2010年2月5日金曜日

福徳岡ノ場4年半ぶりに噴火 新島できるかな?


※第四紀火山データベースから転載
中央下の尖った島が南硫黄島。その上の平坦な頂上を持った高まりが福徳岡ノ
場、その更に上の高まりは、北福徳堆(たい)。

海底火山 福徳岡ノ場が噴火 4年半ぶり 南硫黄島沖

3日午前7時45分ごろ、南硫黄島(東京都小笠原村)の北北東約5キロにあ
る海底火山「福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)」から白煙が立ち上っているの
を第3管区海上保安本部(横浜市)の巡視船が見つけた。05年7月以来約4
年半ぶりの噴火で、火山活動が活発化している。

3管によると、現場は東京の南約1300キロ。1904年、14年、86年
の3回、海底が隆起して新島を形成したが、いずれも海没した。50年ごろか
ら常に海域が変色しており、昨年12月にも黄緑色に変わったことが確認され
ていた。

(毎日新聞 2010/02/03)


福徳岡ノ場は、日本の海底火山の中でも有数の活発な活動を行って
いる火山です。直径10km、高さ2000mを超える北福徳カルデラの中
央火口丘です。ちなみに南硫黄島は、それ自体は成層火山ですが、
カルデラ縁にできた寄生火山と言える様に思われます。これは福徳
岡の場の北に位置する北福徳堆も同様です。

福徳岡ノ場の活動は活発と書きましたが、火山活動に起因する変色
域の出現は殆ど毎年の事であり、噴火も20世紀に入って以降、7回
起こっています。1904年、1914年、1973年、1974年、1986年、1992
年、2005年の7回で、今回の噴火は8回目と言う事になります。

(1974年以降は、12年+6年の合計18年の噴火サイクルがある様にも見
えます。その噴火サイクルからすれば、今回の噴火は予定より1年
早かったと言えるのかも知れません。)

この内、1904年、1914年、1986年には新島が出現しています。これ
らの新島は、いずれも新硫黄島と命名されています。今回もし、島
が出現しても、同じ名前になるものと思われます。

1914年の際には、一時、高さ300m、周囲11.8kmの堂々たる島に成長
しました。しかし、これは翌々年には消滅しています。一番最近の
1986年の新島も、わずか二ヶ月ほどで消滅しています。

硫黄島の北に位置する西ノ島の1973~74年噴火でもそうでしたが、
火山弾や火山礫が集積しただけの火山島は、太平洋の荒波によって
比較的簡単に侵食されてしまいます。火山島として半永久的に残る
為には、溶岩の噴出でよって、火山礫がしっかりと火山本体に溶着
しなくてはならないのです。

今回の噴火で、新島が出現するかどうかは、五分五分と言った感じ
ですが、新島が島として残る為には、溶岩噴出があるかどうかにか
かっていると言って過言ではない様に思われます。

なお、福徳岡ノ場は、硫黄島の南南東55km、南硫黄島の北北東5kmに
位置しており、完全に我が国の領海内にあります。従って、我が国
にしか領有権がありません。どこかの国が勝手に領有権を主張する
事はありませんのでご心配なく。もっともその分、EEZ(排他的経済
水域)が今以上に広がる事もありません。


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2010年2月4日木曜日

北朝鮮デノミ失敗のつけ

※北朝鮮新ウォン紙幣 http://www.kaigai-kouza.com/repo...t_5.html より転載

北朝鮮デノミ:貨幣改革失敗で朴部長解任=日本メディア

毎日新聞は3日、北朝鮮の朴南基(パク・ナムギ)労働党計画財政部長(76)が、
昨年12月に断行された貨幣改革の失敗に関する責任を問われ、先月20日ごろ解
任されたと報じた。同紙は「北朝鮮政権に近い関係者」の言葉を引用し、中国・
北京発の記事でこうした内容を報じた。

同紙は、金正日(キム・ジョンイル)総書記が昨年、住民の労働力を総動員し
た「150日間戦闘」などを挙げ、「デノミネーション(貨幣呼称単位の変更)
の失敗で、(150日間戦闘などの)成果が台無しになった」と語った、と伝えた。

また同紙は、金総書記が朴南基部長の解任を指示したほか、映画や舞台公演を
担当する崔益奎(チェ・イクギュ)労働党映画部長も同時期に解任したと報じた。

この日、韓国の安全保障部局の当局者は、北朝鮮経済を24年間率いてきた朴南
基部長の失脚情報に関連し、「北朝鮮が貨幣改革の失敗を自ら認めたという意
味だ」と語った。「金総書記が激怒したようだ」(北朝鮮消息通)という話も
出ている。

朴南基部長は1986年12月、人民経済を総括する国家計画委員長に登用されて以
降、北朝鮮の計画経済を最前線で指揮してきた。2000年代初めに金総書記が市
場経済の要素を一部導入した際には、朴奉珠(パク・ボンジュ)首相に押され
たこともあったが、市場の弊害が続出したことを受け、05年7月に党計画財政
部長へと復帰した。朴南基部長は06年末、金総書記に対し、「内閣(朴奉珠首
相)が資本主義の幻想を抱いてだめにしたものを直し、再び社会主義の原則に
依拠した経済管理制度を確立する」と報告した。翌年07年4月、朴奉珠首相は
解任され、順川ビナロン(北朝鮮が命名した合成繊維)連合企業所の支配人に
左遷された。

朴南基部長は昨年、金総書記の現地指導に123回随行したが、今年は先月3日以
降、1カ月以上にわたり金総書記の随行者名簿から除かれている。一部では、
朴南基部長は貨幣改革失敗の「スケープゴート」だという分析を提起していた。
幹部クラスのある脱北者は、「90年代中盤に大規模な餓死が起こり、民心が悪
化したことを受け、金総書記は党の農業秘書である徐寛熙(ソ・グァンヒ)を
米国のスパイだと決めつけ、平壌市民の目前で公開処刑し、自分に向けられた
住民の不満を徐寛熙にかぶせたことがある」と語った。

今回の貨幣改革も、実務は朴南基部長が担当していたが、金総書記の指示によ
り、金総書記の三男ジョンウン氏の後見人として知られる張成沢(チャン・ソ
ンテク)労働党行政部長が主導したと分析されている。貨幣改革の失敗に伴う
住民の不満が金総書記や張行政部長に集中することを防ぐため、朴南基部長を
犠牲にした、と観測されている。

一方、毎日新聞の「崔益奎・労働党映画部長更迭」報道と関連し、北朝鮮消息
通は、「まだ不確実な情報の水準で、はっきりしていない」と語った。反面、
韓国政府の当局者は、「崔益奎部長は住民に対する宣伝・扇動業務も担当して
いただけに、貨幣改革を住民にきちんと広報しなかったという責任を問われた
可能性もある」と語った。

(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2010/02/04)


蜥蜴の尻尾切りそのものと言われても過言ではないでしょう。今回
のデノミが、金正日の指示と承認の下に行われたのは、確実ですが、
この最高指導者が政策の責任を問われる事は有り得ません。従って、
直接実務を担当する分野の責任者が代わりに責任を取らされると言
う訳です。

前回の市場経済化?の失敗については、首相が責任を取らされたの
に対し、今回は、労働党計画財政部長ですから、格下が責任を取ら
された形になっていますが、これは、記事にも書かれている通り、
責任者が、金正日の妹婿であり、責任を問う訳にいかず、また、そ
れ以外の上級幹部も上手く責任逃れができた結果と言えそうです。

あるいは、デノミによる混乱は、市場経済化?ほど、社会主義経済
の原則に対して大きな影響ではなかったと評価しているのかも知れ
ません。

確かに、市場経済化の行き着く所、中国の様に、資本主義と変わる
処がない様になってしまうのに対し、今回のデノミは、市民の混乱
こそ引き起こしたものの、市中に退蔵されていた旧紙幣を無効化す
るという目的は果たされており、国民の混乱や、経済困難は一時の
ものと割り切る事ができているのかも知れません。

これに関連して、面白いニュースがサーチナで流れています。最近
になって、労働者への給与が旧ウォンと同じ金額の新ウォンで支払
われており、給与が100倍になったと喜ばれているというものです。

これは、デノミ実施後、わずか二ヶ月で価格が100倍になったと言
う事であり、噂されていた激しいインフレが事実として裏付けられ
たものと言えるでしょう。

今回のデノミでは、10万ウォン以上の新ウォンの交換は許されてお
らず、自由市場での商売を通じて市中に蓄えられていた旧紙幣によ
る蓄財をデノミによって国家が取り上げる事が目的の一つになって
います。労働党員や、政府幹部は、外国の銀行に外貨口座を持って
おり、デノミの影響はなかったと言われています。

その一方で、旧貨幣が無効になることが判った時点で、強烈なイン
フレが発生することの影響は無視されていたと言えます。何故なら
ば、無効になるのは、旧ウォンであり、それは予定されたものだっ
たからです。しかしながら、影響は旧ウォンに留まる事はありませ
んでした。旧ウォンが無効にされそうになった段階で物に対する巨
大なニーズが発生します。その結果として売り惜しみが発生し、そ
れは、新ウォンに対しても当てはめられる事になります。物の供給
が、紙幣の発行量に対して少なくなれば、当然インフレになります。

これに加え、新ウォン紙幣の供給が遅れた事で、経済がますます混
乱する事になりました。旧貨幣は無価値なので売買に使用できず、
新貨幣はないのですから、物を買うには物を使うしかありません。
北朝鮮は貨幣経済から物々交換経済に退歩する事になりました。

経済の混乱を見て、新ウォンの交換限度を緩和する彌縫策は、次の
規制緩和を予想させる事で、更に売り惜しみを拍車をかけ、新ウォ
ンに切り替わって後も、インフレを亢進する事になりました。

この様な経済的混乱は、物資の売り惜しみの形で、まだ継続してい
ます。既に、餓死者の発生が、報道されていますが、基本的には物
資退蔵が続く限り、インフレと経済の混乱は継続する事になります。
解決法は、貴重な外貨の流出になってしまいますが、政府による、
物資の中国からの緊急輸入しかありません。そして、それを新ウォ
ンで安価に供給し、新ウォンに対する信頼を回復するしかないと思
われます。

旧ウォンを無効にした事で、巨大な購買力が政府に移転されたので
すから、政府には、それを行う義務がある筈です。そして、それを
行わない限り、北朝鮮が再度、貨幣経済に完全に復帰する事はない
と思われるのです。(貨幣価値が不安定な場合、蓄財の対象として
は物資を選択するしかない為。) そして、それまでの間、北朝鮮
国民の困窮はまだまだ継続すると思われるのです。


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2010年2月3日水曜日

韓国、初の外洋機動艦隊を編成

※朝鮮日報Webサイトより転載


韓国軍:「機動戦団」創設、大洋海軍時代の到来
世界全域で作戦遂行、世宗大王艦など「先端戦闘艦」7隻で構成


有事の際、世界全域のいかなる軍事的状況においても迅速かつ完ぺきな作戦遂
行ができるよう、イージス艦や大型駆逐艦などによる韓国海軍初の「機動戦団」
が、1日に創設された。韓国海軍はこの日、釜山の海軍作戦司令部で、丁玉根
(チョン・オククン)参謀総長が主管する、初の機動戦団「第7機動戦団」の
創設式を挙行した。

1945年、海防兵団という名前で第一歩を踏み出した韓国海軍は、装備する艦艇
が小さくて古く、主として韓半島(朝鮮半島)近海で作戦を遂行することしか
できなかった。しかし2002年以降、世界のどこにでも出動し、作戦を展開でき
る4500トン級の韓国型駆逐艦(KDX2)が続々と進水し、「艦艇の花」と呼ばれ
るイージス艦「世宗大王艦」(7600トン級)までを保有するに至り、今回大洋
海軍として活動できる機動戦団を創設することになった。海防兵団として出発
してから、実に65年目にして実現した。

機動戦団は、有事の際に南北間の衝突はもちろん、マラッカ海峡など韓国の主
要な海上物資輸送路の保護作戦、世界の主要な紛争地域での国連平和維持活動
(PKO)の支援作戦を展開できる、一種の戦略機動部隊だ。平常時は韓国の近
海で北朝鮮の挑発に対応するなど、韓半島内の有事に備えつつ、必要があれば
世界のどこにでも出動し、作戦を展開する「戦略的柔軟性」を備えた戦力だ。
この日の創設式で丁海軍参謀総長は、「機動戦団の創設は、沿岸海軍から大洋
海軍に本格的に発展していることを示す信号弾」と強調した。

機動戦団の創設は、中国や日本など周辺の大国が1990年中盤以降、海軍力の増
強に拍車をかけていることにも影響を受けた、と評価されている。離於島や独
島(日本名:竹島)などをめぐる海洋紛争の可能性に備え、また原油・穀物・
原材料など韓国の主要な戦略物資の99-100%が海を越えて輸入されているこ
とを考慮し、海上輸送路の保護のためにも機動戦団の必要性は高い、と海軍関
係者は説明した。

現在、第7機動戦団は海軍初のイージス艦「世宗大王艦」、忠武公李舜臣(イ・
スンシン)艦など4500トン級の韓国型駆逐艦6隻を合わせ、計7隻の大型水上艦
で構成されている。韓国海軍が保有する艦艇の中で最も大きく、強力な戦闘艦
がすべて属している。第7機動戦団は71・72の2戦隊に分かれ、釜山および鎮海
海軍基地に配備される。今年8月にイージス艦2番艦「粟谷李珥(イ・イ)艦」
が実戦配備されれば、各戦隊はイージス艦1隻、4500トン級駆逐艦3隻で構成さ
れる。2012年に配備されるイージス艦3番艦、2019年から2026年にかけて戦力
化される5600トン級のミニ・イージス艦「KDX2A」6隻も、機動戦団に属するこ
とになるとされる。

さらに、2014年に済州海軍基地が完成すれば、第7機動戦団はこの済州基地を
母港として、済州島南方の東シナ海や南シナ海でも本格的な遠距離作戦能力を
備えることになる。海軍関係者は、「機動戦団の本格的な作戦のためにも、済
州海軍基地の建設を迅速に行わなければならない」と語った。海軍はもともと、
2-3の機動戦団で構成される「(戦略)機動艦隊」を目標としてきたが、予算
問題や陸・空軍のけん制などにより、時期が遅れている。

なお、第7機動戦団の初代戦団長には、イ・ボムリム中将(海士36期)が任命
された。

(朝鮮日報 2010/02/02)


従来、韓国海軍は、東海、南海、西海艦隊の三個艦隊編成でしたが
今回、それとは別に「機動戦団」が、大型艦艇を中心に編成されま
した。

少し理解しにくいかも知れませんが、昨年に大幅な編成の変更が行
われる以前の、地方隊と護衛艦隊で構成されていた日本の艦隊編成
と良く似た形になったとも言えます。
つまり、従来の艦隊が、地方隊に位置付けとなり、今回編成された
機動戦団は護衛隊群の扱いという訳です。

もっとも機動戦団は、米国のタスクグループ的な性格を持っており、
必要に応じて、通常所属しているKDXII、KDXIII合計7隻の駆逐艦
と艦載ヘリコプター部隊に加え、強襲揚陸艦である独島艦や潜水艦、
果てはP-3C部隊が編入される事も想定されています。

もともと、2001年に当時の金大中大統領が「戦略機動艦隊」の設置
について言及した時には、2~3個の「戦略機動艦隊」が、設置さ
れる事が計画されていました。しかし、それ以降のリーマンショッ
ク等の経済危機もあり、そのスケールは若干縮小され、現在の建艦
計画に落ち着いたと言えます。

寧ろ、計画が縮小されたのは、北朝鮮を主敵とする韓国が本来重視
すべき揚陸艦艇であり、外洋艦隊を構成するイージス艦2隻や新鋭
駆逐艦6隻の整備、また、世界的にも最新鋭潜水艦と言える214級
潜水艦9隻の整備が着々と実行されている事に、外洋艦隊に対する
韓国海軍の宿願とも言える思いがこもっている様に思われるのです。

今回の機動戦団の創設は、韓国内では韓国の海上輸送路の保護のた
めと説明されている様ですが、実際には、韓国が米国との同盟関係、
日本との友好関係を前提とすれば、日米のシーレーン防衛を頼って
も構わない部分です。その部分で、あえて韓国の独自の兵力を巨額
の費用を使って整備している訳であり、全く非合理的な軍事力整備
を継続していると言わざるを得ないのです。


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2010年2月2日火曜日

宇宙開発計画の主役に躍り出た民間打上サービス

※ドラゴン宇宙機(有人構成) SpaceX社Webページより転載

米予算教書 有人月探査計画は打ち切り

予算教書には、有人月探査計画の予算は盛り込まれず、計画は事実上、打ち切
られることが決まった。深刻な財政、雇用情勢に宇宙計画がのみ込まれた形で、
米航空宇宙局(NASA)は今後、民間企業のロケット開発を支援していく。

有人月探査計画は2004年、ブッシュ前大統領が「コンステレーション計画」
として打ち出し、NASAは1972年以来となる有人月探査を20年までに
実現することを目指していた。だが、オバマ大統領は就任前から「計画を5年
遅らせれば、教育予算がまかなえる」と否定的だった。有人宇宙船を運ぶ次世
代ロケット「アレス」の開発も併せて打ち切る。

その代わり、宇宙開発関連予算として今後5年間で59億ドル(約5312億
円)を計上。NASAはこの予算内で、民間企業によるロケットの開発と打ち
上げを支援し、宇宙飛行士を民間ロケットで宇宙へ送り出す計画だ。

ただ、民間への事業委託に対しては、安全性や科学技術の流出、雇用悪化への
懸念から、議会を中心に批判が根強い。AP通信は「アンクル・サム(米国)
は、タクシーにでも飛び乗るように宇宙飛行士の搭乗料金を支払うことになる」
と皮肉っている。

一方、野口聡一さんが滞在する国際宇宙ステーション(ISS)については、
20年まで5年間、運用を延長するための予算を確保する。

(産経新聞 2010/02/02)


予算教書が正式に発表になりました。発表された米国の宇宙開発計
画は、概ね、今まで報道された内容と同じです。今まで91億ドル
を費やしたコンステレーション計画には引導が渡されました。コン
ステレーション計画の幕引きには更に25億ドルを要する見込みです。
大型計画は、計画中止にすら多大なコストを要します。

その一方、民間企業による有人打ち上げロケットや貨物打ち上げサ
ービスには、59億ドルが投入されます。
今まで、民間企業の打ち上げサービスは、あくまで、NASAの主力ロ
ケット開発の端境期に、NASAの打ち上げを補完するというのが、そ
の位置付けでしたが、今回の発表では、国際宇宙ステーション(ISS)
への補給の主役に昇格する事になります。つまり、NASAの次期有人
打ち上げロケットは、最早存在しないのです。

NASAはこの民間打ち上げサービスにより、早ければ2016年には、ISS
への打ち上げを目論んでいるようですが、このタイムフレームで有
人打ち上げが実現可能な民間企業は、SpaceX社のドラゴン宇宙機し
かありません。しかも、ISSの運用は、取敢えず2020年まで継続さ
れただけであり、元々有人宇宙機への発展を考慮してドラゴン宇宙
機を設計していたSpaceXは別として、他社が、わずか4年のISS運用
の為に、有人宇宙機を開発するかどうかは、疑問とせざるを得ない
のです。(可能性があるのは、SpaceX同様、ISSへの補給業務を請
け負っているOSC社のシグナス宇宙機程度ではないかと思われます。)

有人打ち上げを独占する事になるかも知れないSpaceX社ですが、謳
い文句は魅力的です。SpaceX社は、宇宙飛行士一名のISSへの輸送
単価を2000万ドルで請け負えると豪語しています。それが実現でき
れば、2016年まで使用するロシアのソユーズによる宇宙飛行士打ち
上げサービスの単価5000万ドルに比べ大幅なコストダウンが図れる
事になります。

しかしながら、ドラゴン宇宙機の打ち上げに使用されるSpaceX社の
Falcon9ロケットは、まだ試験機の打ち上げすら行われていない状
況なのであり、Falcon9とエンジンを共用するFalcon1ロケットすら、
過去、5回の打ち上げ成功率は40%と、必ずしも技術的に完成した
と言える様な段階ではないのです。さらに、NASAの開発遅延とは比
べものにならないとは言え、Falcon9の開発そのものも、目標スケ
ジュールに対しては遅れ気味で推移しています。

Falcon9の一号機の打ち上げは、今月に予定されていますが、その
スケジュールは未だ確定したものではありません。勿論、一号機か
らミッションペイロードとしてドラゴン宇宙機が搭載される他、有
人打ち上げが行われるまでに、商業軌道輸送契約で10機以上が打ち
上げられる予定であり、打ち上げロケット、宇宙機共に、有人打ち
上げまでに信頼性が向上する事は間違いありませんが、それでも、
それらの打ち上げが失敗なしに行われる保証は全くありません。
一度でも失敗すれば、2016年の有人打ち上げと言うスケジュ-ルを
実現するのは厳しいものになる事は確実と思われます。

その意味で、今回の米国の宇宙開発計画の変更は、NASAのロケット
開発のリスクを一民間企業へ振り替えたとも言えるものであり、今
まで以上に薄氷の上に乗った計画と言わざるを得ないのです。


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2010年2月1日月曜日

有人月探査計画より民間宇宙事業者を選んだオバマ政権

米政府、有人月探査を断念…ISSは5年延長

【ワシントン=山田哲朗】米国の有人宇宙探査計画を見直していたオバマ政権
は、1960~70年代のアポロ計画以来となる月面探査計画を中止すること
を決めた。

米メディアが28日、一斉に報じた。2月1日の2011年度予算教書に合わ
せて正式発表する。

米航空宇宙局(NASA)の予算は今後5年間で計約59億ドル(5300億
円)増額される。月探査の中止で浮いた予算と合わせ、現在、野口聡一さんが
滞在している国際宇宙ステーション(ISS)の利用は2020年まで5年間
延長される。

日本にとってはISSに飛行士を送り込むチャンスが増えるほか、ISSへの
物資補給で、より大きな役割を果たすよう国際的に期待されることになる。

一方、有人宇宙船を運ぶNASAの新型ロケット「アレス1」は開発を打ち切
り、民間企業が開発する新ロケットを活用する。

月とそれに続く火星探査は、ブッシュ前政権が04年に目標に設定した。しか
し景気悪化で予算が大幅に不足、オバマ政権は抜本的に見直す作業を進めてい
た。NASAは、比較的予算が少なくて済む小惑星探査などを検討するとみら
れる。

(読売新聞 2010/01/29)


実際の発表は、日本時間の本日(2/1)夜に発表される予算教書で明
らかになりますが、既に、いくつかの新聞社から、米国の新しい
宇宙計画の概要が報道されていますので、その内容をご紹介します。

まず、一番大きな方針変更は、有人月探査計画であるコンステレー
ション計画に関する予算が削られる事です。これは、開発中の打ち
上げロケットであるアレスI、アレスVの他、有人カプセルである
オリオン宇宙機についても適用されます。
(ただし、アレスVに相当するヘビーリフター(重量物打上ロケット)
は、より少ない予算で開発する方法が検討されるべきだとされてい
ます。)

これによって、開始から6年を経過し、既に91億ドルを費やした
オリオン計画は、何らの成果なく中断される事になります。

NASAは予算額こそ、現状よりも大きな金額が認められますが、その
金額は有人月探査計画を満足させるものではありません。

そして、地球低軌道への物資、人員の輸送に関しては、民間ベース
で行われる事が奨励される事になります。これは、宇宙開発のアウ
トソーシングとも言えるもので、この為に、5年間で数十億ドルが
支出されます。

政府は宇宙飛行士の為に、タクシーに乗せる様に、宇宙行きの座席
を買うだけで済む様になるという発想です。航空輸送の揺籃期に、
民間業者の航空郵便輸送を政府が積極的に支援した事が、民間航空
事業の育成に役立ったのと同様の発想によるものです。

地球低軌道への物資と人員輸送を民間に任せる事で、NASAは、地球
軌道より遠い遠宇宙探査や、より良い観測衛星による地球探査や研
究に集中する事ができると言うわけです。

国際宇宙ステーションは少なくとも2020年(従来は2015年)まで運用
期間が延長されます。

ただし、それ以外の計画については、まだ、固まっている訳では無
いようです。特に有人宇宙探査計画については、有人の小惑星や火
星の月探査、あるいは、恒久月面基地ではなく、ごく小規模な月面
での有人活動といったものから選ばれる事になる見込みです。
いずれにせよ、それが決定されるまで、NASAには新しい大型開発計
画がなくなってしまう事になります。

有人月面探査計画を実現不可能にした実質的な要因は国際宇宙ステ
ーション(ISS)であり、米国にはこのISSの延命と有人月面探査を同
時に行う余裕はないという実際的な決断が今回の計画変更につなが
ったというべきでしょう。

NASAの宇宙開発は、ある側面からすれば、高給を取るNASA技術者や
宇宙関連産業従事者に雇用機会を与える事でもあります。今回の大
幅な宇宙開発計画の変更は、間違いなく、米国の産業に対し大きな
影響を与える事になります。しかし、米国での宇宙事業従事者の雇
用の為に過去最大の宇宙開発計画の成果であるISSを完成後わずか
数年で放棄するのも、余りに非合理です。コンステレーション計画
の断念は、宇宙ファンには残念な事件ですが、オバマ政権は合理的
な指導力発揮したというべきではないかと考える次第です。


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