
支出するのは誰の迷惑にもなりませんし、結構な事と思います。

翻って、鳩山氏の場合はどうでしょうか。鳩山氏も私財を投げ打っ
て「友愛」に尽くしてもらえれば、誰の迷惑にもならないのですが、
鳩山氏の場合は自身の政治目標として「友愛」を掲げ、その表現とし
て、国家目標としての東アジア共同体の創造を唱えています。
しかし、「友愛」という言葉が地域を限定しない理念であるならば、
対象は、東アジアに限られる必要は全くありません。アジア全域で
あっても構いませんし、米国との間であっても、世界全体であって
も良い筈です。

「世界は一家、人類は皆兄弟」というスローガンの方が、「東アジアは
一家、東アジアは皆兄弟」というスローガンに比べ、私には快く響き
ます。一般的にも、余程シンパシーが高いと思われます。悪く言え
ば、東アジアと限定するのは、偏狭に思える位です。たまたま、隣
国というだけで、思想的にも、体制的にも、相容れず、宗教的にも
経済的な発展段階も異なる国と何故、共同体を組まなければならな
いかという一点に限っても、素直に理解するのは難しいと言わざる
を得ません。

次に気になる点は、「アジア共通通貨の実現を目標とすべきであり、
その背景となる東アジア地域での恒久的な安全保障の枠組みを創出
する努力を惜しんではならない」という言葉です。東アジア共同体
だったものが、共通通貨についてはアジア共通通貨と適用範囲が広
がっています。通貨の適用範囲が政治的な領域より広がる事はあり
ません。英国で独自通貨であるポンドが使われている様に、ユーロ
はEU全域で使われている訳ではないのです。寧ろ、通用する範囲
は狭いと言えます。鳩山氏のアジア共通通貨という言葉を善意に解
釈すれば、東アジア共同体以外でも貿易決済通貨として使われる通
貨としてアジア共通通貨と書かれているのかも知れませんが、やや
通貨に対する考え方が粗雑である様に思われます。

更に、気になるのが実現までのタイムスケジュールです。鳩山氏は
アジア共通通貨の実現には「今後10年以上の歳月を要する」とし、
政治的統合には「さらなる歳月が必要」とも指摘した様ですが、先
に述べた様に、通貨統合は共同体が深化しないと実施できません。
つまり東アジア共同体ができなければ、共通通貨は実現できません。
EUはその前進である、欧州石炭鉄鋼共同体が1952年に設立されて
から、マーストリヒト条約が締結されEUが発足するのに、40年の
年月を要し、通貨統合が行われるのに、更に、9年と合計50年に近
い期間を要しています。文化も、体制も、宗教も、経済発展段階も
東アジアよりもはるかに近似したヨーロッパですら通貨統合迄に半
世紀を要したのに、東アジアで、10年で共通通貨が実現できる可能
性は、ゼロとしか言い様がありません。

今人気の愛を旗印にした戦国武将が主人公のNHK大河ドラマを当
て込んだ様な感じがしないでもない「友愛」と言う信条も結構ですが、
次期総理になるかもしれない鳩山氏には、もう少し国際社会の現実
に目を向けて欲しいと思われてなりません。


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2009年8月6日木曜日

一方的武装解除と利敵行為を勧める朝日新聞

※写真はDaily Telegraphサイトから転載

被爆64年―「非核の傘」を広げるとき

被爆地は今年、格別な夏を迎えた。「核兵器のない世界を目指して具体的な方
策をとる」。米国のオバマ大統領がプラハ演説でそう宣言して、初めて迎える
夏だからだ。

大統領が、核を使った国として「行動する道義的責任がある」と語った意味は
とても大きい。だが、プラハ演説の凄味(すごみ)は、そこにとどまらない。
グローバル化した世界は、相互依存を強めている。世界のどの経済都市で核爆
発が起きても、多くの犠牲者が出るだけでなく、世界の経済システムも破局の
ふちに追いやられる。核戦争でも核テロでも結果は同じことだ。

核抑止を続けた方が世界は安定するとの考えが核兵器国や同盟国で根強い。だ
が、核抑止の魔力にひかれて、核拡散が進む恐れがある。テロ集団の手に核が
渡る危険もある。それが現実になった時のリスクは計り知れない。

どうすべきか。核のない世界に向けて動くことこそ、新たな安全保障戦略の基
本ではないのか。オバマ大統領は、そこを問いかけている。
大統領の音頭とりで、9月24日には核問題に関する国連安全保障理事会の首
脳級会合を開くことも決まった。

■先制不使用を義務に

核に頼らない安全保障体制を構築していくには、たくさんの政策の積み重ねが
いる。核兵器国には山ほど注文したいが、ここでは特に、「非核の傘」を広げ
ていくことを強く求めたい。

核不拡散条約(NPT)に入った非核国には、核を使用しない。これを世界標
準として確立すれば、NPT加盟の非核国は、核攻撃のリスクを大幅に減らせ
る。それが「非核の傘」だ。
「非核の傘」を広げれば、核兵器の役割を縮小でき、保有数の減少にもつなが
る。オバマ大統領の任期のうちに、軍縮と安全保障の一挙両得を大きく前進さ
せたい。

「非核の傘」を広げる方法は、いくつもある。第一は、国連安保理で、NPT
に入っている非核国への核使用は認められないと明確に決議することだ。潘基
文・国連事務総長は、核保有国でもある国連安保理の常任理事国が非核国に核
攻撃しないと保証するのは可能だろうと指摘している。一刻も早く、実現すべ
きである。

第二の方法は、非核地帯条約の活用だ。ラテンアメリカ、南太平洋、アフリカ、
東南アジア、中央アジアには非核地帯条約がある。アフリカだけが未発効だが、
いずれの条約にも、核兵器国は条約加盟国を核攻撃しないことを約束する議定
書がある。

だが、米ロ英仏中の5核兵器国すべてが議定書を批准しているのはラテンアメ
リカだけ。アフリカでの条約発効を急ぎ、同時に核兵器国がすべての議定書を
批准して、「非核の傘」を広く国際法上の義務とすべきだ。

第三の方法は、核兵器国が核先制不使用を宣言し、核の役割を相手の核攻撃の
抑止に限定することだ。非核国はもともと核先制使用などできないから、核兵
器国が先制不使用を確約すれば、「非核の傘」は一気に拡大する。

■北東アジアに非核地帯

日本政府は、米国による核先制不使用宣言には慎重だ。北朝鮮は核実験しただ
けでなく、生物・化学兵器も持っている可能性がある。その使用を抑えるため
に、核先制使用も選択肢として残すべきだ、という立場だ。

だが、日本が核抑止を強調するあまり、核兵器の役割を減らし、核軍縮を進め
ようとするオバマ構想の障害になっては、日本の非核外交は台無しだ。当面、
核抑止を残すにせよ、同時に「非核の傘」を広げていく政策を進めるべきだろ
う。

一案は、北東アジアにも非核地帯条約をつくることだ。日韓だけでも先に締結
して発効させ、米中ロなどが日韓に核攻撃しない議定書を批准して、「非核の
傘」を築く。

北朝鮮については、非核化してNPTに戻った段階で条約に加わり、「非核の
傘」で守られるようにする。そうすれば北朝鮮が核放棄する利益は高まるし、
地域の安定にも役立つだろう。

軍事費を拡大させる中国への対応も欠かせない。オバマ大統領は7月の米中戦
略対話で、東アジアでの核軍拡競争は両国の利益にそぐわないと明言し、北朝
鮮の非核化などで協力していくことの重要性を強調した。「恐怖の均衡は続け
られない」とも語った。

米中は急速に経済の相互依存を強めている。たとえ相手の産業を破壊しても影
響が少なかった冷戦期の米ソとはまったく異なる関係だ。

■中国も軍縮の輪に

日本も米中の現実を認識し、北東アジアでの核の役割を減らしながら、地域の
安定をはかる構想を示していく必要がある。核抑止でつながるだけでなく、
「非核の傘」拡大や地域の軍備管理で連携していく。日米同盟をそんな形に進
化させれば、中国を核軍縮の輪に加える、大きな力になるだろう。

世界の核拡散問題には地域対立や宗教的対立がからんでいる。核実験をしたイ
ンド、パキスタン。事実上の核保有国とされるイスラエル。ウラン濃縮を続け
るイラン。いずれの場合も、そうだ。これらの国を非核化へ向かわせるには、
根気強く対立をほぐしつつ、核保有がむしろ国を危うくすることを説いていく
しかない。

唯一の被爆国として日本は、そうした外交でももっと知恵を絞りたい。

(朝日新聞 2009/8/6)


知恵を絞りたいと言う割りには、全く知恵のない夢物語を展開する
のが朝日新聞の方針である様です。深読みすれば、言葉巧みに日本
を武装解除するのがその意図かも知れません。あるいは、自己満足
の為には国を売っても構わないという朝日新聞のイデオロギーであ
る反日亡国論の現れなのでしょうか。

勿論、核軍縮を進める事も、非核地帯を推進するのも結構でしょう。
しかしながら一番問題なのは宣言を出す事ではなく、如何に実効性
を担保するかにあります。

例えば、中国は、非核兵器国に核の使用を行わないと言っています
が、この実効性を信頼する国は、まずありません。1992年にフィリ
ピンが米軍基地を撤去した後、中国に南砂群島の実行支配権を奪わ
れたのは記憶しておくべき事です。つまり、米国の実効的な支援機
能が無くなった時、中国は容赦なく、小国の利権を侵食したという
事実があるという事です。幾ら口では、非核国への攻撃を行わない
と言っても、実際に行っている事がそれと正反対では、信用する事
はできません。

中国でさえこの状態なのですから、NPT条約を破って核開発を行っ
た北朝鮮がもし非核地域宣言に参加したとしても、その信頼性は、
皆無と言って過言ではありません。北東アジアでの非核地帯設置に
関して幾ら宣言を積み重ねようとも、その核兵器保有国の中に言行
不一致の国が含まれる限り、拡大抑止の防壁を下ろす事は、武装解
除以外の何者でもないと言わざるを得ないのです。

朝日新聞は、日本が核抑止の実行性を確保しようとする事が核軍縮
の障害と述べていますが、信頼醸成処置をまず取らなければならな
いのは、軍拡を継続的に実施している側である筈です。それには、
全く頬被りをして、日本の武装解除を説くのは利敵行為もしくは売
国的行為に他なりません。

オバマ政権にしても、核軍縮を一方的に行う事を意図しているので
はありません。軍縮は、長期間、彼我の戦力比を固定化する為、そ
の時点での軍事競争の反映であり、また、血を流さない戦いとも言
えます。決してキレイ事だけで済む事ではないのです。
朝日新聞が本当にナイーブなのかどうか甚だ疑問ですが、核軍縮交
渉は白い砂糖菓子とお茶を片手に優雅な会話を行う場ではなく、冷
酷な計算と力の鬩ぎ合いの場なのです。そういう理解なく、国民に
情緒的な軍縮を説くのは、まさに自殺行為でしかないのです。朝日
新聞の優秀な論説委員達が、核軍縮の歴史や本質を知らずに社説を
書いているとは思いません。そうであるだけに、朝日新聞の勧め
る核軍縮は、実際には新左翼が行っている無防備都市宣言と同様の
胡散臭さを感じざるを得ないのです。


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2009年8月5日水曜日

六度目の発射延期 韓国初の人工衛星打上ロケット

※CGは朝鮮日報サイトより転載

韓国初の宇宙ロケット、またも発射延期
-「羅老号」発射に手をこまねくほかないワケ


11日に発射が予定されていた韓国初の宇宙ロケット「羅老号」が、共同開発者
のロシア側の最終テストで問題が発見され、発射が延期となった。

教育科学技術部は4日、「ロシア側が、先月30日に行った最終燃焼テストで予
想とは著しく異なるデータが発見され、これを分析するのに時間が必要だと伝
えてきた」と説明した。航空宇宙研究院のイ・ジュジン院長は「詳細に分析す
るのに数日かかる予定で、その後、両国間の協議で発射日程を調整する」と語
った。これで韓国初の宇宙ロケットの発射は2005年から07年、08年、今年第2
四半期(4-6月)、7月30日、8月11日、そして今回を含め6度延期されること
になった。

羅老号は液体燃料を使用する第1段ロケットと固体燃料を使用する第2段ロケッ
トで構成されているが、このうち最も大切な第1段ロケットはロシア・フルニ
チェフ社が開発し、今年6月に韓国に引き渡している。羅老号の第1段ロケット
はロシアが次世代衛星発射体として開発中の「アンガラ」の第1段ロケットを
借用したもので、ロシアでも1度も使用したことがない製品だ。

ロシアは2011年にアンガラの発射を計画している。このようにロシアはロケッ
トの安全性が確保できない状況のため、韓国に引き渡したのと同じロケットを
製作し、これまで現地で何度もテストを繰り返してきた。航空宇宙研究院は「
ソフトウエアの異常で燃焼テストが延期され、発射日が7月30日から8月11日に
延期されたが、燃焼テストが終わると今度はテストデータに問題が見つかり、
再び発射が延期された」と説明した。

現在、全羅南道高興郡の羅老宇宙センターにはロシアの技術陣が派遣されてい
る。イ院長は「ロシアは問題が発生すると、“慌てないようにしよう”と言い、
問題が解決すると“計画通り行こう”と催促するため、どうすればいいのか戸
惑ってしまう」と語った。

羅老号の発射に関して、このようにロシアのテスト結果に頼らざるを得ないの
は、言葉だけの「共同開発」だからだ。韓国政府は当初、04年にロシアとの開
発契約を結ぶ際、2億ドル(現在のレートで約190億6200万円)を提供し、第1
段ロケットの全技術の移転を受けることとなっていた。しかしその後、ロシア
側の要求で、宇宙関連技術の移転を禁止する宇宙技術保安協定(TSA)を07年
に締結したことから、韓国の研究員がロシア側での開発に参加できず、韓国に
引き渡された第1段ロケットの内部を観察することができない。今回もロシア
は、3日夜にファクスで「待て」と伝えてきただけで、具体的な説明はなかっ
た。そうかといって代案があるわけでもない。米国、日本、欧州は、宇宙発射
体は大陸間弾道ミサイル(ICBM)と同じ原理という理由で、技術移転を拒んで
いる。韓国の力で宇宙発射体を開発するまで、今回のようなことが繰り返され
るほかない。

(朝鮮日報 2009/8/5)


昨日、11日に打上げが決まったと書きましたが、残念ながら六度
目の打上げ延期になってしまいました。
「羅老号」の一段目は開発途上のアンガラロケットのURM(Universal
Rocket Modules)そのものです。ロシアでも打ち上げた事がないだ
けに初のフライトテストでの打上げに慎重になるのも当然と言えば
当然なのです。

日本のH-IIAであれば、打上げ前に実機エンジンを使った燃焼テス
トを行っていますが、「羅老号」の場合をそれを行っていないか、
行っていたとしても、テスト後に燃焼制御用のソフトを大幅に入れ
替えている様子です。開発中のロケットであれば、それも止むを得
ないのかも知れません。

これと似た様な話がロシアのインド向け航空母艦建造計画でも起こ
っています。この話はもっと酷いもので、契約で決まった金額の他
に追加費用を支払わないと引渡しできないというものです。それと
比べれば追加費用を要求されていないだけ「羅老号」はましである
のかも知れません。

まあ、日本もサハリン1、2のガス田開発で痛い目にあっています
から、ロシアとの取引を行う上で、この手のリスクは当然見込むべ
きであり、それが嫌なのであれば、ロシアを提携相手に選ぶべきで
はないと言える様に思います。


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クリントン訪朝は北朝鮮の対オバマ外交の第一手

※笑顔を見せていないが、本心は?写真はロイターサイトより転載

「弱腰」の汚名 返上なるか

ビル、今度は大丈夫か? 米国のビル・クリントン元大統領(62)が4日、
北朝鮮訪問のため空路、平壌入りした。中朝国境での取材中に拘束され、不法
入国したなどとして実刑判決を受けた米テレビ局の女性記者2人の解放を目指
し北朝鮮側と協議する。金正日(キムジヨンイル)総書記(67)とも会談し
た。米朝が核、ミサイル問題で本格協議を開始する契機になりそうだが、米国
が北朝鮮のペースにはまる危険性もはらんでいる。

ホワイトハウスは、クリントン氏の訪朝について「2人の記者を解放するため
の、完全に私的な訪問」と強調するが、米朝双方が核やミサイルをめぐる対立
状況を対話局面に転換する効果を期待していることは間違いない。とりわけ北
朝鮮にとっては、“大物特使”を利用して米朝による2国間協議に持ち込もう
とする思惑があるとみられる。

バラク・オバマ政権の北朝鮮外交は発足以来、北朝鮮が対話の呼び掛けに応じ
る気配がないまま5月に2回目の核実験に踏み切るなど、糸口が見つからない
状況が続いてきた。

そんな中、6月に2記者に労働教化刑12年が言い渡され、何らかの行動を取
らざるを得ない状況に追い込まれた。妻のヒラリー氏(61)が国務長官であ
る特殊事情もあり、「元大統領」の登場となった。

米大統領経験者の訪朝は、クリントン政権下の1994年6月に核問題をめぐ
る危機回避のために訪問し、金日成(キムイルソン)主席(1912~94年)
と会談したジミー・カーター氏(84)以来。クリントン氏は、このときのカ
ーター氏に自らを重ね合わせているようだ。

しかし、クリントン外交は北朝鮮にまんまとだまされている。1994年の核
危機で米国は寧辺(ヨンビヨン)の核施設をピンポイントで空爆することも検
討していた。しかしクリントン氏は融和外交を取り、政権末期には国交正常化
に意欲を見せ、国務長官のマデレーン・オルブライト氏(72)を送り込んだ
ほか、最終的には断念したものの2000年末には自らの訪朝も計画した。

カーター氏の訪朝を受けた米朝枠組み合意で、米国は北朝鮮に軽水炉と重油を
提供した。しかし北は2002年に核凍結を一方的に解除し、2006年に核
実験を強行。北の核保有を許したのはクリントン政権の弱腰外交の結果だとい
う指摘を受けている。

クリントン氏にとって9年越しに実現した訪朝だが、オバマ政権が言明してい
る「米朝対話は6カ国協議の枠内だけ」という原則を曲げるようなことがあれ
ば、国連安保理決議に基づく国際社会の制裁の動きに大きな影響を与えること
になる。

米国人女性記者拘束 北朝鮮当局は3月17日、中朝国境の豆満江付近を取材
していた米ケーブルテレビ局「カレントTV」に所属する中国系のローラ・リ
ン記者、韓国系のユナ・リー記者を拘束。中央裁判所は6月8日、「朝鮮民族
敵対罪」と「不法国境出入罪」で、懲役にあたる労働教化刑12年の判決を言
い渡した。2人は判決後も平壌市内にいるとみられている。

(産経新聞 2009/8/4)

北朝鮮で一日いただけで二人のジャーナリストは解放されましたが、
これは、クリントンが卓越した外交手腕を持っていたからではあり
ません。実は、数ヶ月に及ぶ国務省と北朝鮮の国連使節との間で交
渉の結果を収穫しに出かけただけであって、あの場で交渉を行って
いたのではなかったとAP通信は報じています。

北朝鮮にとっては、罪を認めているジャーナリストは、非常に都合
の良い人質であり、今回の交渉は、この外交上の資産を如何に高く
米国に売りつけるかという問題であったと言えます。敵の元元首を
呼びつけた上で、罪人に特赦を与え解放すると言う行為は、米国に
対し道徳的な高みに立つという面でも、金正日にとって快感であっ
たに違いありません。

一方、クリントンにとっては、ジミー・カーターやアル・ゴアと言
う民主党の先輩や同輩が受賞したノーベル平和賞に自身を近づける
近道と言えます。その様な意味から考えると、北朝鮮が、人質とな
ったジャーナリストの雇用者ではあっても、既にノーベル平和賞を
取ったアル・ゴアではなくクリントンを解放の相手に選んだのは、
クリントンのノーベル平和賞への願望やヒラリー・クリントン国務
長官への影響力を理解した上での選択であると言えます。

たった一日の滞在でしたが、徹底的な調査と計算の上でクリントン
は北朝鮮にもてなされた事はまず間違いありません。また、クリン
トンがその手の誘惑に弱い事は、大統領在任中の不適切な行為で明
らかになっています。(日本でも、北朝鮮に対し強面で鳴らした何
人もの政治家が、たった一回の訪朝で、見事に北朝鮮配慮派に転向
した事が思い起こされます。)

クリントンが帰国に際し、金正日からオバマ大統領に対する親書と
言葉が託されている事は間違いありませんし、クリントンがオバマ
に対し北朝鮮に対する好意的な助言をするのも確実と言えます。実
の処、金正日にとってそれこそが、政治的な身代金に他ならなかっ
たと言えます。

北朝鮮にとっては、現在の金正日体制に対する保障を米国から取り
付けるのが、一番の政治的目標です。但し、同時に対米核抑止体制
を構築する事も、米国から現実的な体制保障を取り付ける上での条
件になるとも考えている筈です。従って、核廃絶を唱えるオバマ政
権とは、政策的にも対立する訳ですが、その様な状況の中で、米国
や韓国、日本から自国に有利な援助を取り付けつつ、並行して核戦
力の充実も図るという外交的アクロバットを演じようとしていると
考えれます。そして、その第一手が今回のクリントン訪朝という事
なのです。その意味で、今回のクリントン訪朝を機に、米国と北朝
鮮の間で、急速な外交的展開が図られる可能性が高いと思われるの
です。


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2009年8月4日火曜日

韓国の新型ロケットは、本当に打ち上がるのか?

※写真は朝鮮日報サイトより転載

韓国が初の人工衛星ロケット打ち上げへ 露が技術協力

韓国初の人工衛星搭載ロケット「羅老(ナロ)号(KSLV1)」が今月11
日に打ち上げられる予定だ。羅老号は同盟国の米国ではなく、ロシアの協力を
得て開発された。ロケットは大陸間弾道ミサイル(ICBM)に転用が可能な
ことから、米国が技術提供を断ったためとされる。韓国のロケット打ち上げが
北朝鮮の反発を呼ぶのは確実で、国際社会が注視している。

韓国では1970年代から兵器の開発などを行っている国防科学研究所で、ミ
サイル用の固体燃料ロケットの開発が進められてきた。しかし推進力が高く宇
宙空間の軌道に進入させることができる液体燃料ロケットの技術開発は難しく、
これまで韓国には、人工衛星を搭載できる自前のロケットがなかった。

開発は急がれていたが、北朝鮮を刺激したくない米国側が技術提供を拒否した
ため、韓国はロシアの協力を得て研究を進めてきた。昨年4月には、ロシアの
宇宙船ソユーズで初の韓国人飛行士を宇宙に送り出している。

さらに米国との間には、韓国の弾道ミサイルの射程を制限する「米韓ミサイル
指針」があり、射程300キロ以上の発射体の開発は制限され、米国の厳しい
監視下にある。米国は今回の打ち上げを静観するとみられるが、「米国は、韓
国が宇宙開発を進めることに内心反対の立場」(韓国の宇宙開発専門家)という。

一方、今回のロケット打ち上げで、南北間の緊張がエスカレートすることを懸
念する声も出ている。

また羅老号は日本の領海上空を通過し、九州西側の東シナ海に1段目が落下す
る見込みという。日本政府は「韓国の場合、研究開発のための宇宙の平和利用
なのでとくに問題はない」との立場だ。ただ打ち上げに失敗すればロケット本
体や破片が落下する可能性も排除できないので、安全面から他国の上空通過は
避けるのが一般的とされる。

今回、打ち上げに成功すれば、自国から自前のロケットで人工衛星を軌道に乗
せた国としては10番目となる。

(産経新聞 2009/8/03)

打上延期が繰り返されている韓国の人工衛星打上ロケット「羅老
(ナロ)号(KSLV1)」ですが、必要とされていたロシア国内での
ロケットエンジン燃焼性能テストに成功した事から、来る8月11日
に羅老宇宙センターから打ち上げられる事になった様です。

韓国では、初の国産人工衛星打上ロケットと言われていますが、
実際には、ロシアから完全輸入した液体燃料エンジンの第一段ロ
ケットと同じくロシアから技術導入した固体燃料ロケットを搭載し
た第二段ロケットで、韓国産の100kg級科学衛星を打ち上げるとい
うものです。

日本の旧宇宙開発事業団系の人工衛星打上ロケットでも、同様の技
術導入や完全輸入を行っていますので、韓国産と言っても、文句を
つける筋合いではないのですが、「羅老号」の場合は、オリジナル
であるロシア製のアンガラロケット(この第一段ロケットを「羅老
号」では、そのまま使用する)が、まだ開発中である点で、原産国
のエンジン開発の影響をモロに受ける事になってしまったと言えます。

元々、アンガラロケットは、ロシアの次世代衛星打上ロケットとし
て開発されているロケットですが、韓国は当初、それを技術導入す
る事によって、自国で生産する事を計画していました。(一部では
エンジニアリングサンプルをリバースエンジイアリング手法で解析
する事を計画していたという噂もあります。)

しかしながら、技術盗用を恐れるロシアが、技術移転に応ぜず、ロ
シアで生産した第一段ロケットを完全輸入する事になりました。
第二段の固体燃料ロケットは、ロシアからの技術導入で、韓国内で
生産されています。(韓国で開発されたとする資料もあります。)

実はアンガラロケットは、非常に高性能のRD-171エンジンを搭載す
る新型ロケットであり、ロシア国内でも、まだ打ち上げられていな
い開発中のロケットなのです。そういう点では、「羅老号」はロシ
アにとって、アンガラロケット第一段の初回フライトテストを韓国
の費用で行って貰っていると言っても過言では無い
様に思われます。

「羅老号」は、打ち上げられた後、九州西部の東シナ海を飛行し、
日本領海の上空を通過する予定になっています。
開発中のロケットは、射場で爆発する可能性や打上後に飛行コース
を大きく逸脱する可能性があります。日本のロケットと同様、「羅
老号」もそういう時の為に、当然、指令破壊(自爆)の機能を持って
いる筈ですが、打上失敗時には、韓国のみならず、日本にも影響が
ある事を念頭に置き、安全面には念には念を入れて欲しいものと思
います。


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2009年8月3日月曜日

T50は売れない!超音速高等練習機は絶滅危惧種

※写真は、Wikipediaより転載

練習機の海外輸出に苦戦するKAI
韓国製のT50超音速高等練習機

優れた性能が認められてもマーケティング・ロビー活動で押される
公企業構造では限界か


韓国政府と韓国航空宇宙産業(KAI)は、13年という年月と2兆ウォン(現在の
レートで約1487億円、以下同)の資金を投入し、2005年に高等練習機T50を開
発した。韓国独自の技術で初めて開発されたT50は、F16戦闘機に比べ体積が89
%、重量は77%ほどの軽い機体ながら、有事の際には武装を施し攻撃機として
も使用可能なため、国際市場で好評を得た。

しかし、輸出実績はゼロだ。アラブ首長国連邦(UAE)と4年間交渉を続けたが、
今年2月に1機2500万ドル(約23億5450万円)で40機販売という交渉で、イタリ
アに押しのけられた。シンガポールとは2012年までに12機納品することを目標
に交渉中だが、今年10月に発表される結果もまた未知数だ。また今月8日には、
李明博(イ・ミョンバク)大統領がポーランドのレフ・カチンスキ大統領と首
脳会談を行い、T50輸出問題を議題として採択した。ポーランドは、来年初め
に16機(10億ドル=約941億円)規模の高等練習機を導入する事業を進めている。

李大統領がT50に関心を示した裏事情は、こうだ。大統領に当選した当時、UAE
の指導者に親書まで送ったが水の泡となったことに対し、「李明博政権の外交
力不在と、KAI社長任命過程で“落下傘”人事を行ったのが原因」など、あら
ゆる非難が集中した。こうした経験から、李大統領はカチンスキ大統領から何
らかの肯定的な答えを引き出したかった、というわけだ。

防衛事業庁の関係者は、「“T50はポーランド空軍の主力機F16の縮小版で、パ
イロットに合っている”という友好的な答えがポーランド側から聞かれたが、
イタリアの主力練習機M346、イギリスのホーク128、チェコのL156などとの競争
は避けられず、結果は予測できない」と語った。

T50はイタリアのM346より性能が優れている、というのが一般的な評価だ。それ
でもUAEで苦杯を舐めたのは、M346を製造しているアレニア・アエルマッキ社に
比べ、産業協力の面で相手にならなかったからだ。アエルマッキ社は、練習機
を販売する条件としてF1レーシングサーキットの建設など、20億ドル(約1883
億円)規模の「ボーナス」を提示した。これに対し、韓国側は2億ドル(約188
億円)程度だった。

防衛産業分野での輸出は、兵器の性能だけで左右されるものではない、という
のが不文律だ。T50がどれほど優秀でも、公企業構造のためにマーケティング
やロビー活動の面で競争相手に太刀打ちできない、というわけだ。KAIは公式
のマーケティング以外、非公式なロビー活動はできず、初心者的立場から逃れ
られずにいる。

KAIは、産業銀行が最大の持ち分(30.54%)を有しており、そのほかに現代自
動車、サムスン・テックウィン、斗山インフラコアが株主として参加している
半国営企業だ。そのため、兵器産業の取引の特性上、一日も早く民営化しなけ
ればならない、という指摘も出ている。

産業銀行の関係者は、「米国のロッキード・マーチン社やボーイングは米国政
府からさまざまな恩恵を受けているが、株式保有の面では、典型的な民間企業
の形態を取っている。航空関連の大企業と提携してこそ、競争相手より優位に
立てる」と語った。また国防研究院の白承周(ペク・スンジュ)研究委員は、
「われわれが過剰な広報に出たことも、輸出に失敗した原因の一つだ」と指摘
した。防衛産業分野の輸出市場を開拓するには、広報よりも非公開の交渉や努
力が必要だが、広報にばかり熱を上げる態度が問題になった。防衛事業庁側は、
「2030年までに、世界の高等練習機の交換は50カ国・3300機に上ると見込まれ、
KAIはこのうち30%(1000機、600億ドル=約5兆6500億円)の市場シェアを目
標としている」と語った。しかし、この広大な市場で韓国がどの程度実を結ぶ
ことができるかは不透明だ。

(朝鮮日報 2009/8/02)


日本でも、高等練習機を作った事があります。いわずと知れたT-2
高等練習機です。しかしながら、この高等練習機の後継機は導入さ
れませんでした。もし、高等練習機が実用戦闘機パイロットを養成
するのに有用であり、トータルのパイロット養成コストを削減でき
るのであれば、航空自衛隊は、引き続き高等練習機を使い続けた筈
です。

T-2があった頃の航空自衛隊の訓練課程は、
①初等練習機→②(ジェット)中等練習機(T-33)→③高等練習機(T-2)
→④実戦機(F-4、F-1、F-15)
でした。

しかしながら、T-2退役後の現在では、一段階少ない
①初等練習機→②(ジェット)中等練習機(T-4)→③実戦機(F-4、F-2、F-15)
であり、高等練習機での訓練に相当する過程は、実用機の複座型に
よって行われています。

これは、中等練習機を終了した後の高等訓練課程を実戦機で行うの
と高等練習機で行うのを比べた場合、実戦機では、高等練習機で行
う訓練が全て行える上、高等練習機を使った場合に、実戦機に移っ
た時に行うその機体特有の訓練を、実戦機での訓練では、高等訓練
と同時に行う事で、訓練期間の短縮を図る事ができます。また、実
戦機を訓練に使用する事で、いざという時に使用可能な実戦機の機
数を増加させる事ができるという効果も期待できます。

実戦機を使う事で高等練習機を使う場合に比べ、運用費用が増加す
るという欠点が指摘できますが、高等練習機という実戦機に準じる
機体を一機種別に導入する事によるトータルコストと比較すれば、
割安になる他、近年では実機に近いシミュレータを利用する事で、
訓練コストを下げる事もできます。

この為、高等練習機を導入する場合は、その高等練習機と同系列の
実戦機を導入する事で、機体導入コストを削減するのが通例です。
T-2を導入した航空自衛隊も同系列の支援戦闘機F-1を導入していま
すし、韓国空軍も、派生機であるA-50攻撃機を導入する予定となっ
ています。

つまり、T-50は単体で導入する場合は、性能の高い高等練習機であ
るが故に、高価であり、その同系列の実戦機であるA-50攻撃機を導
入する気がなければ、コスト高になってしまうという事です。

その点、T-50の対抗馬に目されているアエルマッキM-346は、T-4の
エンジンを強化して遷音速化した様な機体であり、中等練習機とし
て使用できるものです。これは、チェコのL-159にせよ、BAEのHawk
128にせよ同様です。

つまり、韓国の期待に水を差すのは悪いのですが、最新の超音速高
等練習機という存在は、導入コストの割に、導入効果が低いと言え、
高等練習機単体で導入される可能性は非常に低い絶滅危惧種と言わ
ざるを得ないのです。


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